2019年10月5日土曜日

「のみ」を使わない作問法

社会福祉士の国試は,5つある選択肢のうち,正しいもの(あるいは適切なもの)を1つ(あるいは2つ)選ぶマーク式です。

当然ながら,正しいもの以外は間違いだということになります。

ところが,正しくない文章をそれっぽく見せかけるのは,とても難しい技術です。

よく知られるものに「すべて」「のみ」といったものを使って間違いにするものがありますが,現在の国試では,めったに使われません。

かなりのうっかり者でなければ,引っ掛けられないからです。

「のみ」を使わず,間違いにするには,「正しいもの」に「間違っているもの」を加えるという処理があります。

それでは,今日の問題です。

第23回・問題128 老人福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 老人福祉法第2条は基本的理念として,老人への敬愛,健全で安らかな生活保障を定めるとともに,老人が年齢や心身の状況等に応じて老後における健康保持を図るサービスを受ける機会を与えられるべきことを規定している。

2 老人福祉法は,当初は9月15日であった敬老の日を9月第3週の月曜日とし,敬老週間を同日からの1週間として,その趣旨にふさわしい事業の実施を国及び地方公共団体に促している。

3 老人福祉法において規定する老人福祉施設とは,老人デイサービスセンター,老人短期入所施設,養護老人ホーム,特別養護老人ホーム,軽費老人ホーム,老人福祉センター,老人介護支援センター及び地域包括支援センターをいう。

4 老人福祉法に定める市町村老人福祉計画とは,地方自治法第2条第4項の基本構想に即して,老人居宅生活支援事業及び老人福祉施設による事業の供給体制の確保に関して各市町村が定める計画のことである。

5 老人福祉法による養護老人ホームへの入所については,当該高齢者がやむを得ない事由により自ら申込みができない場合にのみ市町村が福祉の措置を行うが,通常は,介護保険による入所の契約が優先する。

この問題は,現在としては,成立しません。

この当時の正解は,選択肢4

4 老人福祉法に定める市町村老人福祉計画とは,地方自治法第2条第4項の基本構想に即して,老人居宅生活支援事業及び老人福祉施設による事業の供給体制の確保に関して各市町村が定める計画のことである。

しかし,現在は「地方自治法第2条第4項の基本構想に即して」という規定が削除されているからです。地方分権の時代だからでしょう。


今回着目したいのは,

3 老人福祉法において規定する老人福祉施設とは,老人デイサービスセンター,老人短期入所施設,養護老人ホーム,特別養護老人ホーム,軽費老人ホーム,老人福祉センター,老人介護支援センター及び地域包括支援センターをいう。

この選択肢が正しくないのは,地域包括支援センターは介護保険法に規定されるもので,老人福祉施設ではないからです。

正しくは,
老人福祉法において規定する老人福祉施設とは,老人デイサービスセンター,老人短期入所施設,養護老人ホーム,特別養護老人ホーム,軽費老人ホーム,老人福祉センター,及び老人介護支援センターをいう。

「のみ」を使えば,すぐ間違いだとわかってしまいますが,正しい文章の最後に「地域包括支援センター」を加えることで誤りの文章にしています。

誤りをつくるときは,最初に加えることはほぼないので,列記されている場合は,その文章の最後の部分に着目することが必要です。

最後まで文章をしっかり読まない人は間違います。

ほかの選択肢も解説します。

1 老人福祉法第2条は基本的理念として,老人への敬愛,健全で安らかな生活保障を定めるとともに,老人が年齢や心身の状況等に応じて老後における健康保持を図るサービスを受ける機会を与えられるべきことを規定している。

「老人が年齢や心身の状況等に応じて老後における健康保持を図るサービスを受ける機会を与えられるべきこと」の部分の規定はありません。


2 老人福祉法は,当初は9月15日であった敬老の日を9月第3週の月曜日とし,敬老週間を同日からの1週間として,その趣旨にふさわしい事業の実施を国及び地方公共団体に促している。

老人の日は,現在も9/15です。
敬老の日を定めたのは,老人福祉法ではなく,国民の祝日に関する法律です。


5 老人福祉法による養護老人ホームへの入所については,当該高齢者がやむを得ない事由により自ら申込みができない場合にのみ市町村が福祉の措置を行うが,通常は,介護保険による入所の契約が優先する。

のみが入っている文章です。

養護老人ホームは,契約によって利用するのではなく,措置で利用します。
養護老人ホームにはご用心ください。


<今日の一言>

列記されているものは,最後に注意!!

国試会場は本当に緊張します。


普段行わないようなミスも犯しがちです。
過去問を解くときは,問題文全体がどのように組み合わせてつくられているのを意識しておくと良いでしょう。国試当日の上滑りを防ぐことができます。

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