2019年1月20日日曜日

尺度水準って何?~知識の整理

社会福祉士の国試の特徴は,出題範囲が広いことです。

19科目もあります。

模擬試験を受けて国試に備えてきた方も多いことでしょう。

出題範囲は広いので,

たまたま知っているところが出題された
たまたま適当につけたものが正解した

といった理由では,良い成績は取れません。

その中で,良い成績を取れた方は,自信を持って良いと思います。

決して「運が良かった」とは思わないようにしましょう。

そう思うと達成動機が低い人になってしまいます。

模試で90点を取れなくて,落ち込んだという方もいらっしゃるでしょう。

受験者の得点分布を発表している模擬試験の結果を見てみればわかりますが,90点以上得点できている人は,上位のほんの数パーセントです。

国試もそうですが,模擬試験も問題の難易度によって受験者の点数は大きく変化します。

模擬試験は,国試よりも難易度が高いものが多いので,国試よりも点数は取れません。

また,国試よりも早い時期に実施されるので,まだ仕上がっていない時点で受験します。


大切なことは,出題基準で示された範囲の内容をどれだけしっかり勉強してきたのか,です。

これを心がけてきた人は,必ず模試の点数よりも高い点数が取れます。

国試の出題範囲は広いですが,出題基準を超えた出題はほとんどありません。

焦りは高まってきますが,落ち着いて勉強していけば,今からでもまだまだ実力は伸ばせます。


さて,今回は,尺度水準を取り上げます。

尺度水準とは,測定したデータを数値化するものです。

尺度水準が現行カリキュラムで一問丸ごと出題されたのは,第25回と第28回の2回しかありません。

理解するのが面倒なら捨てても良いと思います。しかししっかり理解すれば点数は取れると思いますので,完全に捨ててしまうのはちょっともったいないです。

尺度水準は,名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の4種類しかないからです。

第25回の国試問題
https://fukufuku21.blogspot.com/2017/10/blog-post_11.html

尺度水準の詳しい説明はこの中でしているので,まず確認してください。

それでは今日の問題です。


第28回・問題85 4種類の尺度水準,すなわち名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 大小関係を示すことができるのは,名義尺度と比例尺度の2つだけである。

2 意味のある算術平均を算出できるのは,間隔尺度と比例尺度の2つだけである。

3 中央値を算出できるのは,順序尺度と間隔尺度の2つだけである。

4 最頻値を算出できるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。

5 カテゴリーごとの分類ができるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。


この国試問題は,第28回のものです。

余計な言い回しはそぎ落とされて,しかも表現がそろえられています。

受験者にとっては,難関となる問題スタイルです。

しかも尺度水準の理解がなければまったく理解不能の問題だと思います。

初めて出題したものは一切ないのに,簡単には解くことができないこの問題は,国家試験としての完成度は極めて高いものと言えるでしょう。

この問題では,尺度水準の知識がしっかりあることに踏まえて,それらの特質を理解していることが必要です。

思考をしっかり動かして,答えを考える柔軟性が求められます。

正解を見つけ出すコツは,具体的な例を頭に思い浮かべることです。

柔軟な思考と想像力が求められる問題への対応は,ほとんどがこの方法でクリアできるでしょう。

それでは解説です。


1 大小関係を示すことができるのは,名義尺度と比例尺度の2つだけである。

これは間違いです。

名義尺度の例は,「1.はい」「2.いいえ」などで,単にデータを区別するだけのものです。

「1.いいえ」「2.はい」でも良いのです。

その時点でこの選択肢は間違いだと分かりますので,ほかの尺度水準のことを考える必要はありません。

しかし一応説明すると

順序尺度の例は,利用者満足度調査です。

「1.大いに満足」「2.やや満足」「3.ふつう」「4.やや不満」「5.大いに不満」といったように,強弱に意味があります。つまり大小に意味があります。

間隔尺度の例は,気温です。

0℃よりも20℃の方が気温が高いと表現されます。つまり大小に意味があります。

比例尺度の例は,身長や体重です。

身長150cmよりも身長180cmの方が身長が高いと表現されます。つまり大小に意味があります。


2 意味のある算術平均を算出できるのは,間隔尺度と比例尺度の2つだけである。

これが正解です。

算術平均とはいわゆる平均値のことです。最頻値,中央値とともに代表値と呼ばれます。

名義尺度の例では,「1.はい」「2.いいえ」の算術平均で1.5という数値を算出できますが,意味をもたないものです。

順序尺度の例は,利用者満足度調査です。これも算術平均を算出できますが,意味を持ちません。

なぜなら,Aさんにとっての「1.大いに満足」と,Bさんにとっての「2.満足」は同じレベルかもしれないからです。順序尺度の特徴は,数値の大小には尺度の間隔は意味をもたないということです。

もっとわかりやすい順序尺度の例を挙げると「以下のくだものの中から好きな順番に3つ挙げてください」といったものがあります。

最も好きなくだものは,ミカンだとしても,2番目に好きなくだものは思い浮かばず,ぶどうとりんごかな,まあ2番目に好きなものをぶどうにして,3番目に好きなものをりんごにしておこう,と思った場合は,1番目と2番目には大きな差がありますが,2番目と3番目の間の差がほとんどありません。

