インターネットが一般的に使われるようになったのは,1990年代のことです。
その当時,今と違って通信するのに電話料金がかかっていました。
常時接続の定額料金のサービスができたのはそのあとです。
それから20年が経ち,今は手軽にインターネットが使える時代になりました。
インターネットに多くの人が利用することで,膨大なデータが蓄積されています。
それらは「ビッグデータ」と呼ばれます。
ビッグデータを分析する市場調査の技術を持って活用しているグーグルのような企業もあります。
社会調査に活用するためには,まだまだ課題はありますが,活用しないのはもったいないと言えます。
ビッグデータから,量的データ及び質的データの収集ができるからです。
それでは今日の問題です。
第28回・問題90 社会調査におけるコンピューターやインターネットの活用に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 インターネット調査は,調査対象がインターネット利用者に限定されるため,目標母集団に照らして,調査漏れが生じやすい。
2 発言の当事者を特定できないインターネット上の掲示板の書き込みは,社会調査の分析対象として活用することができない。
3 国勢調査では,インターネットで回答することができない。
4 調査票調査の自由回答や介護記録の記述など大量の文字データの分析には,コンピューターを活用することができない。
5 国の統計データについては一つに集約されたポータルサイトが整備されている。
たった3年前の出題ですが,問題の作り方が荒いと感じます。
現在だとおそらく修正して出題されるでしょう。
それはさておき,解説です。
1 インターネット調査は,調査対象がインターネット利用者に限定されるため,目標母集団に照らして,調査漏れが生じやすい。
これは正解です。
第24回国試でも正解になったように,インターネットを使った社会調査では,母集団を代表するデータを収集するのは困難です。
インターネットにアクセスすることができる人は20年前よりも確実に増えていますが,それでも全員がアクセスできるほどではありません。
2 発言の当事者を特定できないインターネット上の掲示板の書き込みは,社会調査の分析対象として活用することができない。
これは間違いです。
掲示板の書き込みは,社会調査の分析対象として有効です。
どんなニュースに飛びついて,どんな反応をするのかが分析できます。
例えば,北朝鮮とアメリカのトップ会談について,報道されたニュースの後に国民がどのような反応を示したのか,といった分析ができます。
社会心理学,あるいは心理社会学などの研究領域にとって,掲示板の書き込みは重要な情報であふれています。
3 国勢調査では,インターネットで回答することができない。
これも間違いです。
国勢調査は,1920年に第一回調査が実施されて,10年ごとに大規模調査,その中間に調査が実施されています。
2015年の簡易調査は,インターネットでの回答を導入した記念すべき国勢調査となりました。
留置調査とインターネットを併用することで,全数調査を確保しています。
4 調査票調査の自由回答や介護記録の記述など大量の文字データの分析には,コンピューターを活用することができない。
これも間違いです。
第24回と第26回に出題されたように,文字データ(テキストデータ)を分析する「テキストマイニング」という分析方法があります。
たとえば,認知症の人の介護記録をテキストマイニングで分析することで,BPSDの要因などが明らかになる可能性をもっています。
ヒヤリハットなどのインシデントレポートでは,どのような場面でどんなことが発生しやすいのかも分析してくれます。
これらを手作業で行えばかなり手間がかかりますが,テキストマイニングのコンピューターソフトを使うことで楽に,しかも見落としてしまいそうなものも見えてくる可能性があります。
ただし,調べる単語に区切るのはコンピューターでは行ってくれないので,自分で行わなければなりません。今後はAIによって,それさえも自動化される時代がやってくるかもしれません。
5 国の統計データについては一つに集約されたポータルサイトが整備されている。
これは正解です。
総務省統計局にポータルサイトが整備されています。
総務省のポータルサイト
https://www.stat.go.jp/
「今日の問題の作り方が荒い」というのは,間違い選択肢はすべて「できない」となっています。
正解選択肢の2つはそれ以外です。
こういった作り方をすると,知識ではないもの,つまり「勘」が良い人は解けてしまう可能性が出てきてしまいます。
勉強せずとも勘の良い人が合格してしまうような資格試験は避けなければなりません。
それにもかかわらず,第31回国試では,またまた表現にばらつきが出てきています。
表現をそろえながら,正解選択肢と間違い選択肢を作るのは,とても難しいということなのでしょう。
勉強した人が,さらに得点力を高めるためには,こういったところにも着目しながら,国試に取り組むと良いと思います。
<今日の一言>
「統計は国家なり」という言葉があるように,統計は様々な意思決定を行うのに,極めて重要です。
現在は,厚生労働省が実施している基幹統計の信ぴょう性が疑問視されています。
本来は,全数調査で行わなければならないものを標本調査で実施していた問題です。
精度の高い無作為抽出を行えば,それほど母集団とずれなかったと思います。
厚生労働省は,国家予算の30%を使っている最も大きな省庁です。
再発防止のために,なぜそのようなことが起きたのか,関係者のメールや記録などをテキストマイニングで分析すると,その理由が明らかになります。そんなことはしないと思いますが・・・
インターネットはこれからもますます発展していくでしょう。
5年後,10年後にどのように発展しているのかとても楽しみです。
最新の記事
キャプランによる予防の概念
人名は覚える必要はありませんが,危機理論を提唱したキャプランは,予防の概念である予防モデルを提唱しています。 今日では,広くさまざまな分野で用いられています。 予 防モデル 一次予防 問題を発生させないこと。 ...
過去一週間でよく読まれている記事
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
今日から新年度です。 気持ちを新たにスタートです。 当学習部屋を開設以来,ほぼ毎日新しい情報を出して来ました。 ずっとご覧になっていた方は,間が空いたことが不思議に思ったでしょう。 実は,今年の国家試験が終わったところから,ペースを変えて,2日に1回にしようと計画していました。 ...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
前回まで, ①役割期待 ②役割距離 を紹介してきました。 そのうちの②役割距離は,ちょっと難しい概念でしたが,理解できましたでしょうか。 役割距離とは, 人は役割期待に対して,ちょっと距離を置いた行動をとること。 理解しきれていない人は,もう一度前回を確...
-
前回に引き続き,今回もヴェーバーの社会的行為です。 目的合理的行為 価値合理的行為 伝統的行為 感情的行為 目的を達成するために行う行為。 行動そのものに意味がある行為。結果は重視されない。 慣習や習慣によって行う行為。 感情によって行う行為。 それでは,今日の問...
-
ICFで用いられる用語の定義 健康状態 疾病,変調,傷害など 心身機能 身体系の生理的機能(心理的機能を含む) 身体構造 身体の解剖学的部分 ...
-
保護観察は,保護観察対象者の改善更生を図ることを目的として,「指導監督」と「補導援護」を行うことで実施されます。 指導監督の 方法 ・面接その他の適当な方法により保護観察対象者と接触を保ち,その行状を把握すること。 ・保護観察対象者が一...