2019年10月12日土曜日

介護保険法における市町村・都道府県の役割

介護保険は,わが国5つめの社会保険制度です。
保険者は,市町村,あるいは市町村の広域連合です。

社会保険制度のうちで,市町村が保険者なのは,国民健康保険と介護保険のみです。
都道府県が保険者なのは,国民健康保険のみです。

それでは,今日の問題です。

第26回・問題133 介護保険制度における保険者としての市町村の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 要介護認定において,限界集落や離島,豪雪地帯などの地理的特性や,同居家族の有無などの家庭環境,所得などの経済的状況等に配慮した独自の認定基準を,地域ごとに条例により定めることができる。

2 地域支援事業の任意事業として,介護方法の指導,介護者の健康相談実施,認知症見守り支援事業等の家族介護支援事業を実施することができる。

3 地域密着型サービスに関し,その適正な事業運営に資するとともに,地域に開かれたサービスとすることでサービスの質の確保と向上を図るために,運営適正化委員会を設置しなければならない。

4 介護保険施設に入所している低所得の要介護者等について,入所中の居住費及び食費の負担に関し,一般会計を財源として特定入所者介護サービス費(いわゆる補足給付)の給付を行うことができる。

5 介護保険財政の安定化を図るため,財政安定化基金を設置して,保険料未納により収入不足が生じた場合に交付金を交付したり,給付費の増大のために収支不均衡が生じた場合に資金を貸与したりするなどの事業を行うことができる。


とても難しい問題だと思います。

しかし,落ち着いて問題を読めば,突破口は見えてきます。

今回は,先に答えは言いません。
一般的に問題を解くプロセスに沿って考えていきたいと思います。

どのように問題文を読むのを学んでいきましょう。


1 要介護認定において,限界集落や離島,豪雪地帯などの地理的特性や,同居家族の有無などの家庭環境,所得などの経済的状況等に配慮した独自の認定基準を,地域ごとに条例により定めることができる。

介護保険が制度を導入したときの理念として,日本国中どこであっても同じ基準で同じサービスを受けられることを目指しました。

要介護認定の認定基準が保険者ごとで変わることはありません。

認定基準を定めるのは,厚生労働大臣です。市町村であるはずがありません。


2 地域支援事業の任意事業として,介護方法の指導,介護者の健康相談実施,認知症見守り支援事業等の家族介護支援事業を実施することができる。

この問題の難易度が高い理由は,この選択肢が正解だったからです。

介護保険制度によほど精通している人でなければ,地域支援事業の任意事業を知っている人はいないでしょう。

とりあえず,焦ることなく,冷静に△をつけて次の選択肢に進みます。


3 地域密着型サービスに関し,その適正な事業運営に資するとともに,地域に開かれたサービスとすることでサービスの質の確保と向上を図るために,運営適正化委員会を設置しなければならない。

勉強をしっかりした人なら,この選択肢は消去できるはずです。

運営適正化委員会は,社会福祉法に規定されていて,都道府県社会福祉協議会に設置されます。


4 介護保険施設に入所している低所得の要介護者等について,入所中の居住費及び食費の負担に関し,一般会計を財源として特定入所者介護サービス費(いわゆる補足給付)の給付を行うことができる。

介護保険は,特別会計を設けなければなりません。


5 介護保険財政の安定化を図るため,財政安定化基金を設置して,保険料未納により収入不足が生じた場合に交付金を交付したり,給付費の増大のために収支不均衡が生じた場合に資金を貸与したりするなどの事業を行うことができる。

財政安定化基金は,都道府県に設置されます。

ということで,選択肢2が残ります。それが正解です。

介護保険法では,地域支援事業の任意事業として,以下のものを定めています。

一 介護給付等に要する費用の適正化のための事業
二 介護方法の指導その他の要介護被保険者を現に介護する者の支援のため必要な事業
三 その他介護保険事業の運営の安定化及び被保険者の地域における自立した日常生活の支援のため必要な事業


<今日の一言>

国試問題の多くは,今日の問題のように,消去法で答えをあぶりだすものです。
つまり,答えがすぐには見つからない問題であるということです。

今日の問題で得点できる確率を高めるためには,運営適正化委員会と財政安定化基金のことを正しく理解しておくことでした。

今の勉強は,とても辛いものだと思います。
覚えられずに焦ることもあるでしょう。

だからこそ,問題を解く意味があります。
結果がわかりやすいからです。

昨日よりも今日,今日より明日,一つずつでも正解できる問題が増えたら大きな前進です。

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