介護保険法に規定されるサービスは,数が多くて覚えるのが大変だと思うでしょう。
国試では,第24・25・26・27・29回に一問ずつ出題されていて,近年の出題は少なくなっています。
それに代わって出題頻度が高くなっているのが,地域支援事業です。
さて,出題内容を確認すると以下のようになります。
第24回 介護予防サービス
第25回 介護予防サービス
第26回 地域密着型サービス
第27回 介護給付ほかのサービス
第29回 福祉用具貸与・販売
かなり偏りがあるのがわかります。
さて,今日の問題です。
第27回・問題131 介護保険から給付されるサービスに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 複合型サービスとは,居宅要介護者に対して訪問介護と通所介護や短期入所生活介護など3種類以上組み合わせて提供されるサービスをいう。
2 短期入所生活介護とは,居宅要介護者を介護老人保健施設又は介護療養型医療施設に短期間入所させて,医学的管理下で行う介護をいう。
3 特定施設入居者生活介護では,認知症要介護者に対して共同生活を営むことのできる住居において入浴,排泄,食事等の介護,その他の日常生活上の世話を行う。
4 居宅療養管理指導とは,居宅要介護者に対して心身機能の回復及び日常生活上の自立を図るために居宅において診療に基づき実施される理学療法や作業療法をいう。
5 介護老人福祉施設は,老人福祉法に規定する特別養護老人ホーム(定員30名以上)のうち都道府県知事の指定を受けたものであって,入所する要介護者に対し日常生活上の世話などを行う。
現行カリキュラムで,居宅サービスと介護保険施設が一問丸ごと出題されたのは,この問題が唯一です。
しかし,一度とは言え,出題されているので,ざっくりでも覚えておきたいです。
さて,この問題の正解は
5 介護老人福祉施設は,老人福祉法に規定する特別養護老人ホーム(定員30名以上)のうち都道府県知事の指定を受けたものであって,入所する要介護者に対し日常生活上の世話などを行う。
結局答えは,地域密着型サービスに関連するものとなっています。
介護老人福祉施設の定員が,30名以上と規定されているのは,29名以下では,地域密着型サービスの「地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護」 となるからです。
それでは,ほかの選択肢も見てみましよう。
1 複合型サービスとは,居宅要介護者に対して訪問介護と通所介護や短期入所生活介護など3種類以上組み合わせて提供されるサービスをいう。
複合型サービスは,2種類以上を組み合わせて提供します。
この選択肢のように,数字が明記されているのは,怪しいので注意が必要です。
2 短期入所生活介護とは,居宅要介護者を介護老人保健施設又は介護療養型医療施設に短期間入所させて,医学的管理下で行う介護をいう。
介護療養型医療施設は,介護保険法の根拠が,2018年度末でなくなっていますが,現在は経過措置として,存続されています。
その代わりに新しい介護保険施設として誕生したのが,「介護医療院」です。
さてこの選択肢に戻るとショートステイには,
短期入所生活介護
短期入所療養介護
の2つがあります。このうち,介護老人福祉施設や介護医療院で医療を提供するのは「短期入所療養介護」です。
3 特定施設入居者生活介護では,認知症要介護者に対して共同生活を営むことのできる住居において入浴,排泄,食事等の介護,その他の日常生活上の世話を行う。
認知症要介護者に対しての介護を行うのは,認知症対応型共同生活介護,いわゆるグループホームです。
4 居宅療養管理指導とは,居宅要介護者に対して心身機能の回復及び日常生活上の自立を図るために居宅において診療に基づき実施される理学療法や作業療法をいう。
居宅療養管理指導は,病院,診療所又は薬局(以下「病院等」という。)の医師,歯科医師,薬剤師その他厚生労働省令で定める者により行われる療養上の管理及び指導をいいます。
<今日の一言>
地域密着型サービスは,また改めて紹介しますが,2015年の介護保険法で創設されたものです。
この改正以前は,市町村が指定する事業者はありませんでした。
介護保険に関して,現在,市町村が指定するのは
地域密着型サービス事業者
介護予防支援事業者
居宅介護支援事業者
の3種類の事業者の指定です。
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