巷に広まるデマはたくさんあります。
その一つとして,50歳,60歳の合格率は数%というものがあります。
それは嘘です。
60歳以上の合格率は極めて高い!! 40歳以上で合格できる勉強方法
https://fukufuku21.blogspot.com/2017/11/6040.html
ここで述べたように,年代別の合格者の割合は発表されていますが,年代別の受験者の割合は発表されていません。
そのため,年代別の合格率は,試験センター以外は知り得ません。
年代別の合格率を語る人の話はすべてデマに過ぎません。
過去記事で取り上げているのは,第29回のデータです。
第30回の合格率は,
大学 29.2%
一般養成施設 35.8%
一般養成施設で受験資格を得た人の多くは,仕事をしながら学んだ人です。
よく知られていないことだと思いますが,大学よりも一般養成施設の方が合格率が高いのです。
ここから,40歳代も含めて,50歳代,60歳代の合格率が低いとは考えにくいと思いませんか?
現役受験だけで比較しても
大学 38.9%
一般養成施設 59.4%
となっています。
年代別の合格者の割合は発表していますが,合格率は発表していないことに意図的なものを感じています。
大学生の多くは20歳代だと思いますが,もしかすると,それよりも上の年代よりも20歳代の合格率が低いのかもしれないのです。
事実はわかりませんが,少なくとも50歳代,60歳代の方の合格率は世間一般で思われているほど低くないと思います。
記憶力は,年齢とともに低下するのは生理的現象です。
しかし,結晶性知能は年齢とともに高まっていきます。
結晶性知能が社会人の合格とかかわっているのではないかと考えられます。
社会人のための問題の解き方のヒント
社会人には,人生の中で得た知恵があります。
それを最大限に生かしましょう。
難しい問題だからといって思考をとめちゃだめです。
それでは今日の問題です。
第24回・問題78 横断調査と縦断調査に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 広い地域を対象に行う調査は横断調査であるが,狭い地域のなかで若者と老人など多様な人を対象に行う調査は縦断調査である。
2 同じ対象者に,一定の期間にわたって複数回調査を行うパネル調査は,横断調査に含まれる。
3 1回限りの横断調査でも2つの変数の間の相関関係を見出すことはできるが,因果関係を明らかにするにはパネル調査の方が適している。
4 内閣を支持するか否かについて2つの時点で横断調査を繰り返し,内閣支持率に変化がなければ,支持・不支持の態度が変化した人がいなかったことが分かる。
5 パネル調査における「パネルの摩耗(又は脱落)」とは,第1回目の調査において無回答者が生じることをいう。
横断調査と縦断調査は,第24回,第27回,第30回に出題されています。
第30回に出題されていますが,2年連続で出題されることはほとんどないと思って紹介しなかった領域です。
しかし,ここで紹介するのは,知恵(思慮深さ)が必要な問題だからです。
縦断調査は,何度も繰り返して行います。
横断調査は,一度きりの調査です。
この知識は,最低限必要です。
国試は,理解が難しいものが出題されます。
その時に発揮するのが,知恵(思慮深さ)です。
知らないものでも,ばたばたせず平然と考えを巡らせること!!
20歳の若者でもできる人はできるかもしれませんが,人生経験の中で多くのことを学んだ人の独壇場だと思います。
それでは解説です。
1 広い地域を対象に行う調査は横断調査であるが,狭い地域のなかで若者と老人など多様な人を対象に行う調査は縦断調査である。
これは間違いです。
解答テクニック
●●は●●だが,●●は●●ではない
のスタイルの文章となっています。
このスタイルで正解になることはまずありません。
一回きりの調査は横断調査,複数回の調査は縦断調査です。
対象地域が広い,狭いは関係ありません。
ここに試験委員が仕掛けたトラップがあることに気が付きますか?
横断調査と縦断調査は,日本語的に推測しにくいものです。
そこがトラップなのです。
知識の足りない人は,「横断」「縦断」という言葉から意味を考えようとします。
しかし,日本語的に推測してもそれとは違うのです。
トラップを避けるためには,最低限の知識は必要ですが,解答テクニックを知っていれば,トラップは避けることができるでしょう。
2 同じ対象者に,一定の期間にわたって複数回調査を行うパネル調査は,横断調査に含まれる。
これも間違いです。
横断調査は,一回きりの調査です。複数回行う調査は縦断調査です。
3 1回限りの横断調査でも2つの変数の間の相関関係を見出すことはできるが,因果関係を明らかにするにはパネル調査の方が適している。
これが正解です。
第30回国試では,この選択肢を下敷きにしたのではないかと思う出題がありました。
横断調査では,因果関係を特定するに当たり制約が伴う。
これも正解です。
同じ内容のものを第24回,第30回でも正解にしているところが国試の面白いところです。
パネル調査は,縦断調査の一つで,同じ対象者に対して,複数回調査を実施するものです。
相関とは,「Aが増えたら(減ったら),Bも増える(減る)」というものです。
因果関係とは,「Aの結果,Bになる」といったAとBの関係が直接的なものです。
4 内閣を支持するか否かについて2つの時点で横断調査を繰り返し,内閣支持率に変化がなければ,支持・不支持の態度が変化した人がいなかったことが分かる。
これは間違いです。
しっかり思考をすれば間違いだとわかるでしょう。
思考をとめちゃだめです。
思考するのをやめなければ,解ける問題はたくさんあります。
5 パネル調査における「パネルの摩耗(又は脱落)」とは,第1回目の調査において無回答者が生じることをいう。
これは間違いです。
この時,初めて「パネルの摩耗」が出題されました。
多くの参考書には,現在記載されていると思いますが,この言葉を知らないで問題を解いた人が多かったはずです。
国試では,ほとんどの場合,かっこの中を読む必要はないのですが,この選択肢を知ってから,どこにヒントが隠されているかわからないものだということを強く感じました。
ここをお伝えしたいのです。
そのヒントとは(又は脱落)です。
「摩耗」では意味を推測することはできませんが,「脱落」なら当初よりもだんだん減っていくイメージがあると思いませんか?
そこから「第1回目の調査において」というのは間違いではないかと推測できます。
第2回以降,調査に協力してくれる人が減っていくことが「パネルの摩耗」です。
この問題が出題されたときに国試を受けた人で,この問題を間違った人の多くは,この選択肢を選んだと思われます。
つまり,この選択肢を消去できたか否かによって,正解できたか否かが決まったのです。
(又は脱落)に気持ちを向けられた人とそうでなかった人の違いとも言えるでしょう。
<今日の一言>
結晶性知能は,たくさんの知識,言葉の意味を知っているということに他なりません。
もちろん若者でもたくさんの知識をもっている人もいるでしょう。
しかし,結晶性知能は年齢とともに高まっていきます。
今日の結論です。
社会人は,知らないものが出題されたら,豊富な人生経験,そこからつかんだ知識を総動員して考えましょう。社会人の人生経験はとても貴重なものです。
大学よりも一般養成施設の方が合格率が高いことからわかるように,社会人の経験が結果に反映することができる試験です。
50歳代,60歳代の方が結果を残せる試験です。
細かいところまで配慮できる社会人が力を発揮できる試験です。
<おまけ>
学生の方は,流動性知能が高いです。問題にうまくアジャストすることができる能力です。
学生の方も最後まで粘りましょう!!
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