社会福祉士の国試は,マーク式です。
問題文の中に必ず答えがあります。
しかし,実際に得点するのはとても難しいものです。
とは言っても,記述式よりも得点しやすいことは間違いありません。
皆さんが受験する国試は,社会福祉士です。
常に柔軟な思考と対人援助力が求められます。
答えは誰も教えてくれないので,自分で考えることが必要です。
しかも瞬間瞬間に判断しなければなりません。
国家試験で重要なことは,規定の時間内に答えを導き出すことです。
2回にわたって,調査結果の読み方を紹介します。
知識があっても,得点するには柔軟な思考が必要です。
それでは今日の問題です。
第27回・問題88 事例を読んで,調査結果の読み方に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
ある地区で開催された「ふれあいサロン」の参加者の性別と年齢を調査した。その結果,参加者は,男性が64歳と68歳の2名,女性が64歳,66歳,72歳,75歳,77歳,80歳,82歳の7名であった。
1 女性参加者の年齢の中央値は,75である。
2 参加者全体の年齢の範囲は,82である。
3 参加者全体の年齢の最頻値は,2である。
4 男性参加者の年齢の平均値は,66である。
5 女性参加者の年齢の分散と男性参加者の年齢の分散は等しい。
データをどのように読むかは,センター試験でも出題されます。
知識だけでは得点するのは簡単ではないでしょう。
ゆっくり考えると解けるかもしれません。しかし,試験の時間は誰にも共通です。
ゆっくり考えなければ答えられないので,10分延長してください,といったことにはなりません。
この問題は計算しなければならないものです。時間がかかります。
しかしすべてを計算しなければならないわけではありません。
用語を正しく理解しているのかが重要です。
初めて出題されている用語は「範囲」です。
それでは解説です。
1 女性参加者の年齢の中央値は,75である。
これが正解です。
中央値は,データを小さい方から並べてそのちょうど真ん中にあたる数値です。
これは計算ではなく,データを並べなければなりません。
こういった作業は面倒がらずに丁寧に行う必要があります。
ここで手を抜くと試験委員が仕掛けたトラップにはまって,間違う原因となるので注意が必要です。
2 参加者全体の年齢の範囲は,82である。
これは間違いです。
「範囲って何だろう?」と思うと,試験委員が仕掛けたトラップにはまります。
範囲は範囲。日本語の「範囲」と同じ意味です。
最小値から最大値までの範囲です。
82歳は最大値です。これから最小値を引けば範囲です。
3 参加者全体の年齢の最頻値は,2である。
これは間違いです。
最頻値は,最も多く現われる数値です。2歳の人はいません。2歳の幼児はふれあいサロンに参加しないということはないと思いますが,一般的にはあまりないでしょう。
それよりもここで注意しなければならないのは,試験委員が仕掛けたトラップです。
参加者のうち,64歳が2人,それ以外は1人ずつです。
選択肢1でデータを並べなかった人は,うっかり「64歳が2人いるので,最頻値は2だ」と思ってしまうおそれがあるのです。
今,読むとそんなことはないと思うかもしれません。
しかし,国試会場では,このようなものでも勘違いをする可能性があります。
本当によくある話です。笑いごとではありません。
4 男性参加者の年齢の平均値は,66である。
これは正解です。
計算すれば簡単ですね。
5 女性参加者の年齢の分散と男性参加者の年齢の分散は等しい。
これは間違いです。
こういった問題があると,分散を正しく理解して,計算しなければならないと思うかもしれません。
しかし決してそんなことはありません。
「分散」は,散布度の指標です。データがばらついていることを示すものです。
このことがわかっていれば,計算せずとも,女性のほうがばらついていそうだと想像することができます。
分散は,平均値から測定値の差を2乗して,すべてのデータを足したものをデータの個数で割ったものです。。
計算の達人であればすぐ答えは出せるかもしれませんが,分散の意味がわかっていれば,計算する必要はありません。
そこまで試験委員はいじわるではありません。
<今日の一言>
国試には,当然のことながら時間に制限があります。
そのため,時間が気になり焦ってしまいます。
焦ると,文字を読んでも頭に入って来なくなってしまいます。
今の国試は,文字数が短くなっているので,答えがすぐわかる問題も混じっています。
それらで時間を稼ぐことができます。
今日の問題で正解できるためには,選択肢1を面倒がらず,データを並べなおすことをしたかどうかがカギでした。
こういったことを面倒がらずに行えば,選択肢3のトラップに引っ掛けられることはないでしょう。
国試で,焦りそうなら,そこで一度手を止めて深呼吸しましょう。
そこで,リズムを取り戻せるでしょう。
「社会調査の基礎」は,午後の最初の科目です。
ここでリズムが狂うと,最後までリズムが狂ったまま問題を解くことになります。
国試会場では,焦っている自分に気がついていないこともよくあります。
焦っていることに気がつくことができれば,必ず態勢を立て直すことができます。
国試で,実力を発揮できる人と実力を発揮できない人の差は,実はこんなところにあるのです。
焦っている自分に気がついたら,手を止めて深呼吸する
国試会場で実践してみましょう!!
必ず自分を取り戻すことができます。
がちがち頭では,柔軟な思考はできません。
気持ちに少しでも余裕をもって,国試に臨むことができれば,今まで努力してきた人は,実力通りの力を発揮することができるでしょう。
あともうひと頑張りです。
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