2019年1月21日月曜日

量的調査の集計と分析(1/2)~難しいものは捨てる

「社会調査の基礎」が難しいと思う理由は,「量的調査の集計と分析」にあるように思います。

統計の知識がないといけないと思ってしまうからです。

しかし出題されてもたったの1問です。

ピアソンの積率相関係数などと聞くととてもいやになってしまうと思います。

相関とは,2つ以上のものに関連があることです。

クロス集計は,定性的データをまとめたもので,相関を調べるためには,カイ2乗検定などを行います。

定量的データの相関を調べるための方法の一つがピアソンの積率相関係数です。

しかし旧カリ時代も含めて出題されたのは,第8回,第19回,第22回,第28回のたった4回だけです。

時間をかけるのはもったいないです。

ほかの分析方法も覚えられなかったら捨てましょう。ほかの部分で十分得点を稼ぐことができます。出題されたとしてもたった1問です。

得点できても1点。得点できなくても1点。

その1点が合否を分けることになるのでは?

と思う人もいるかもしれません。結果的にはそうなることもあるでしょう。

しかし,ほかの問題を見直してみると,もうちょっとしっかり覚えておけばよかった,あるいは思い違いをしたと思う問題があったはずです。

これは他の科目でも同じことが言えます。

例えば,都道府県及び市町村は福祉事務所を設置しなければならない

といった問題です。

今見るとこれを正解だとは思わないでしょう。町村は任意設置だからです。しかし国試会場ではこんなものでさえ引っ掛けられてしまうのです。

こういったものに引っ掛けられることなく,正解にたどり着くことが合格のためには極めて大切なことです。

難解なピアソンを覚え切ることやどんなものが出題されるか分からない白書に目を通すことではありません。

国試合格に必要なのは・・・

「良く読めば解ける問題」をいかに国試会場で正解することができるか

です。今の勉強はそのためにしているのです。


それでは今日の問題です。

第23回・問題81 質問に対する回答の分布の代表値に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 人々の年収額の分布では,平均値(算術平均)より高い人と平均値(算術平均)より低い人の数は等しくなる。

2 名義尺度変数では,中央値を求めることができないが,最頻値は求めることができる。

3 観測値の個数が偶数の場合には,中央値は存在しない。

4 一つの分布において,平均値(算術平均),中央値,最頻値はそれぞれ一つに定まる。

5 平均値(算術平均)は,はずれ値の影響を受けやすいので,中央値より常に大きくなる。


代表値と呼ばれるものの中には,算術平均(いわゆる平均値),中央値,最頻値があります。

前回書いたように,いわゆる平均値を算出することは多いですが,それが集団の正しい姿を現わしているかは分かりません。

そのためA大学とB大学の国試平均は同じだったにも関わらず,合格率がまったく違うということが起きます。


それでは解説です。


1 人々の年収額の分布では,平均値(算術平均)より高い人と平均値(算術平均)より低い人の数は等しくなる。

これは間違いです。

平均値は,いわゆる外れ値と呼ばれる極端に大きい数値や小さい数値があると,大きい方や小さい方にずれます。

高い方と小さい方の数が同数になるのは中央値です。

<算術平均が集団の性質を正しく表すことに限界がある例>

A大学とB大学の中央値を調べてみると,A大学はこの時の合格基準点だった90点が中央値,B大学の中央値は,70点。

そのために平均点が同じであっても,A大学の合格率は50%,B大学の合格率は10%と大きな差がついてしまったのです。

平均値は,外れ値の影響を受けやすいものです。
外れ値の影響を受けにくいのが,中央値です。


2 名義尺度変数では,中央値を求めることができないが,最頻値は求めることができる。
これが正解です。

名義尺度は「1.はい」「2.いいえ」と区別するための尺度です。

最頻値は最も多く現われるもので,「1.はい」50人,「2.いいえ」25人だとしたら,「はい」が最頻値です。

最頻値は,名義尺度,順序尺度。間隔尺度,比例尺度すべてで算出することができます。


3 観測値の個数が偶数の場合には,中央値は存在しない。

これは間違いです。

中央値は,すべてのデータを小さい方から並べて真ん中にあたる数値です。偶数の場合は中央にあたる数値の平均をとります。

中央にあたる数値が50と51だとしたら,中央値は50.5ということになります。


4 一つの分布において,平均値(算術平均),中央値,最頻値はそれぞれ一つに定まる。
これも間違いです。

算術平均,中央値,最頻値が同じ数値になることは稀です。

それぞれは違った算出方法を行うからです。たまたま同じになることはあっても,それはめったに起きることではありません。


5 平均値(算術平均)は,はずれ値の影響を受けやすいので,中央値より常に大きくなる。
これも間違いです。

算術平均は,いわゆる外れ値の影響を受けるのは正しいです。

しかし,外れ値によって,大きい方にも小さい方にもずれます。



<今日の一言>

ピアソンの積率相関係数は難しくても,尺度水準や代表値は正しく理解すればそれほど難しくないです。

「社会調査の基礎」は多くの人が苦手とする科目ですが,攻略ポイントはちゃんとあります。

こういったものをしっかり押さえていくことこそが合格をつかむことになります。

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