2019年1月15日火曜日

質問紙の作成方法と留意点(1/5)~避けなければならないもの

出題基準では,前回まで取り組んでいた調査票の配布と回収の方があとで,今日の質問紙の作成方法と留意点の方が先になっています。

それはさておき,質問紙の作成方法と留意点が出題されたのは,以下の通りです。

第23回,第24回,第26回,第28回,第30回。

出題回数は多いのですが,ほぼ2回に1回の出題なので,第31回は出題の可能性は低いと言えますが,以前に書いたように,ヤマを張らない方針なので,ここもしっかり押さえておきたいと思います。

「社会調査の基礎」は,現行カリキュラムで加わった科目ですが,質問紙の作成方法は,旧カリキュラム時代から繰り返し出題されてきたものです。

その中で,最も出題回数が多いのは,ダブルバーレル質問です。

ダブルバーレルは,もともとは2連発銃のことを指します。

2連発銃とは,1回引き金を引いたら,2つの弾が同時に発射されるものです。

下手な鉄砲数打てば当たる

1発よりも相手に当たる確率は高くなるでしょう。

質問紙を作成する場合は,ダブルバーレル質問は不適切なものとなります。

ダブルバーレル質問は,1つの質問に複数の要素を含んだ質問です。
1つの質問で複数の要素があるのが2連発銃に似ているため,ダブルバーレル質問という名称がついているのです。

例としては,

リンゴやミカンなどの果物は好きですか?

リンゴは好きでもミカンは嫌い,逆にミカンは好きでもリンゴは嫌い,という人は答えられなくなってしまいます。

研修後アンケートなどでは,

講師の話の内容や声の大きさは適切でしたか?

といった質問をしてしまうと,果物と同じように話の内容は適切だったが,声が小さくて聞き取りにくかった,または,声の大きさはちょうどよく,歯切れも良かったけれど,話の内容が面白くなかった,という人は答えられなくなってしまいます。

質問紙の作成では,ダブルバーレル質問のほかに避けなければならない留意点はたくさんあります。

これから問題を解きながら,押さえていきましょう。

それでは早速今日の問題です。


第23回・問題80 質問文作成の注意点に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 「煙草は健康に悪いから吸うべきではない,という意見にあなたは賛成ですか,反対ですか」という質問は,ダブルバーレルな質問ではない。

2 「ごきょうだいは何人ですか」という質問には,回答者が判断に迷うようなあいまいさは存在しない。

3 「あなたは,宗教は大切だと思いますか」という質問の回答は,回答者本人の信心の強さ・弱さを表すものと解釈してよい。

4 「市民運動」という表現と「草の根の市民運動」という表現は,同じ意図で使われている場合でも,回答が異なってしまう可能性がある。

5 「ふだん朝食をとりますか」という質問文では「ふだん」が指すものがあいまいなので,「今朝は朝食をとりましたか」のように日時を特定しなければならない。


「質問紙の作成方法」も想像力が求められる選択肢の連続です。

「考えるのが面倒だ」と思うと思わなければ,必ず正解にたどり着くことができます。
もちろんダブルバーレル質問のように,最低限の知識は必要です。

それでは解説です。


1 「煙草は健康に悪いから吸うべきではない,という意見にあなたは賛成ですか,反対ですか」という質問は,ダブルバーレルな質問ではない。

これは間違いです。

ダブルバーレルになっているかが,明確にはわかりにくいからです。しかし,このタイプの問題は,ダブルバーレル質問だからこそ出題されていると考えることができます。

「煙草は健康に悪いから吸うべきではない」を分解すると

煙草は健康に悪い

という部分と

煙草は吸うべきではない

という部分に分解することができます。

煙草は健康に悪いけれど,煙草を吸うべきではないとは考えない。

あるいは

煙草を吸うべきではないとは思うけれど,それは健康に悪いという理由ではない。

といった人は答えられなくなってしまいます。


2 「ごきょうだいは何人ですか」という質問には,回答者が判断に迷うようなあいまいさは存在しない。

これも間違いです。

しかしどこがあいまいなのかが明確にはわかりにくいと思います。

あいまいさがあるからこそ出題している意味があると考えられます。

「ごきょうだい」といった場合は,最近はひらがな表記をすることで,男性の兄弟,女性の姉妹両方を示すようになっていますが,きょうだいと聞くと,「姉妹はいるけれど,兄弟はいない」と考えてしまう恐れがあります。

ほかには,自分を含めるのかどうか,といったあいまいさもあります。


3 「あなたは,宗教は大切だと思いますか」という質問の回答は,回答者本人の信心の強さ・弱さを表すものと解釈してよい。

これも間違いです。

質問には,一般的なことを尋ねるインパーソナル質問と,個人の内容を尋ねるパーソナル質問があります。

第30回国試では,

「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問文では,回答者が自分の家庭でそうすべきだと考えているかどうかは分からない。

という出題がなされて,正解となっています。

あなたは,宗教は大切だと思いますか

家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか

という部分はどちらもインパーソナルな質問です。

どちらも,個人の内容を尋ねるものとはなっていません。

個人の内容を尋ねるなら

あなたは,宗教を信仰していますか

あなたの家庭では,夫婦で平等に家事を分担していますか

といった内容の質問をしなければなりません。


4 「市民運動」という表現と「草の根の市民運動」という表現は,同じ意図で使われている場合でも,回答が異なってしまう可能性がある。

これが正解です。

一定の意味やイメージのあることを「ステレオタイプ」と言います。

この場合の一定の意味やイメージとは単に「市民活動」というよりも「草の根」が地べたを這いずり回った市民活動というイメージがあるということです。

言葉が違うので,当然受け手のイメージも変わります。当然ですね。


5 「ふだん朝食をとりますか」という質問文では「ふだん」が指すものがあいまいなので,「今朝は朝食をとりましたか」のように日時を特定しなければならない。

これも間違いです。

ふだんがあいまいだと感じるのでしたか,

「あなたは,週に何回朝食をとりますか」

といった質問にします。

「今朝は朝食をとりましたか」

という質問にあいまいさはありませんが,今日たまたま朝食はとったけれど,久しぶりに朝食をとった,という人もいるかもしれません。


<今日の一言>

法制度は覚えるのは得意だけれど,理論系の問題は苦手

という人はたくさんいます。

合格する人でも,もしかするとそうかもしれません。

法制度の方が問題数が多いので,それはそれでよいと思います。

しかし,法制度はしっかり覚えておかなければ,正解することができないですが,理論系の問題は,想像力で解くことができるものがあります。

その分,なかなか事前の対策が取りにくいという面もありますが,最低限の知識があれば,突破口を見つけ出すことができるでしょう。

こういった問題で正解できたときは,結構気持ちが良いものですよ。

最後の仕上げにぜひ学習部屋をお役立てください。

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