社会福祉士の国試は,5つある選択肢のうち,正しいもの(あるいは適切なもの)を1つ(あるいは2つ)選ぶマーク式です。
当然ながら,正しいもの以外は間違いだということになります。
ところが,正しくない文章をそれっぽく見せかけるのは,とても難しい技術です。
よく知られるものに「すべて」「のみ」といったものを使って間違いにするものがありますが,現在の国試では,めったに使われません。
かなりのうっかり者でなければ,引っ掛けられないからです。
「のみ」を使わず,間違いにするには,「正しいもの」に「間違っているもの」を加えるという処理があります。
それでは,今日の問題です。
第23回・問題128 老人福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 老人福祉法第2条は基本的理念として,老人への敬愛,健全で安らかな生活保障を定めるとともに,老人が年齢や心身の状況等に応じて老後における健康保持を図るサービスを受ける機会を与えられるべきことを規定している。
2 老人福祉法は,当初は9月15日であった敬老の日を9月第3週の月曜日とし,敬老週間を同日からの1週間として,その趣旨にふさわしい事業の実施を国及び地方公共団体に促している。
3 老人福祉法において規定する老人福祉施設とは,老人デイサービスセンター,老人短期入所施設,養護老人ホーム,特別養護老人ホーム,軽費老人ホーム,老人福祉センター,老人介護支援センター及び地域包括支援センターをいう。
4 老人福祉法に定める市町村老人福祉計画とは,地方自治法第2条第4項の基本構想に即して,老人居宅生活支援事業及び老人福祉施設による事業の供給体制の確保に関して各市町村が定める計画のことである。
5 老人福祉法による養護老人ホームへの入所については,当該高齢者がやむを得ない事由により自ら申込みができない場合にのみ市町村が福祉の措置を行うが,通常は,介護保険による入所の契約が優先する。
この問題は,現在としては,成立しません。
この当時の正解は,選択肢4
4 老人福祉法に定める市町村老人福祉計画とは,地方自治法第2条第4項の基本構想に即して,老人居宅生活支援事業及び老人福祉施設による事業の供給体制の確保に関して各市町村が定める計画のことである。
しかし,現在は「地方自治法第2条第4項の基本構想に即して」という規定が削除されているからです。地方分権の時代だからでしょう。
今回着目したいのは,
3 老人福祉法において規定する老人福祉施設とは,老人デイサービスセンター,老人短期入所施設,養護老人ホーム,特別養護老人ホーム,軽費老人ホーム,老人福祉センター,老人介護支援センター及び地域包括支援センターをいう。
この選択肢が正しくないのは,地域包括支援センターは介護保険法に規定されるもので,老人福祉施設ではないからです。
正しくは,
老人福祉法において規定する老人福祉施設とは,老人デイサービスセンター,老人短期入所施設,養護老人ホーム,特別養護老人ホーム,軽費老人ホーム,老人福祉センター,及び老人介護支援センターをいう。
「のみ」を使えば,すぐ間違いだとわかってしまいますが,正しい文章の最後に「地域包括支援センター」を加えることで誤りの文章にしています。
誤りをつくるときは,最初に加えることはほぼないので,列記されている場合は,その文章の最後の部分に着目することが必要です。
最後まで文章をしっかり読まない人は間違います。
ほかの選択肢も解説します。
1 老人福祉法第2条は基本的理念として,老人への敬愛,健全で安らかな生活保障を定めるとともに,老人が年齢や心身の状況等に応じて老後における健康保持を図るサービスを受ける機会を与えられるべきことを規定している。
「老人が年齢や心身の状況等に応じて老後における健康保持を図るサービスを受ける機会を与えられるべきこと」の部分の規定はありません。
2 老人福祉法は,当初は9月15日であった敬老の日を9月第3週の月曜日とし,敬老週間を同日からの1週間として,その趣旨にふさわしい事業の実施を国及び地方公共団体に促している。
老人の日は,現在も9/15です。
敬老の日を定めたのは,老人福祉法ではなく,国民の祝日に関する法律です。
5 老人福祉法による養護老人ホームへの入所については,当該高齢者がやむを得ない事由により自ら申込みができない場合にのみ市町村が福祉の措置を行うが,通常は,介護保険による入所の契約が優先する。
のみが入っている文章です。
養護老人ホームは,契約によって利用するのではなく,措置で利用します。
養護老人ホームにはご用心ください。
<今日の一言>
列記されているものは,最後に注意!!
国試会場は本当に緊張します。
普段行わないようなミスも犯しがちです。
過去問を解くときは,問題文全体がどのように組み合わせてつくられているのを意識しておくと良いでしょう。国試当日の上滑りを防ぐことができます。
最新の記事
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体は,市町村です。 同法における都道府県の役割は,障害福祉計画の作成,地域生活支援事業の実施,障害福祉サービス事業者等の指定などに限られます。 なお,自立支援医療には,育成医療,更生医療,精神通院医療の3種類がありますが,このう...
過去一週間でよく読まれている記事
-
生活保護の「被保護者調査」は,月次調査として厚生労働省から毎月発表されています。 国家試験に出題されるのは,その年度の確定値です。 結果の概要に記載されるデータをまとめたのが以下の表です。 被保護実人員 約 200...
-
グループワークは以下の過程で実施されます。 準備期 ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階です。 この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。 ...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
今回は,テンニースが提唱した,ゲマインシャフトとゲゼルシャフトを学びます。 ゲマインシャフト (共同社会) ゲゼルシャフト (利益社会) 自然的な「本質意志」に基づいて結合する基礎的な集団です。 家族,...
-
今回は医療観察法を取り上げます。 出題されるポイントはそれほど多くはない法制度ですが,多くの受験生にとっては実生活でなじみのないこともあり,苦手だと思う人も多いのが現実です。 もったいないように思います。 以下は,厚生労働省のホームページ「医療...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
コミュニティはさまざまな人が定義していますが,ヒラリーの研究によって,それらに共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが示されました。 しかし,現代では,空間が限定されないコミュニティが広がっています。それをウェルマンは,「コミュニティ開放論」と...