国民健康保険団体連合会は,国民健康保険法により,都道府県,市町村の組合が共同して設立する公法人です。
市町村から委託を受けて国民健康保険の保険給付にかかわる審査・支払業務のほかに,介護保険に関して,以下の業務を行っています。
国民健康保険団体連合会(国保連)の介護保険事業関係業務
①介護保険の保険給付にかかわる審査・支払業務。
②介護保険サービスの質の向上に関する調査及びサービス事業者に対する助言・指導。
③介護保険サービス事業及び介護保険施設の運営。
④その他,介護保険事業の円滑な運営に資する事業。
それでは,今日の問題です。
第23回・問題125 国民健康保険団体連合会に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 都道府県の委託を受けて,介護保険サービスの費用の請求に関する審査及び支払を行う。
2 介護保険の保険給付に関する処分に不服がある者は,国民健康保険団体連合会に設置されている介護保険審査会に審査請求をすることができる。
3 介護保険サービスの質の向上に関する調査を実施する。
4 介護保険サービス事業者に対して必要な助言を行うことができるが,指導する権限までは認められていない。
5 居宅サービスなどの事業や介護保険施設の運営を行うことはできない。
国保連が一問丸ごと出題されたのは,この問題のほかに,第29回と第30回に出題されています。
丸ごとではなくても,ちょこちょこ出題されているので,確実に押さえておきたいです。
正解は,選択肢3
3 介護保険サービスの質の向上に関する調査を実施する。
この調査では,苦情内容の分析や対応事例などをまとめています。
国保連は,介護保険サービスの苦情申立て機関としての役割を担っているので,苦情に関する様々な情報が蓄積されているのです。
ほかの選択肢も見てみましょう。
1 都道府県の委託を受けて,介護保険サービスの費用の請求に関する審査及び支払を行う。
またまたの出題です。国保連が委託を受けているのは,保険者である市町村です。
2 介護保険の保険給付に関する処分に不服がある者は,国民健康保険団体連合会に設置されている介護保険審査会に審査請求をすることができる。
介護保険の不服申立て機関は,都道府県に設置された介護保険審査会です。
国保連は,介護保険サービスの苦情申立て機関です。
4 介護保険サービス事業者に対して必要な助言を行うことができるが,指導する権限までは認められていない。
国保連は助言・指導を行います。
指導までの権限を持っていることが,公法人である国保連の特徴です。
社会福祉法では,福祉サービスの苦情申立て機関として,運営適正化委員会が規定されていますが,都道府県社会福祉協議会に設置されるもので,苦情に対して,苦情の解決のあっせんを行うことができるとされていることにとどまります。
国保連と運営適正化委員会は,ともに提供されたサービスの苦情を受け付けますが,権限はまったく異なります。
5 居宅サービスなどの事業や介護保険施設の運営を行うことはできない。
国保連は,よく知られていないかもしれませんが,介護保険法で,居宅サービスなどの事業や介護保険施設の運営を行うことができることが規定されています。
<今日の一言>
国保連の出題は,かなり頻出です。
介護保険法で規定されている業務はかなり重要です。
もう一度確認しましょう。
①介護保険の保険給付にかかわる審査・支払業務。
②介護保険サービスの質の向上に関する調査及びサービス事業者に対する助言・指導。
③介護保険サービス事業及び介護保険施設の運営。
④その他,介護保険事業の円滑な運営に資する事業。
しっかり押さえておきたいです。
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