2019年1月18日金曜日

質問紙の作成と留意点(4/5)~表現をそろえた問題対策

近年の社会福祉士の国試問題の特徴は・・・

①問題の文字数が短くなっていること
②できるだけ表現をそろえて出題するようになってきていること

どちらも勉強不足の受験生には不利な条件です。日本語的な言い回しで判断することができないからです。

勉強不足で国試に臨む人にとっては,極めて不利な状況にありますが,逆に勉強を地道に続けてきた人にとっては,そのままの力を発揮できる試験になってきています。

社会福祉振興・試験センターでは,受験生の得点分布は発表していませんが,第25回国試以前よりも確実に得点分布に開きが出てきていることは間違いありません。

つまり得点できる人は,合格基準点を大きく上回り,得点できない人は,合格基準点を大きく下回ります。


今回取り上げる問題は,第28回の国試問題です。

久々に不適切問題があった年で,合格基準点は88点となりました。正しいもの(適切なものを選ぶ)問題は,過去最高の20問でした。この次の回から数は減り,12問,11問と推移しています。


第28回は現在国試問題のスタイルに限りなく近づいてきています。


それでは早速今日の問題です。


第28回・問題86 質問紙の作成方法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 質問文の中で専門用語を用いる場合,まず,その用語の認識について確認する濾過質問を行った上で,その用語を知っている者のみに尋ねることが望ましい。

2 質問項目の順番が後になるほど,回答者の集中力が低下するため,複雑な質問から順に配置することが望ましい。

3 質問紙における回答の形式は,自由回答法を主とし必要に応じて選択肢法を用いることが望ましい。

4 回答の形式として選択肢法を用いる場合,想定される選択肢を網羅するため選択肢の数が多いほど望ましい。

5 キャリーオーバー効果を避けるため,質問の配置は,内容に関係なくランダムな順番で行うことが望ましい。


いよいよすべての選択肢の表現をそろえて出題してきました。

「望ましい」が出題されたら,多くの場合には正解にならない傾向がありますが,すべての選択肢の表現をそろえられたら,排除しにくくなります。

しかも,出題は同じテーマであっても,出題の切り口は違います。


丸暗記で勉強するタイプの人は,対応は困難かもしれません。

しかし,柔軟な思考で想像してみると,確実に正解にたどり着きます。

こういったスキルが必要な問題はこれからどんどん増加していくことでしょう。社会福祉士に求められるスキルだからです。


それでは解説です。


1 質問文の中で専門用語を用いる場合,まず,その用語の認識について確認する濾過質問を行った上で,その用語を知っている者のみに尋ねることが望ましい。

これは正解です。

濾過質問はここで初めて出題されたものです。

しかし,第24回・第79問で出題されたリッカート方式やSD法と違って,日本語なのでどんなものかは推測できるはずです。

リッカート法&SD法が出題されたもの
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/25_16.html

「濾過質問は勉強していなかった。困った」と思うと試験委員の思うつぼです。
国試で十分に実力を発揮できない人は,こういったものを見た時,動揺してしまう傾向があるようです。

勉強段階で,わからないことがあれば,推測することなく,すぐ調べるような勉強法を続けてきた人は要注意です。国試会場ではわからないことがあっても調べることができないので,ペースが崩されてしまうのです。

第32回国家試験以降を受験される方はその点を頭に入れておいてください。


ペースを乱されないための特効薬は,こういったときは,焦らず▲をつけて次の選択肢を読むことです。


先述の第24回の問題と今の国試が大きく違うのは,知らないものを出題しても,ほかの選択肢を消去することで,その選択肢が残るというスタイルをとっていることです。そのために,頭をクリアにして動じない姿勢が何よりも大切なのです。そうすれば多くの場合,正解にたどりつくのが今の国試問題です。

話を戻します。

濾過質問とは,最初に何かの質問をして,次にそれに合致した人だけに答えてもらう,といった質問です。液体が濾過されるように,一定の条件をすり抜けた人だけが次の質問に進むもので,濾過質問といいます。

濾過質問の例

Q1 あなたは●●という言葉を聞いたことがありますか?
Q2 Q1で「はい」と答えた方だけにお聞きします。その意味を正しく理解していますか?

