今までいろいろな解答テクニックを紹介してきました。
国試で絶対にやってはいけないのは,最初に選んだ答えを変えることです。
答えを変えて正解になった話は聞いたことがありません。
近年の国試は,以前よりも解きやすくなってきている問題になってきていますが,それでも「答えはこれだ!!」とすぐ答えがわかる問題はそれほどありません。
国試は本当に辛いものです。
「あれだけ勉強してきたのにわからない!!」と打ちひしがれた気持ちになるでしょう。
みんなが簡単に解けてしまうと,国試の合格基準点が何点になってしまうのかとてもこわいです。
しかし,しっかり勉強した人は,答えを見つけ出すことができます。
その時に使うのが消去法です。
正しいものを1つ選ぶ問題で,選択肢を3つ消去できる実力があれば,正解にかなり近づくことができます。
真面目に真面目に勉強してきた人は,おそらくわからないことがあったら,調べたことでしょう。
国試では,調べることができません。
そのときに,「わからない,困った」で終わるのか,その次の手を繰り出すことができるのか,大きく違ってきます。
国家試験は,意味がわからなくて消去できる選択肢が存在します。
こういったものを確実に消去できることが重要です。
さて,それでは今日の問題です。
第27回・問題87 クロス表とその分析に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 クロス集計表のクロスとは,各セルに表頭項目又は表側項目の頻度などが入るという意味である。
2 周辺度数とは,総計のことである。
3 オッズ比とは,ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったものである。
4 オッズ比の最大値は,1である。
5 オッズ比の最小値は,-1である。
この問題は,第27回国試では,最も難易度が高かった問題だと思います。
オッズ比という聞いたこともないものが出題されただけではなく,オッズ比に関する選択肢が3つも出題されています。
このような難易度が高い問題は,解けても解けなくも合否にはほとんど影響しません。
もちろん正解できればラッキーですが,正解できなくても他の受験生も同じく解けないので,受験生に差がつかないためです。
それでももちろん正解できたほうがよいです。
それでは解説です。
1 クロス集計表のクロスとは,各セルに表頭項目又は表側項目の頻度などが入るという意味である。
これは間違いです。
この時,受験した人はまったく見当がつけられなかったのではないかと思います。
しかし,消去できるヒントはあります。
それは「又は」です。
意味がわからなくても「又は」では作表するときに困ってしまうと思いませんか?
表頭項目は,クロス集計表の上部の項目部分です。
表側項目は,クロス集計表の左側の項目部分です。
表計算ソフトでは・・・
表側項目は,「行」(横の列)
表頭項目は,「列」(縦の列)
にあたります。
行及び列にはすべて観測値等を入れることになります。
2 周辺度数とは,総計のことである。
これも間違いです。
周辺度数は,行または列の合計です。総計ではありません。
これは消去できる要素がありませんので,▲をつけておきます。
3 オッズ比とは,ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったものである。
これが正解です。
オッズ比は聞いたことがなくても,オッズは競馬などで何となく聞いたという人がいるでしょう。
オッズ比は,ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったものなのですが,さっぱりわからないことでしょう。こういったときは,▲をつけておきます。
4 オッズ比の最大値は,1である。
5 オッズ比の最小値は,-1である。
選択肢4と5が知恵を使う部分です。
この2つの選択肢の消去ポイントが存在します。
それは,2つの選択肢が対になっている点です。
「勘」の領域になりますが,
4 オッズ比の最大値は,1である。
が正解であれば
5 オッズ比の最小値は,-1である。
も正解になりそうです。
しかし正解を2つ選ぶ問題ではないので,2つとも正解になることはありません。
そうなると2つとも間違いなのかではないかと推測することができます。
オッズ比の最大値は無限大,最小値は0です。
計算式を説明するのはここの目的ではないので,省略します。
なお,最大値が1,最小値がマイナス1なのは,相関係数です。
<今日の一言>
今日の問題では結果的に
2 周辺度数とは,総計のことである。
3 オッズ比とは,ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったものである。
の2つの選択肢に▲がついている状態です。
2つまで残すことができれば,正解できる確率は,2分の1なので50%です。
ここまでたどりつけば,半分の確率で正解できます。
選択肢1,4,5が消去できなければ,正解できる確率は20%なので,かなり正解できる確率が高まったと言えるでしょう。
今日の問題は,難易度が高いので,おそらく残った2つの選択肢を選択する確率はそれぞれ50:50となるでしょう。
しかし,多くの問題はここまで難易度は高くありません。
そのため,2つ残した問題の場合,正解のほうを選ぶ率が高くなります。
ここで重要なのが,最初に選んだものを変えないことです。
試験の鉄則ですね。
問題の読み間違った場合以外は,最初に選んだものを変えてしまうとほとんど間違いのほうを選ぶことになります。
森の中で二股に差し掛かったとき,馬が行くべき方向を「こっちだよ」と教えてくれているのに,馬の乗り手が考えあぐねた結果,馬が進もうとした道とは違う方を選択した結果,迷い道に入り込んでしまうようなものです。
十分気を付けましょう!!
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