日本の高齢化は
1970年(昭和45年) 高齢化社会(高齢化率7%以上)
1995年(平成7年) 高齢社会(高齢化率14%以上)
2007年(平成19年) 超高齢社会(高齢化率21%以上)
というように進展しています。
高齢社会になることが確実視されていた1994年(平成6年)に「21世紀福祉ビジョン~少子・高齢社会に向けて~」がまとめられました。
同報告書
http://www.ipss.go.jp/publication/j/shiryou/no.13/data/shiryou/souron/18.pdf
この中で,
<社会保障給付費の給付構造>
1994年時点 年金:医療:福祉その他=5:4:1
↓ ↓ ↓
将来 年金:医療:福祉その他=5:3:2
のバランスにすることが必要であると提言されています。
医療の割合を減らして,福祉その他の割合を増加させるバランスです。
21世紀福祉ビジョンから25年を経過した今日では,この提言に沿って,
ほぼ,「年金:医療:福祉その他=5:3:2」となっています。
診療報酬の引き下げによって,国民医療費を抑制することは可能です。
しかし給付構造が変わるまでの変化は期待できません。
これに大きく貢献したのが介護保険制度の導入です。
ただし,同報告書では,介護保険についての提言は行っていません。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題124 我が国の介護保険制度と医療保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 サービス供給主体に関しては,いずれの制度も「非営利」を原則としており,営利法人の参入については原則として禁止されている。
2 いずれの制度も,一連のサービスについて,支給限度額や法定給付を上回るサービスを患者や利用者の負担によって提供することは,原則として禁止されている。
3 介護保険制度の創設に伴い,医療保険におけるサービスの一部が介護保険に移行したため,平成12年度の国民医療費は前年度に比べ減少した。
4 訪問看護については,介護保険制度創設後も引き続き医療保険から給付されており,介護保険からは給付されていない。
5 介護保険制度創設後の急速な人口高齢化に伴う介護給付費の増大の結果,平成13年度以降,国民医療費は減少を続けている。
介護保険制度と医療保険制度を比較させるというのは,今見ても新鮮な問題だと思いませんか?
この問題の正解は,選択肢3
3 介護保険制度の創設に伴い,医療保険におけるサービスの一部が介護保険に移行したため,平成12年度の国民医療費は前年度に比べ減少した。
平成12年以降,国民医療費が前年に比べて減少したのは,平成12年,14年,18年,28年の4回あります。
平成12年はこの選択肢のように,医療保険におけるサービスの一部が介護保険に移行したためです。
それ以外は,診療報酬や薬価の引き下げによるものです。
それではほかの選択肢も見てみましょう。
1 サービス供給主体に関しては,いずれの制度も「非営利」を原則としており,営利法人の参入については原則として禁止されている。
医療保険制度では,営利法人の参入は認められていませんが,介護保険制度では,認められています。
2 いずれの制度も,一連のサービスについて,支給限度額や法定給付を上回るサービスを患者や利用者の負担によって提供することは,原則として禁止されている。
医療保険制度では,いわゆる混合診療は認められていませんが,介護保険制度は認められています。
4 訪問看護については,介護保険制度創設後も引き続き医療保険から給付されており,介護保険からは給付されていない。
訪問看護は,医療保険と介護保険のいずれからも給付されています。
5 介護保険制度創設後の急速な人口高齢化に伴う介護給付費の増大の結果,平成13年度以降,国民医療費は減少を続けている。
先に述べたように,平成12年以降の国民医療費が前年を下回ったのは,4回のみです。
それ以外は,前年よりも増加しています。
平成25年には,国民医療費は40兆円を超え,平成28年に一度減少しているだけで,それ以外は増加し続けています。
<今日の一言>
21世紀福祉ビジョンは,四半世紀も前のものです。
現役大学生では,生まれる前のことです。
ずいぶん昔のことのように思うでしょう。
しかし,そんな昔のものでありながらも今日に影響を与えています。
日本の福祉の歴史は,たかだか150年の話です。
過去の出来事を過去のものとしてとらえると,何の味も素っ気もないものに感じることでしょう。
今につながっているものだととらえると同じものでも違って見えてくることでしょう。
最新の記事
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体は,市町村です。 同法における都道府県の役割は,障害福祉計画の作成,地域生活支援事業の実施,障害福祉サービス事業者等の指定などに限られます。 なお,自立支援医療には,育成医療,更生医療,精神通院医療の3種類がありますが,このう...
過去一週間でよく読まれている記事
-
児童等を規定する法制度はいくつかありますが,法によって年齢が異なります。 覚えにくいですが, 児童の年齢は,基本的に18歳です 。 20歳が規定されるのは, 母子及び父子並びに寡婦福祉法 など,ほんのわずかしかありません。 多くの法制度では,18歳です。 それでは,今日の問題です...
-
グループワークは以下の過程で実施されます。 準備期 ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階です。 この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。 ...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
生活保護法の基本原理と原則は,毎年のように出題されています。 ところで,原理と原則の違いはわかりますか? これを理解しておかないと,さまざまな形で引っ掛けようとする問題に容易に引っ掛けられてしまいます。 原理には,例外がありません。 原則には,例外があります。 今日のテーマは,申...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
様々なアプローチは,毎年必ず出題されています。 しかも3~4問が出題されています。 ようやく出題実績のある12種類が揃いました。 ・心理社会的アプローチ 「 状況の中の人 」を基本概念として,心理社会的に課題のあるクライエントに対して,コミュニケーションを通して関わってい...
-
ソーシャルワークにおけるシステム理論は,人は環境との交互作用を行っていると考えます。 人は環境に影響を与え,環境は人に影響を与えます。 原因と結果が明確なことを「 直線的 」といいます。 原因と結果が明確ではなく,それが循環していることを「 円環的 」といいます。 〈原因と結果が...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...