行政処分に対して,不満があった場合,不服を申し立てることができる制度があります。
不服申立てが法に規定されているものと法に規定されていないものがあります。
規定されているものとしては,
介護保険法
障害者総合支援法
生活保護法
などがあります。
規定されていないものとしては
児童福祉法
などがあります。
規定されていない場合は,行政手続法に従って,不服申立てを行います。
介護保険法では,都道府県に設置される介護保険審査会に審査請求を行います。
それでは今日の問題です。
第27回・問題127 要介護認定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 認定調査に使用する認定調査票の「基本調査」の調査項目は,身体機能・起居動作,生活機能,認知機能,精神・行動障害の4群から構成されている。
2 二次判定では,一次判定を基礎として,主治医の意見書や特記事項に基づき,どの区分に該当するかの審査・判定が行われる。
3 二次判定では,一次判定よりも要介護度を下げてはならない。
4 第1号被保険者の認定に当たっては,要介護状態などの原因である障害が特定疾病に起因するものであるかを確認する上で,主治医の意見書が必要となる。
5 認定結果に対して不服がある場合は,認定調査を行った市町村の介護認定審査会に対して申立てを行う。
社会福祉士の国試らしい問題だと思います。
細部を出題していますが,介護保険制度の根幹が問われているからです。
細部というのは,
1 認定調査に使用する認定調査票の「基本調査」の調査項目は,身体機能・起居動作,生活機能,認知機能,精神・行動障害の4群から構成されている。
認定調査に実際にかかわっている人でなければ,まず調査項目は知らないと思います。
社会福祉士がそこまで知っている必要はないと言えます。
そういったものは正解にしないものです。
この場合は,4つに加えて「社会への対応」を加えた5群によって構成されています。
「〇つ」は,間違い選択肢を生成する際によく使われるものです。
内容が分からないときは,極力選ばないのが適切だと言えます。
この問題の正解は,
2 二次判定では,一次判定を基礎として,主治医の意見書や特記事項に基づき,どの区分に該当するかの審査・判定が行われる。
要介護認定の際に行われる二次判定は,専門家集団である介護認定審査会が行います。その際に,主治医の意見書や特記事項を参考にして判定します。
3 二次判定では,一次判定よりも要介護度を下げてはならない。
一次判定は,コンピュータによって行います。専門家集団の判断によって修正するのが二次判定です。
要介護度が上がることもありますし,その逆に下がることもあります。
4 第1号被保険者の認定に当たっては,要介護状態などの原因である障害が特定疾病に起因するものであるかを確認する上で,主治医の意見書が必要となる。
これは,社会福祉士の国試に適切な出題です。
とても上手に出題したと思いませんか?
特定疾病に起因することが必要なのは,第2号被保険者です。
第1号被保険者の場合は,要介護状態にあることで認定されます。
5 認定結果に対して不服がある場合は,認定調査を行った市町村の介護認定審査会に対して申立てを行う。
介護保険法は,不服申立てが規定されています。審査請求先は,都道府県の介護保険審査会です。
介護保険審査会と介護認定審査会は,たった2文字しか違いはありませんが,役割はまったく違います。
<今日の一言>
介護保険は,2000年の制度発足以降,何度も制度改正を行い,現在に至っています。
現場にいると,制度改正に振り回されている感が強いです。
しかし,国試レベルでみると,そういったことはほとんど出題されない傾向にあります。
基本的に覚えるものの多くは,法に規定されるものだからです。
通知などが出題された場合は,知恵で乗り越えることができるようになっています。
こま問題でみたときは,選択肢1にハードルが高いものを配置しています。
選択肢1に難しめなものが配置されると,受験者は混乱し,間違いやすくなります。
混乱するからです。
この選択肢が正解だった場合は,
認定調査に使用する認定調査票の「基本調査」の調査項目は,身体機能・起居動作,生活機能,認知機能,精神・行動障害で構成されている。
これでよいはずです。「4群」を入れることで,「間違いですよ,注意してくださいね」と注意を喚起した,と言えるでしょう。
優れた試験委員は,こういったストーリーを描いて問題を作っているのです。