2019年1月12日土曜日

調査票の配布と回収(3/5)~想像力の必要性

社会福祉士の国試の文字数は年々短くなっています。

その結果として知識をしっかりつけてきた人は高い点数が取れるようになっています。

厚生労働省&社会福祉士試験・振興センターでは,受験者の得点分布等は一切発表していません。しかし,目指している方向性は見えます。

上位30%の人が,90点以上取れる試験

第26回国試以降,つまり試験委員長が現在の坂田周一先生になってから,それをずっと目指して国試問題改革を行っているように思います。

それによって何が起きているのか?

受験者の点数の開きが広がってきているのです。

第30回国試では,もしかすると135点以上を取った人がいるのではないかと思います。

一方では,50点台の人もいたことでしょう。

点数が取れる人は満点に近い点数が取れて,点数が取れない人は全然取れないという2極化が進んでいます。

その理由はいくつかがありますが,想像力が求められる問題が含まれることもその一つとしてあるように思います。

勘の良いだけで点数が取れなくなっている一方,知識プラス想像力が求められる問題が出現しているのです。

こういった問題で点数が取れる人と取れない人では,どんどん差が広がります。

今日の問題もそんなタイプの問題です。

第28回・問題84 調査方法と調査票への記入の仕方に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 郵送調査,留置調査,個別面接調査,電話調査の中で,実対象数を同じとすれば,調査の実施に当たっての経費と労力が最もかかるのは,郵送調査である。