こういったものは,足したり引いたり,かけたり割ったりする計算はしても意味がないのです。

間隔尺度の例は,気温です。今月の平均気温は10℃といったように算出できます。

間隔尺度は尺度の間隔が等しいので,足したり引いたりすることができます。今日は昨日よりも5℃高いと表現できます。

しかし,かけたり割ったりすることは意味がありません。今日は昨日よりも気温は3倍になったという表現はできますが,意味がある数値ではありません。

比例尺度はの例は身長や体重などです。

Aクラスの平均身長,平均体重,Bクラスの平均身長,平均体重,といったように算出できます。


3 中央値を算出できるのは,順序尺度と間隔尺度の2つだけである。

これも間違いです。

中央値は,算術平均,最頻値とともに代表値の一つです。

中央値は,小さい値から順番に並べて,そのちょうど真ん中にあたる数値です。

そのため中央値よりも小さい値,大きい値の数は必ず等しくなります。

算術平均だと,いわゆる「外れ値」と呼ばれる極端に大きな数値や小さな数値が混じっていると中央値よりも大きな方や小さな方にずれてしまいます。

算術平均は,よく使われますが,必ずしもその集団の様子を正しく見ることができないので要注意です。

国家試験の平均点がA大学,B大学ともに70点だったとします。
どちらも受験者は10名だった場合,総得点は700点です。

しかし合格率は

A大学50%
B大学10%

といったように大きな差が生まれることがあります。これは得点にばらつきがあるためです。ばらつきは,分散や標準偏差でみることになります。

そこまでやらなくても,算術平均だけではなく,中央値や最頻値をみるだけでもその集団の様子をうかがうことができます。

この科目では,代表値の知識を問われることが多いのですが,それは・・・

算術平均を算出することは多いけれど,それは正しい姿を必ずしも示しているわけではない

ということを示したいのではないかと考えています。


4 最頻値を算出できるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。

これも間違いです。

最頻値は,最も多く表れる数値をいいます。

名義尺度でも最頻値は算出できます。

「1.はい」 50人 
「2.いいえ」 20人
「3.どちらでもない」 30人

といったものなら 「1.はい」が最頻値となります。

そのほかの3つもすべて最頻値は算出できます。 


5 カテゴリーごとの分類ができるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。

これも間違いです。

すべての尺度はカテゴリーごとに分類できます。

カテゴリーごとの分類とは意味がわかりにくいでしょう。

名義尺度と順序尺度は定性的データ
間隔尺度と比例尺度は定量的データ

です。

カテゴリーごとの分類とはいくつかあるものをまとめて分類することをいいます。

定性的データはもともとカテゴリーごとに分類されています。

名義尺度の例:「1.男」「2.女」

「1.男」であっても,その中には,野性的な男,優しい男,優柔不断な男,オタクっぽい男,スポーツマンの男,小太りな男,イケメンの男,日本人の男,中国人の男,大学生の男,おしゃべりな男……

など男にも様々なタイプがあります。

それを「1.男」として測定しています。「2.女」も同様です。


順序尺度も同じです。

利用者満足度調査は主観であり,本来数値化できるものではありません。

「1.とても満足」であっても,とてもとても満足,とてもとてもとても満足,今まで利用してきたものと比べてとても満足……

など,とても満足の中でも様々あります。それを「1.とても満足」として測定しています。


間隔尺度と比例尺度は,定量的データといいます。定量的テータは,数値が連続しています。

間隔尺度のカテゴリー化とは,例えば気温では

「-10~-1℃」「0~10℃「11~20℃」「21~30度」

といったように連続した数値を区切ることでカテゴリー化できます。

比例尺度のカテゴリー化とは,例えば国試の点数

「0~10点」「11~20点」「21~30点」「31~40点」「41~50点」「51~60点」「61~70点」「71~80点」「81~90点」「91~100点」「101~110点」「111~120点」「121~130点」「131~140点」「141~150点」

といったようにカテゴリー化します。

クロス集計表をつくるとき,カテゴリー化する必要があります。

クロス集計表はとても重要なので,この機会にしっかり覚えておきましょう。



<今日の一言>

尺度水準と聞くととても難しく感じるかもしれません。

しかし,それらの例を頭に入れておけば,どんな問題でも対応できます。

決して怖がることはありません。

名義尺度の例:性別
順序尺度の例:利用者満足度調査
間隔尺度の例:気温
比例尺度の例:体重,身長

間隔尺度と比例尺度は似ています。違いは比例尺度には絶対的なゼロがあることです。

比例尺度の身長や体重は,0未満はありません。0が出発点です。これが絶対的なゼロがあるという意味です。

それに対して

間隔尺度は,絶対的なゼロが存在しません。

間隔尺度の例は,気温ですが,たまたま氷結温度を摂氏0度に設定しているだけで,0℃よりも下のマイナスが存在します。

間隔尺度では0は,何もない絶対的なゼロではなく,たまたま誰ががそこをマイナスにしているだけのことです。

つまり間隔尺度のゼロは,自由に決めることができるということです。

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