ソーシャルワークは,イギリスで生まれて,アメリカで発展していきました。
そういったことから,今日では,西洋中心主義が批判されて,「ソーシャルワークのグローバル定義」(2014)では,「地域・民族固有の知を基盤として,人やさまざまな構造に働きかける」と示されています。
さて,日本にも日本独自の「知」があります。
近年の国試では,そこを確認するかのような出題が見られます。
まるで,旧カリキュラム時代の「社会福祉原論」の問題を見ているかのようです。
それでは,早速今日の問題です。
第30回・問題93 日本の社会福祉の発展に寄与した人物に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 石井十次は,医療ソーシャルワーカーとして実践に携わった。
2 浅賀ふさは,北海道家庭学校を創設し,感化教育を実践した。
3 岡村重夫は,社会関係の主体的側面に焦点を当てた社会福祉固有の視点と領域を提起した。
4 留岡幸助は,ケースワーク技術や援助プロセスにおける理論を発展させた。
5 竹内愛二は,「無制限主義」を掲げ,孤児を救済する民間社会事業を展開した。
人名が苦手だと思う人は,いやな感じがする問題でしょう。
しかし,ちゃんと覚えた人は,正解できることでしょう。
それでは,解説です。
1 石井十次は,医療ソーシャルワーカーとして実践に携わった。
これは間違いです。
石井十次は,岡山孤児院を設立した人です。
石井十次は,31回実施された国試で,10回も出題された実績のある超常連さんです。
2 浅賀ふさは,北海道家庭学校を創設し,感化教育を実践した。
これも間違いです。
浅賀ふさは,医療ソーシャルワーカー(MSW)として実践に携わりました。
日本のMSWの第一人者です。
浅賀ふさは,今まで4回出題実績があります。十分常連さんと言えるでしょう。
3 岡村重夫は,社会関係の主体的側面に焦点を当てた社会福祉固有の視点と領域を提起した。
これが正解です。
岡村先生は,大阪市立大学や関西学院大学などで教授を務められた方です。
社会福祉固有の視点として,社会関係の主体的側面に焦点を当てました。社会関係とは個人と社会制度の関係性を指しています。
個人側からの視点は「社会関係の主体的側面」,制度側からの視点は「社会関係の客体的側面」です。
社会関係の主体的側面に働きかけるのが社会福祉固有の視点,つまり専門ソーシャルワークだということになります。
岡村先生は,12回も出題されている超常連さんです。
4 留岡幸助は,ケースワーク技術や援助プロセスにおける理論を発展させた。
これは間違いです。
留岡幸助は,家庭学校を創設した人です。
今まで12回も出題された超常連さんです。
ケースワーク技術や援助プロセスにおける理論を発展させたのは,この5人の中では,竹内愛二だと言えるでしょう。
竹内先生は,同志社大学や関西学院大学などで教授を務められた方です。竹内先生は,日本に初めてケースワーク理論を持ち込んだ人として知られます。
竹内先生は,今まで7回も出題されている超常連さんです。
5 竹内愛二は,「無制限主義」を掲げ,孤児を救済する民間社会事業を展開した。
これも間違いです。
「無制限主義」を掲げ,孤児を救済する民間社会事業を展開したのは,岡山孤児院の石井十次です。
「無制限主義」とは,無制限に孤児を収容するという意味で,最大時では,1,200名の孤児を収容していたそうです。
<今日の一言>
「現代社会と福祉」は,旧カリキュラムの「社会福祉原論」の流れをくむ科目ですが,旧カリ時代と異なるのは,福祉政策が中心となっていることです。
そのため,旧カリ時代にはよく出題されていた岡村先生や竹内先生は出題する場面がなくなってしまいました。
超常連さんの割りにはあまり見たことがないのは,そういう理由です。
その代わりに,「相談援助の基盤と専門職」で出題してきました。
今日の問題で取り上げた問題を足掛かりにして,第31回の問題が作られています。
そういう意味では,この2つの問題はセットだと言えるでしょう。
「相談援助の基盤と専門職」は,社会福祉士を目指す人にとって重要な科目ですが,これからますます重要度が上がっていくことを予感させるような出題だと言えるでしょう。
最新の記事
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体は,市町村です。 同法における都道府県の役割は,障害福祉計画の作成,地域生活支援事業の実施,障害福祉サービス事業者等の指定などに限られます。 なお,自立支援医療には,育成医療,更生医療,精神通院医療の3種類がありますが,このう...
過去一週間でよく読まれている記事
-
児童等を規定する法制度はいくつかありますが,法によって年齢が異なります。 覚えにくいですが, 児童の年齢は,基本的に18歳です 。 20歳が規定されるのは, 母子及び父子並びに寡婦福祉法 など,ほんのわずかしかありません。 多くの法制度では,18歳です。 それでは,今日の問題です...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
グループワークは以下の過程で実施されます。 準備期 ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階です。 この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。 ...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
国試での出題実績のあるアプローチは以下の12種類です。 出題基準に示されているもの ・心理社会的アプローチ ・機能的アプローチ ・問題解決アプローチ ・課題中心アプローチ ・危...
-
横断調査も縦断調査も意味がつかみにくいので,覚えるのが大変だと思います。 横断調査 ある時点で行う調査。 縦断調査 一定の期間を開けて,複数回行う調査。 同じ対象者(パネル)に対して複数回行うパネル調査は縦断調査の一つ。 それでは今日の問題です。 第33回・問題87 横断調...
-
ソーシャルワークにおけるシステム理論は,人は環境との交互作用を行っていると考えます。 人は環境に影響を与え,環境は人に影響を与えます。 原因と結果が明確なことを「 直線的 」といいます。 原因と結果が明確ではなく,それが循環していることを「 円環的 」といいます。 〈原因と結果が...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...