最も大きな改正は,2007年改正です。
この改正の背景には,
介護・福祉ニーズの多様化・高度化に対応し,人材の確保・資質の向上を図ることが求められてきたこと
があります。
この改正で,社会福祉士の定義に連携が加わりました。
これによって,相談援助と関係者との連絡・調整が社会福祉士の業務となったのです。
この時に,社会福祉士の義務等に「誠実義務」と「資質向上の責務」が加わっています。
それでは今日の問題です。
第22回・問題84 平成19年の社会福祉士職及び介護福祉士法の改正における社会福祉士の役割への期待に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。
1 社会福祉施設内における入所者及び職員の人間関係を調整できる社会福祉士が求められるようになった。
2 関係機関やボランティア等との連携を行い,利用者の自立生活を地域で総合的かつ包括的に支える社会福祉士の役割が期待されるようになった。
3 クライエントの心理的な側面に働きかけるケースワークの意義が,再び見直されるようになった。
4 地域における介護の担い手として,社会福祉士が期待されるようになった。
5 市民やボランティアが,社会福祉士の資格をもつことが期待されるようになった。
落ち着いて問題文を読まなければ,正解するのは簡単ではない問題です。
法制度は,法制度を確実に覚えれば正解することができますが,こういった問題は,思考力が求められるものです。
それでは解説です。
1 社会福祉施設内における入所者及び職員の人間関係を調整できる社会福祉士が求められるようになった。
これは間違いです。
調整という文字が入っているので,思わず飛びつきそうな選択肢です。
入所者や職員の人間関係の調整も円滑な施設運営のためには必要なことでしょう。
しかしそれは必ずしも社会福祉士が担うものではないでしょう。
2 関係機関やボランティア等との連携を行い,利用者の自立生活を地域で総合的かつ包括的に支える社会福祉士の役割が期待されるようになった。
これが正解です。
社会福祉士及び介護福祉士法の制定当時から改正時点で大きく変わったことは,サービス利用が措置から契約に代わり,今まで以上に権利擁護が求められるようになったことです。
権利擁護は,ソーシャルワークの機能の一つです。
社会福祉士のもつ力が発揮できるように時代が近づいてきたと言えます。
3 クライエントの心理的な側面に働きかけるケースワークの意義が,再び見直されるようになった。
これは間違いです。
ソーシャルワークには
ケースワーク
グループワーク
コミュニティワーク
があり,それぞれが発展してきました。
旧カリキュラム時代の国試は,現在の相談援助に関連する科目に「社会福祉援助技術」という科目があり,その当時は,この3つがバランスよく出題されてきました。
21世紀の福祉は,地域福祉の時代です。
これらを背景として,現在求められるのは,コミュニティ・ソーシャルワークです。
コミュニティワークとコミュニティ・ソーシャルワークの違いは,コミュニティワークは地域組織化活動と呼ばれるコミュニティ・オーガニゼーションなどの間接援助技術ですが,コミュニティ・ソーシャルワークは,地域を基盤とした直接援助技術です。
コミュニティ・ソーシャルワークは,1982年にイギリスのバークレイ報告で提唱されています。
4 地域における介護の担い手として,社会福祉士が期待されるようになった。
これも間違いです。
21世紀は,地域福祉の時代です。
だからといって地域における介護の担い手としての役割が期待されているわけではありません。
5 市民やボランティアが,社会福祉士の資格をもつことが期待されるようになった。
これも間違いです。
社会福祉士の資格を持つ市民やボランティアは貴重な存在かもしれません。
しかし社会福祉士は,相談援助の専門職です。
誰もが資格取得を目指せるような養成カリキュラムにはなっていません。
市民には市民として担う役割があるでしょう。
<今日の一言>
クライエントを支えるチームの一員として活動することもありますが,社会福祉士の活動は,多くの場合,自分で判断し行動しなければなりません。
国試は,社会福祉士に必要な素養を問います。
記憶力に秀でただけの社会福祉士は必要ありません。
その瞬間その瞬間で的確な判断が求められます。
国試にもそれが求められます。
後から解説を読めば分かるではだめなのです。
初見でいかに判断できるか
これこそが大切なところです。