現在の社会福祉士国試は,今まで何度も紹介してきましたが,問題文がどんどん短くなってきています。
短くなったことは,文章の中に引っ掛けポイントをほとんど仕掛けられないことにつながります。
言い回しの難解さで,正解がわかりにくいものではなくなってきています。
「社会福祉士になる」という強い意志をもって勉強してきた人は,試験当日に大きな力を発揮できるのが今の国試です。
今は,緊張感が高まっていると思います。
それは誰もが通り抜けなければならない道です。
国試は,マーク式。問題文の中に必ず答えがあります。
覚えたことが頭のどこかに残っていれば,何となくでも答えを探り出すことができます。
名探偵になったつもりで,試験委員が仕掛けたトラップを見つけていきましょう。
文字数の制約のため,以前のように,二重三重にはトラップは仕掛けられません。
間違いを誘うような思わせぶりな表現もされにくくなっています。
知識だけで勝負できる条件が整っています。
あとは「自分を信じ切れること」です。
学習部屋では,今では入手困難な過去問もたくさん紹介してきました。
問題の読み解き方もたくさん紹介してきました。
どんな参考書が良いかも言わない,質問も受け付けない,一風変わったブログかもしれませんが,勉強部屋に訪れていただいたすべての人が合格できるように,チームfukufuku21の知恵を絞って,今まで情報を発信してきたつもりです。
自分を信じて,学習部屋を信じて,国試に臨みましょう!!
合格の扉は,今まさに開かれようとしています
さて,今日から質的調査に戻ります。
質的調査で用いられる主なものは
観察法,面接法,ドキュメント分析です。
そのうち面接法で出題される主なものは,
構造化面接法
非構造化面接法
半構造化面接法
フォーカス・グループインタビュー
ライフストーリー・インタビュー
ここに,観察法で紹介しなかった,アクション・リサーチを織り交ぜて出題されます。
構造化面接法の「構造化」とは,質問内容があらかじめ組み立てられていることを意味しています。
非構造化面接法は,質問内容が決まっていないもの
半構造化面接法は,構造化と非構造化の半分の要素をもったもの
グループインタビューは集団面接法,フォーカス・グループインタビューは同じような傾向をもった集団に対する面接法です。
ライフストーリー・インタビューは,調査対象者がインタビュアとの対話を通して,人生を語るものです。これの発展型とも言えるのがアクティブ・インタビューです。対話を通して,調査対象者の新しい気づき,新しい世界を構築するものです。語りを重視する面では「ナラティブ・アプローチ」と共通します。
アクションリサーチは,参与観察よりも調査対象に深くかかわり調査対象の問題の解決を目指すものです。
それでは今日の問題です。
第27回・問題89 調査の手法に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい
1 ライフストーリー・インタビューの実施において,構造化面接によって聞き取りを進めるのがよい。
2 質的データを収集するインタビューや観察などと,量的データを収集する質問紙調査などを組み合わせて行う調査の手法のことを,ミックス法という。
3 アクションリサーチでは,問題解決を目指すという価値指向的立場よりも,真理を追い求める理論的研究の立場が重視される。
4 エスノグラフィーでは,調査者の客観的立場を維持するために,参与観察によってデータを収集してはいけない。
5 フォーカスグループの活用においては,グループとして一致した意見をとりまとめることよりも,異なる意見が幅広く収集されることが期待される。
問題の難易度は高めです。
内容を読むことに夢中になって,2つめを選ぶのを忘れないようにしましょう。
それでは解説です。
1 ライフストーリー・インタビューの実施において,構造化面接によって聞き取りを進めるのがよい。
これは間違いです。
ライフストーリー・インタビューは対話で行われるので,非構造化面接です。
2 質的データを収集するインタビューや観察などと,量的データを収集する質問紙調査などを組み合わせて行う調査の手法のことを,ミックス法という。
これが正解です。
ミックス法は,この時の一回しか出題されたことがないものです。
