2019年1月17日木曜日

質問紙の作成方法と留意点(3/5)~「望ましい」は要注意!!

今回も「社会調査の基礎」に取り組みたいと思います。

この科目で,よく使われる言い回しがあります。

それは今日のタイトルでもある「望ましい」です。

他の科目ではあまり使われることがないので,この科目の特徴だと言えます。

「望ましい」が使われている文章を調べてみると,正解にはなっていないものが多い傾向にあるようです。

「望ましい」という表現が含まれている時には,注意してみましょう。

今日の問題も「望ましい」が含まれた問題です。


第26回・問題87 質問紙作成の注意点に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 「喫煙や飲酒を毎日しますか? (はい/いいえ)」のように,なるべく2つの事柄を1つの質問で尋ねるのが効率的である。

2 「増税すると福祉予算が増えますが,あなたは消費税率の引上げに賛成ですか」のように,回答者がよりよく考えて回答できるように質問に説明を含めるのが望ましい。

3 「あなたは年金支給開始年齢の引上げに賛成ですか」と聞く代わりに,「賛成ですか,反対ですか」と聞くと,表現が簡潔でなくなるので望ましくない。

4 「個人の自由に最大限の配慮をしないケアは認められないという考えに反対する立場に,あなたは賛成ですか,反対ですか」という質問は,否定が重なり好ましくない。

5 質問する順番によって回答が変わることがあるので,回答してほしい選択肢が選ばれやすくなるような順番に配列するのが望ましい。


文章を読むだけでも面倒な問題です。

昼休みは,午前中のことは完全に忘れて,リフレッシュすることの大切さを再認識させてくれます。

昼休みに,答え合わせをする人がいたら,「ありがとう」と思いましょう。

得点しやすい午後に向かうための力を自ら削いでいるようなものだからです。

多くの問題の正解率は60%に想定されていると考えると,問題の半分近くは間違うものです。

答え合わせしていても,相当な実力の持ち主が二人そろっていないと,多くの問題は半分近く答えがそろわないはずです。

昼休みは,リフレッシュするために必要な時間であることを意識してください。
午前中ができていないと思っても,決して気にすることはありません。

それでは解説です。


1 「喫煙や飲酒を毎日しますか? (はい/いいえ)」のように,なるべく2つの事柄を1つの質問で尋ねるのが効率的である。

これは間違いです。

旧カリキュラム時代から何度も何度も繰り返し出題されてきた「ダブルバーレル質問」に関するものです。

喫煙は毎日しているけれど,飲酒は毎日していない

あるいは

喫煙は毎日していないけれど,飲酒は毎日している

という人は答えられなくなってしまいます。

ダブルバーレル質問は,1つの質問に2つ以上の要素が入っている質問です。この例のようにダブルバーレル質問は答えられなくなってしまうことがあるので,不適切な質問となります。


2 「増税すると福祉予算が増えますが,あなたは消費税率の引上げに賛成ですか」のように,回答者がよりよく考えて回答できるように質問に説明を含めるのが望ましい。

これも間違いです。

「望ましい」が出てきました。要注意です。

最初に「増税すると福祉予算が増えますが」と前置きしてから質問するのは,誘導質問と呼びます。

質問内容は「あなたは消費税率の引上げに賛成ですか」ですが,誘導質問では回答を「はい」「いいえ」どちらにでも誘導することができます。

おそらく「増税すると福祉予算が増えますが」という前置きだと「はい」と答えるでしょう。

「増税すると日常生活の負担が増えますが」という前置きだと「いいえ」と答えるでしょう。

このように誘導質問は,回答を誘導するので望ましくありません。


3 「あなたは年金支給開始年齢の引上げに賛成ですか」と聞く代わりに,「賛成ですか,反対ですか」と聞くと,表現が簡潔でなくなるので望ましくない。

これも間違いです。

表現が簡潔ではないのは正しいです。
しかし人は「いいえ」と答えるよりも「はい」と答えやすいイエステンデンシーというものがあるので,「賛成ですか」「反対ですか」という質問は極めて適切です。

そうすると「はい」でもなく「いいえ」でもなく,「賛成です」「反対です」と答えられるからです。


4 「個人の自由に最大限の配慮をしないケアは認められないという考えに反対する立場に,あなたは賛成ですか,反対ですか」という質問は,否定が重なり好ましくない。

これが正解です。

いわゆる二重否定の質問は,文章で見てもわかりにくいで,考えなければなりません。
この場合の二重否定の質問とは,「配慮をしない」と「ケアは認められない」という部分です。

さらに「反対する」というものを加えて,よくよく考えないと質問の意味がつかみにくくなっています。

好ましい表現だとは思えないでしょう。

わかりやすい表現を心がけるなら

「個人の自由に最大限の配慮するケアは認められなければならない考えに賛成する立場に,あなたは賛成ですか,反対ですか」

あるいは

「個人の自由に最大限の配慮をしないケアでも認められるという考えに,あなたは賛成ですか,反対ですか」

といった質問が適切でしょう。


5 質問する順番によって回答が変わることがあるので,回答してほしい選択肢が選ばれやすくなるような順番に配列するのが望ましい。

これも間違いです。

質問する順番によって回答が変わることは,キャリーオーバー効果といいます。

キャリーオーバー効果や誘導質問を悪用すれば,結論をまったく逆に導くことができるので,適切な社会調査を行う目的で行うのなら,それらは避けなければならないものとなります。

新聞などのマスメディアが実施する世論調査では,どのような質問で調査を行ったのかを公表しているものがあります。そのようにして,調査の信頼性を高めているのです。


<今日の一言>

今の国試は,正しい努力をしてきた人は報われるようにできています。

全然できていないと思っていても,後から自己採点すると意外に点数が取れているものです。

午後は,午前中のことはすっきり忘れて午後に向かうことが大切です。

午前中のことが気になって,持って行った参考書で答えを確認するというのは,最悪のストーリーです。

午前中の問題と午後の問題がリンクされていれば,そういった行為も意味があるでしょう。

しかし,午前と午後で出題内容が重なっていることはほぼありません。

午前中のことは完全に頭から切り離して,午後に向かえば午後の方が解きやすい問題が多いこともあり,良い結果になりやすいです。

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