2 電話調査は,調査員が質問をしながら調査票に聴き取る自計式調査である。

3 「全国世論調査の現況(平成26年版)」(内閣府)によると,公的機関,大学,メディア,企業が実施した調査の中で最も多かったのは,留置法である。

4 訪問面接調査法では,記入要領を理解した調査員が,調査対象者との面接で聞き取った内容を調査票に記入する。

5 調査票への記入の仕方として自計式は,他計式と比べて,質問の意味を正しく理解し回答を正しく記入しやすい。


「社会調査の基礎が苦手だ」という人は実にもったいないように思います。

専門科目は,法制度の科目が多いため,この科目に力を入れない人が多いこともあると思います。しかし,決して難易度が高い問題が多いわけではありません。

それでは,その辺りののことを踏まえながら,解説していきたいと思います。


1 郵送調査,留置調査,個別面接調査,電話調査の中で,実対象数を同じとすれば,調査の実施に当たっての経費と労力が最もかかるのは,郵送調査である。

これは間違いです。

郵送調査は,郵送料がかかるので,経費が多くかかると思うかもしれません。

しかし,経費は定型封筒で送った場合,84円×2(往復分)=168円です。

1,000件に送った場合,168,000円

留置調査の場合は,徒歩圏内なら無料です。

しかし,そうでない場合は交通費がかかります。往復300円だとすれば,300,000円です。

これは個別面接調査も同じです。

電話調査は,電話代だけなので,郵送調査よりも安いかもしれません。

次に労力です。

郵送調査は,コピー,封入して投函すれば終わります。あとは果報は寝て待て。返信があるのを待ちます。

留置調査も訪問面接調査も移動して訪問して説明しなければなりません。訪問面接調査ではさらにその場で面接する時間もかかります。

電話調査は電話をかけて聞き取るので,移動時間がない分,訪問面接調査よりも時間はかかりません。

これでわかるように,郵送調査は経費,労力ともかからない調査法なのです。そのため,量的調査では,実施されることが多くなります。

長々と書きましたが,国試ではこれらを瞬時に考えなければなりません。
ポイントは,郵送調査は,経費,労力ともかからない調査法である,ということです。


2 電話調査は,調査員が質問をしながら調査票に聴き取る自計式調査である。

これも間違いです。

自計式,他計式がわかっていないと間違えます。

自計式の「自」は,調査対象者が調査票に記入することをいいます。調査員が聞き取り内容を調査票に記入するのは「他計式」です。

電話調査は,他計式です。


3 「全国世論調査の現況(平成26年版)」(内閣府)によると,公的機関,大学,メディア,企業が実施した調査の中で最も多かったのは,留置法である。

これも間違いです。

こんな問題が出題されると勉強不足を実感するかもしれません。

ここで想像力が必要です。留置調査は,経費も労力もかかる調査方法です。一般的にはあまり実施されないだろうと想像することができそうです。

最も多いのは,経費も労力もかからない郵送調査でした。


4 訪問面接調査法では,記入要領を理解した調査員が,調査対象者との面接で聞き取った内容を調査票に記入する。

これが正解です。

訪問面接調査は,調査員が調査票に記入します。


5 調査票への記入の仕方として自計式は,他計式と比べて,質問の意味を正しく理解し回答を正しく記入しやすい。

これも間違いです。

自計式は,調査対象者が記入するので,質問の意味を正しく記入するかどうかは,その対象者の能力によって変わります。

一般的に他計式の方が正しく記入することができます。

なぜなら,他計式の場合は,調査員が質問して,答えてもらったものを記入するので,うまく答えられなかった場合,質問をかみ砕いて説明することができるからです。


<今日の一言>

「調査票の配布と回収」で出題されているのは以下の項目です。

郵送調査法
個別面接調査法
RDD
集合調査法
留置調査法
インターネット調査
自記式(自計式)
他記式(他計式)

たった8項目しかありません。

用語を丸暗記する勉強法をしている人がいます。

国試では同じ表現で出題されることはありません。

そのため,丸暗記の勉強法は極めて危険です。

今日の問題のように,想像力が求められる時には対応が難しくなってしまうからです。

第32回国試を目指している方には,強くお勧めしたいのは,文章の中で得に重要な部分を自分なりに考えて,ポイントを押さえる勉強法です。

例えば,

郵送調査では,経費も労力もかからない手軽に行える方法だが,その分回収率が低くなる。

といった感じです。

第31回国試を受験される方は,これから覚え直しをする時間はありません。

問題を解きながら,ポイントを押さえていくことが極めて重要です。足りない知識は,想像力でカバーできます。


今日の問題では,

3 「全国世論調査の現況(平成26年版)」(内閣府)によると,公的機関,大学,メディア,企業が実施した調査の中で最も多かったのは,留置法である。

がそれに当たります。

留置調査の代表は,国勢調査です。2015年調査からネットでの回答もできるようになりましたが,基本的には留置調査で全数調査を行っています。

調査票の配布と回収を行っているのは,アルバイトの人です。事前の説明会を開いてやり方を伝えて実施します。手軽にはできない調査です。

サンプル数が30件くらいなら,なんとか一人でもできるかもしれません。

それでも多大な時間がかかります。

時間がかかるのは,社会調査にとっては大きなデメリットとなります。

その理由は,最初に調査した人と最後に調査した人ではタイムラグが生じるので,その間に状況は変わっているかもしれないかもしれません。

極端な例を挙げると,メディアが行う世論調査はRDDで行われるのが一般的です。

最も時間がかからないで実施できるからです。

今日と一週間後では,大きく意見が変わることさえあります。

そんなことからメディアが留置調査を行うことは,まずあり得ないと考えられます。

人によっては,限られた時間の中で,想像力を働かせて答えることはできない,と思う人もいるいもしれません。

しかし,チャレンジするのは社会福祉士の国家試験です。

社会福祉士=ソーシャルワーカーではありませんが,ソーシャルワーカーは常に想像力が求められます。

クライエントに合わせて柔軟な対応が必要です。

瞬時に考えて,行動しなければなりません。ソーシャルワークの特徴は,基本的にワーカーとクライエントとの関係は,1対1であることです。

対応に困っても周りには,自分を助けてくれる人はいません。

そういった中で常に適切な判断が求められます。

社会福祉士の国試は,あるべき社会福祉士像を目指して出題されます。

想像力を試されたり,足りない知識をしながら解く問題が出題されるのは,社会福祉士にそういった能力が求められているからにほかなりません。


限られた時間の中で,想像力を働かせて答えることはできない

と思う人は,国が考えている社会福祉士像に合致していないと言えます。

国試で出題される問題の多くは,過去に出題されたものが繰り返し出題されています。
それはこのブログで紹介し続けているのでわかるでしょう。

しかし,同じ表現で出題されることはありませんから,必ず思考しなければなりません。
今日の問題も解説を読めば,決して難しくはないはずです。

実際に正解するのは決して簡単なものではありません。

想像してごらん

ジョン・レノンは,世界中の人に問いかけました。

社会福祉士の国試でも同じです。

想像してごらん

そうすれば,必ず道は開けます。

少々わからない言葉があっても,想像力でカバーしましょう。
たくさんの問題を解くことは,想像力を高めることにつながります。

社会福祉士としてのスキルも高まります。


<おまけ>

今日の問題で正解するために必要な知識は,自計式,他計式を正しく覚えていることです。

2つある場合は,セット入れ替え手法に気を付けましょう。

セット入れ替え手法対策
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/blog-post_5.html

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