2019年3月1日金曜日
第31回国試で出題された質的調査(1)~面接法
第31回国試の「社会調査の基礎」の問題構成
出題基準にあてはめると以下のようになります。
問題84 社会調査の意義と目的&観察法のミックス(観察法はアクションリサーチの部分)
問題85 自計式調査と他計式調査
問題86 測定
問題87 量的調査の集計と分析
問題88 量的調査の集計と分析
問題89 面接法
問題90 質的調査における記録の方法と留意点&質的調査のデータの整理と分析のミックス
今回は,このうち面接法の問題を取り上げます。
第31回・問題90 調査方法としての面接法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 非構造化面接では,調査者が事前に定めた質問項目の順序で調査を進める。
2 半構造化面接では,準備した質問項目のうち半数を質問する。
3 非構造化面接では,通常,回答の選択肢を印刷した回答票を提示して調査を進める。
4 構造化面接では,事前に準備をせず,調査対象者が自由に語りやすいように調査を進める。
5 半構造化面接では,面接中に新たな質問項目を追加することがある。
この問題との類似問題の一つです。
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/blog-post_31.html
ここに書いた「引っ掛け」がそのまま出題されていますね。
勉強をしっかりしてきた人は引っ掛けられることは少ないと思いますが,勉強不足の人にとっては,かなり難しいものだと思います。
それは半構造化面接は,文字のもつイメージからその内容を推測しにくいからです。
それでは解説です。
1 非構造化面接では,調査者が事前に定めた質問項目の順序で調査を進める。
これは間違いです。
構造化とは,事前に質問項目をつくっておくことです。
構造化面接は,その質問項目に沿って,面接を進めていきます。
非構造化面接は,構造化されていない面接です。
つまり,自由に語ってもらう面接です。
2 半構造化面接では,準備した質問項目のうち半数を質問する。
これも間違いです。
第26回国試に出題されたものと同じようなスタイルです。
半構造化面接は,構造化面接と非構造化面接の中間に位置する面接法です。
つまり,構造化した質問をいくつかしてから,そのあとは自由に語ってもらう面接法です。
3 非構造化面接では,通常,回答の選択肢を印刷した回答票を提示して調査を進める。
これも間違いです。
非構造化面接は,自由に語ってもらう面接法です。
事前に印刷した回答票を掲示するのは,構造化面接です。
4 構造化面接では,事前に準備をせず,調査対象者が自由に語りやすいように調査を進める。
これも間違いです。
自由に語ってもらうのは,非構造化面接です。
5 半構造化面接では,面接中に新たな質問項目を追加することがある。
これが正解です。
半構造化面接は,構造化した質問をいくつかしてから,そのあとは自由に語ってもらう面接法です。
自由に語ってもらいながら,深く聞きたいこと,語ったことの確認などの質問をすることがあります。
たとえば,
「それはどういうことですか」
「これはつまり●●ということでしょうか」
といった質問です。
<今日の一言>
「構造化」という意味を押さえていれば,決して難しくない問題です。
しかし,「社会調査の基礎は難しい」というイメージが先行するので,勉強にあまり時間をかけない傾向にあります。
しかし,出題基準に沿ってまんべんなく出題される科目なので,実は対策が取りやすい科目なのです。
そのため,他の受験者と差をつけやすい科目だと言えます。
最新の記事
子ども・子育て支援法
子ども・子育て支援法は,これまでにも出題されてきましたが,正式に出題基準に含まれたのは,第37回国家試験です。 子ども・子育て支援制度は,市町村が実施主体になっています。 支給申請は,市町村に対して行います。 児童福祉法には,入所系があるので都道府県の役割がありますが,子ども...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
質的調査では,インタビューや観察などでデータを収集します。 その際にとる記録をフィールドノーツといいます。 一般的には,野外活動をフィールドワーク,野外活動記録をフィールドノーツといいます。 こんなところからも,質的調査は,文化人類学から生まれてきたものであることがう...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
ヒラリーという人は,さまざまに定義される「コミュニティ」を整理しました。 その結果,コミュニティの定義に共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが明らかとなりました。 ところが,現代社会は,交通手段が発達し,SNSやインターネットなどによって,人...
-
絶対に覚えておきたい社会的役割は, 第1位 役割期待 第2位 役割距離 第3位 役割取得 第4位 役割葛藤 の4つです。 今回は,役割葛藤を紹介します。 役割葛藤とは 役割に対して葛藤すること 役割葛藤を細かく分けると 役割内葛藤と役割間葛藤があ...
-
今回は,ソーシャルワークにおけるエンゲージメントを取り上げます。 第30回の国試で出題されるまでは,あまり知られていなかったものです。 エンゲージメントは,インテーク(受理面接)とほぼ同義語です。 それにもかかわらず,インテークのほかにエンゲージメントが使われるようになった理由は...