といった質問です。

Q1で「いいえ」と答えたのに,Q2に答えてしまう人もいるでしょう。

こういったエラーを「測定誤差」といいます。測定誤差は,全数調査でも標本調査でも生じます。


2 質問項目の順番が後になるほど,回答者の集中力が低下するため,複雑な質問から順に配置することが望ましい。

これは間違いです。

質問の内容は,最初は答えやすいものを先に配置します。

もし,この調査が郵送調査なら,最初に複雑な質問が配置されると回収率は下がってしまいます。


3 質問紙における回答の形式は,自由回答法を主とし必要に応じて選択肢法を用いることが望ましい。

これも間違いです。

もし,自分が調査対象者だったとしたら,自由記述(自由回答法)の質問ばかりだったとして,回答するのが面倒だと思うはずです。

選択肢法の例

Q あなたはこの場所にどのように来ましたか?
 1.電車 2.バス 3.自転車 4.徒歩 5.自家用車 6その他[    ]


自由回答法の例
Q あなたが社会福祉士になろうと思ったのはなぜですか? 


自由回答法の例も選択肢法の例のようにすれば,答えやすくなります。

Q あなたが社会福祉士になろうと思ったのはなぜですか? 
 1.キャリアアップのため 2.就職に必要だから 3.勉強が好きだから 4.職場の命令 5.その他[     ]


4 回答の形式として選択肢法を用いる場合,想定される選択肢を網羅するため選択肢の数が多いほど望ましい。

これも間違いです。

選択肢の数が多くなると,どちらに分類されるかに迷います。

先の例では

Q あなたが社会福祉士になろうと思ったのはなぜですか? 
 1.キャリアアップのため 2.就職に必要だから 3.勉強が好きだから 4.職場の命令 5.よりよい仕事をするため 6.その他[     ]

とすると,

1.キャリアアップのため
2.よりよい仕事をするため

は内容が似ているので,どちらにすればよいのか迷うことでしょう。

だからといって,こういった質問で「複数回答可」にすると,回答結果が明確ではなくなってしまうので注意が必要です。


5 キャリーオーバー効果を避けるため,質問の配置は,内容に関係なくランダムな順番で行うことが望ましい。

これも間違いです。

キャリーオーバー効果とは,前の質問の内容が次の質問に影響を及ぼすものです。そのため,キャリーオーバー効果が出ないような配慮が必要です。

しかし,ランダムな順番にすると,とても答えにくいものとなってしまいます。

質問項目が少ない調査票なら,ランダムに順番を決めても良いでしょう。

しかし,質問項目が多いものなら,ランダムに順番を決めると,内容が行ったり来たりしてしまいます。

例えば,仕事の進め方と休日の過ごし方を調査したい場合

Q1は仕事,Q2は休日,Q3は仕事,Q4は仕事,Q5は休日

と質問が配置されていたとすれば,頭が混乱してしまいそうです。



<今日の一言>

試験委員がそこまで,配慮して問題を作成しているのかはわかりませんが,選択肢1に難しめの内容を配置すると,問題の正解率は下がる傾向にあります。

このことでよくわかることは,受験生の解答は他の選択肢の影響を受けるということです。

試験が終わると,大手出版社や試験対策を実施している企業などが国試の講評をネットでアップします。

そういったものの中に「この問題は過去問の●●を解いていた人は簡単だったでしょう」という講評がされていることがあります。

国試は,決して簡単ではありません。

全体の問題の正解率が6割程度だった場合,半数近くの問題は間違うことになります。

本当は,他の選択肢に影響されないで正解を選べると良いのですが,まじめに勉強を積み重ねてきた人の実力はそれほど違わないため,そういった問題が多くなると,正解率が上がってしまいます。

第30回には,ほとんど見受けられなかったまったくのでたらめな内容の選択肢ですが,第31回がそれを出題してくるかどうかによって,受験生の得点は大きく変わります。

まじめに勉強してきた人がそういったものを見た時,

知らないのは,勉強不足ではなく,それはでたらめな内容だからだ

と思う強い心が必要です。


勉強不足だと思うと,試験委員の仕掛けたトラップにはまり,自滅の道に入り込みますので要注意です!!


社会福祉士の国試は,マーク式

必ず問題の中に答えがあります。

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