2019年1月19日土曜日

質問紙の作成方法と留意点(5/5)~ダブルバーレル質問・キャリーオーバー効果などの理解

社会福祉士の試験に合格することはもちろん重要ですが,その過程で得られた知識・経験はそれ以上に重要だと思います。

社会福祉の現場にいる人が,仕事をしながら,そして家庭をもち,その上でさらに勉強するというのは,とても厳しい道であることは間違いありません。

そこに果敢にチャレンジしていることは,それだけですごいことだと思います。

人によっては「社会福祉士を取ったからといって何が変わるの?」という人がいます。

確実に変わります。

社会福祉士には,社会福祉士としての共通基盤があります。

目に見えることでは,質問紙の作成方法もその一つでしょう。

今まで行ってきたアンケートなども適切ではなかったものがあることに気がつく人もいるでしょう。

学校や職場で行うアンケートも変化していくでしょう。

ほかの人が作ったものでも

「ここはダブルバーレルになっているよ」というだけで,社会福祉士ならすぐ理解して修正することができるでしょう。

というかダブルバーレル質問自体を作らないと思います。

社会福祉士は,始まりの第一歩。

夢の実現に向けて,頑張りましょう。


それでは今日の問題です。


第30回・問題89 質問紙の作成に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 「糖尿病予防のために食事や運動に気を付けていますか」というように,複数の事柄は一つの質問文で尋ねる方が望ましい。

2 前の質問の回答が次の質問の回答に影響を与えることを促すような質問の順番にすることが望ましい。

3 「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問文では,回答者が自分の家庭でそうすべきだと考えているかどうかは分からない。

4 意識調査の質問では,回答を明確にするために「どちらともいえない」という選択肢を設けてはならない。

5 調査票のレイアウトや色を工夫することは,回答をゆがめることになるので行うべきではない。


前回の問題と違い,今回の問題は,表現がそろっていません。選択肢それぞれの文字数と表現をそろえることが作問技術としてはかなり高いものであることがうかがえるようです。


今回の問題も柔軟な思考と想像力が求められる問題です。

それでは早速解説です。


1 「糖尿病予防のために食事や運動に気を付けていますか」というように,複数の事柄は一つの質問文で尋ねる方が望ましい。

これは間違いです。

またまたダブルバーレル質問です。

食事に気を付けているけれど,運動には気を付けていない

あるいは

食事には気を付けていないけれど,運動には気を付けている

といった人は答えられなくなってしまいます。

そのため,ダブルバーレル質問は不適切な質問なのです。


2 前の質問の回答が次の質問の回答に影響を与えることを促すような質問の順番にすることが望ましい。

これは間違いです。

前の質問の回答が次の質問の回答に影響を与えることは「キャリーオーバー効果」といいます。

キャリーオーバー効果を悪用すれば,調査結果は,まったく別なものにすることができます。自分に有利な結果を得ることができるのです。

そんな調査はあってはなりません。そのためキャリーオーバー効果の影響がないように質問の順番は十二分に気を付けなければならないのです。


3 「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問文では,回答者が自分の家庭でそうすべきだと考えているかどうかは分からない。

これが正解です。

「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問は,一般的な内容を尋ねる「インパーソナル質問」です。

第23回に出題された「あなたは,宗教は大切だと思いますか」と同じタイプの質問です。

個人的な内容を尋ねるなら

あなたは夫婦で平等に家事を行いたいと思いますか」といった質問が必要です。


4 意識調査の質問では,回答を明確にするために「どちらともいえない」という選択肢を設けてはならない。

これも間違いです。

「どちらともいえない」という選択肢がないと,結果はとんでもないことになりま

また,世論調査で「あなたは●●党を支持しますか」という質問をする場合,「どちらでもない」という答えも明確な回答になります。


5 調査票のレイアウトや色を工夫することは,回答をゆがめることになるので行うべきではない。

これも間違いです。

調査票は,調査対象者が見やすいように答えやすいように配慮することが必要です。


<今日の一言>

この問題自体の難易度は低いものです。

だからといって,確実に正解できるかは別の話です。

要注意なのは,この場合選択肢5です。

レイアウトの工夫は必要なのはわかりやすいですが,色は関係あるのだろうか,と思う人もいたはずです。

法制度など明確に線引きができるものは,「レイアウトや色」のように2つの要素があった場合は,もしかすると片方は含まれないものを出題している可能性があります


例えば,都道府県と市町村は,福祉事務所を設置しなければならない。

といったものがあります。

今まで何度も出題されてきたように,設置義務があるのは,都道府県と市です。町村は任意設置です。

法制度の問題ではない場合,そんな細かいところに引っ掛けポイントを作ることはほとんど不可能です。下手すると不適切問題になってしまうからです。

この問題で選択肢5を選んでしまった人は,もっと気を楽にして考えましょう。

因みに色の工夫は,紙の色が濃すぎると文字が見にくい,紙と文字を同系色にすると見にくいなど,配慮すべきポイントはたくさんあります。

最新の記事

子ども・子育て支援法

  子ども・子育て支援法は,これまでにも出題されてきましたが,正式に出題基準に含まれたのは,第37回国家試験です。 子ども・子育て支援制度は,市町村が実施主体になっています。 支給申請は,市町村に対して行います。 児童福祉法には,入所系があるので都道府県の役割がありますが,子ども...

過去一週間でよく読まれている記事