社会福祉士の国試の合格率は約30%です。
おそらく合格率はこれよりも上がらないと考えています。
「それほど難しい試験なのか」と言われれば,難しくもあり,言われるほど難しくない,と答えるでしょう。
決して簡単な試験ではないと言えますが,一問一問を精査してみると,それほどではないように思います。
今日の問題もそういったタイプの問題です。
今日の問題のテーマは,介護保険法の介護認定審査会の役割です。
介護認定審査会は,要介護認定の二次判定を行う合議体です。
介護認定審査会を考えたとき,国はとてもよいことを考えつくものだと感心します。
要介護認定は,市町村が行うには荷が重すぎます。
市町村は,基礎的地方公共団体として,基本的な住民サービスを行いますが,専門的な判断が求められるのは,市町村の役割ではありません。
児童の入所を決める「児童相談所」
精神障害者保健福祉手帳の判定を実施する「精神保健福祉センター」
身体障害者手帳の判定を行う「身体障害者更生相談所」
療育手帳の判定を行う「知的障害者更生更生相談所」
これらは,都道府県が設置します。
専門的な判断を伴う事務を行うのは,基本的には都道府県の役割です。
市町村には,これらを行う体力や専門性を持たないからです。
要介護認定も専門性の高いので,本来なら都道府県が行うものだと思いますが,超高齢社会の到来を見越して,市町村が行うことにしたものと思います。
市町村が要介護認定を行うには高度すぎるので,外部の能力を活かすことを目的として,介護認定審査会を設置することになったと考えられます。
介護認定審査会があるからこそ,市町村でも要介護認定を行うことができます。
これと同様の仕組みを採用しているのが,障害者総合支援法の障害支援区分認定です。
それでは今日の問題です。
第27回・問題133 介護保険制度における介護認定審査会に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 介護認定審査会は市町村ごとに設置され,複数の市町村による共同設置は認められていない。
2 介護認定審査会の委員は,保健医療又は福祉に関する学識経験者及び住民を代表する者の中から,市町村長によって任命される。
3 介護認定審査会では,一次判定結果を基礎としながら,審査対象の要介護者等が利用している介護サービスの種類や利用回数を加味した上で審査・判定を行う。
4 介護認定審査会の審査・判定では,被保険者の要介護状態の軽減又は悪化の防止のために必要な療養に関する事項などの意見を,市町村に述べることができる。
5 介護認定審査会の審査・判定の際には,審査対象の要介護者等を担当する介護支援専門員が出席し,審査・判定に当たっての意見を述べなければならない。
こんな問題が出題されると「要介護認定をよく勉強していなかった。勉強不足だった」と思う人もいるでしょう。
確かに知識ゼロでは,答えはわからないかもしれません。
しかしここで焦ると試験委員の仕掛けたトラップにはまります。
国試はマーク式。記述式では知識ゼロでは完全お手上げですが,介護保険とはどのようなものなのかを考えることで,答えは見えてきます。
この問題の場合は,市町村にとって荷が重い要介護認定を実施するために介護認定審査会の知恵を借りていることを思い出すことです。
答えは選択肢4です。
4 介護認定審査会の審査・判定では,被保険者の要介護状態の軽減又は悪化の防止のために必要な療養に関する事項などの意見を,市町村に述べることができる。
これが極めて重要なことです。要介護認定の手順は,訪問調査によって得られたものをコンピュータによって一次判定し,主治医の意見書などを参考にしながら,介護認定審査会が二次判定を実施します。
その結果を受けて,市町村が要介護認定を行います。
市町村は,介護認定審査会があるからこそ,荷が重い要介護認定(あるいは要支援認定)を行うことができるのです。
本来,障害等級の判定は,都道府県の業務です。
社会福祉サービスは,一部の福祉ニーズを充足する施策です。
介護保険は,わか国5つめの社会保険として誕生しました。
社会保険は,社会福祉サービスと異なり,一般の人を対象とするものです。
市町村が実施主体でなければなりません。そのために,市町村が要介護認定という高度な事務を行う必要があったのです。
それでは,ほかの選択肢も確認していきましょう。
1 介護認定審査会は市町村ごとに設置され,複数の市町村による共同設置は認められていない。
これは極めて重要なことです。要介護認定は高度なものです。
規模が小さな自治体の負担が大きくならないように,介護保険事務は,複数の市町村による広域連合の設置が認められています。
介護認定審査会も複数の市町村による共同設置が認められます。
2 介護認定審査会の委員は,保健医療又は福祉に関する学識経験者及び住民を代表する者の中から,市町村長によって任命される。
施策に関するもの,例えば「〇〇審議会」といったものなら,住民の代表の意見は極めて重要でしょう。
しかし,介護認定審査会は,専門的な判定の場です。素人の意見は必要としません。
3 介護認定審査会では,一次判定結果を基礎としながら,審査対象の要介護者等が利用している介護サービスの種類や利用回数を加味した上で審査・判定を行う。
介護認定審査会が加味するのは,主治医の意見書です。
これがもしわからなくても,初めて要介護認定の申請をした人は,サービスは利用していないので,それを加味することはできません。
また既にサービスを利用していたとしても,それを加味するのではなく,その人の状態を正しく判断することが必要です。そのために,更新では,要介護度が軽く判定されることもあります。
5 介護認定審査会の審査・判定の際には,審査対象の要介護者等を担当する介護支援専門員が出席し,審査・判定に当たっての意見を述べなければならない。
市町村によって,一回の審査会で判定する人数は変わりますが,30~50人程度はこなします。
介護支援専門員が参加して意見を述べていたら,時間はかかりすぎます。
このような規定はありません。
<今日の一言>
どんなに勉強しても,勉強しなかったものは出題されます。
というか,あえて出題しているのではないかと思うことがあります。
国試は,マーク式です。記述式ではありません。
マーク式で勉強したことがあるものばかりを出題していたら,記憶力の優れたしゃかす福祉士を養成することになってしまいます。
現場ではそんな社会福祉士は求めていません。
そのため,国試では,マーク式でありながら,思考力,あるいは推理力を試すような問題を出題していると考えられます。
しかし,それも基礎的な知識がなければ,思考することができません。
今日の問題の場合は,要介護認定は,市町村にとって荷が重いものであるという大前提です。
そこをカバーするのが,専門家集団であるに介護認定審査会です。
試験会場は緊張が極限状態まで達します。
過去問を解く意味は,問題を解く訓練をすることです。
たった3年間の過去問では知識は足りません。これが5年分に増えても,思考しない勉強は,国試では十分な力を発することはできないでしょう。
がちがち頭に柔らかくして,問題に取り組めば,必ずさまざまなものが見えてくるでしょう。
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