しかし,正解になっているので,今後注意が必要なものとなります。しっかり覚えておきましょう。
3 アクションリサーチでは,問題解決を目指すという価値指向的立場よりも,真理を追い求める理論的研究の立場が重視される。
これは間違いです。
「よりも」は間違いになりやすいものですが,アクションリサーチは,問題解決を目指すものです。真理を追い求める理論的研究は重視されるものではありません。
4 エスノグラフィーでは,調査者の客観的立場を維持するために,参与観察によってデータを収集してはいけない。
これも間違いです。
エスノグラフィーの本来の意味は「民族誌」です。観察法が文化人類学から発展したことを思い出させます。現代のエスノグラフィーは,参与観察などで得られたデータ一般をさします。
5 フォーカスグループの活用においては,グループとして一致した意見をとりまとめることよりも,異なる意見が幅広く収集されることが期待される。
これは正解です。
フォーカスグループインタビューはいつも「グループとして合意形成を目指す」といった間違い選択肢として出題されることが多いですが,グループ討議ではないので,そのようなことを目指すものではありません。
<今日の一言>
今日の問題では,ミックス法は正解として出題されました。
しかし,ミックス法は,言葉だけでは意味をつかむことができません。
国試ではこういったところがねらわれます。
半構造化面接もそうです。
勉強をした人はわかっても,勉強が足りない人は見当もつかないでしょう。
こういったところから合否がわかれていきます。
勉強をした人でも解けない問題はあります。
しかしそんな問題は勉強が足りない人はもっと解けないものです。
眠くて辛くても勉強を続けてきたあなたには,合格への道がつながっています。
試験委員が仕掛けたトラップもうまく避けることができるでしょう。
最新の記事
障害者総合支援法における相談支援
今日のテーマは,「障害者総合支援法における相談支援」です。 同法に規定される相談支援機関の中心は,基幹相談支援センターです。 〈基幹相談支援センターの業務〉 ・総合的・専門的な相談の実施 ・地域の相談支援体制強化の取組 ...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
まずは戦後の社会保障制度の変遷を考えてみたいと思います。 昭和 20 年代 は,国民全体が貧しく,救貧の時代です。救貧の中心的制度は,公的扶助です。 昭和 30 年代 に入ると,高度経済成長の時代になり,防貧の時代になります。防貧の中心的制度は,社会保険で...
-
今回は,ロールズが提唱した「格差原理」を学びましょう。 格差原理とは,格差(社会的や経済的に不平等があること)は,最も恵まれない人に用いられる場合にのみ認められること。 格差があることを認めないのではなく,格差があっても,それがその社会の中で最も恵まれない人の利益になるような仕組...
-
横断調査も縦断調査も意味がつかみにくいので,覚えるのが大変だと思います。 横断調査 ある時点で行う調査。 縦断調査 一定の期間を開けて,複数回行う調査。 同じ対象者(パネル)に対して複数回行うパネル調査は縦断調査の一つ。 それでは今日の問題です。 第33回・問題87 横断調...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
今回は,グループワーク(集団援助技術)の主な理論家を学びます。 グループワークの主な理論家 コイル セツルメントやYWCAの実践を基盤とし,グループワークの母と呼ばれた。 また,「グループワーカーの機能に関する定義」( ...
-
ソーシャルワークの理論家たちは,「人と環境」についてどのように述べているのかを確認するシリーズを続けます。 第1回では,リッチモンドを確認しました。 リッチモンド ソーシャル・ケース・ワークは,「人と社会環境との間を個別に意識的に調整することを通して,パーソナリティを...
-
模擬試験を受験するとその場で解答をもらえることが多いので,すぐ自己採点する人も多いことと思います。 しかし,ここで気を付けなければならないのは,模擬試験は,実際の国家試験よりも点数が取りにくい傾向にあることです。 そこを押さえておかないと「あれだけ勉強したのに点数が取れな...