これによって,ケアマネジメントを実施する事業者の指定は,高齢者と障害児・者ともに市町村に統一されています。
相談支援関係で,異なるのは,障害者の地域移行を行う「一般相談支援事業者」のみということになります。
まとめると以下のようになります。
法律名
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事業者種別
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指定
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介護保険法
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居宅介護支援事業者
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市町村
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児童福祉法
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障害児相談支援事業者
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市町村
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障害者総合支援法
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特定相談支援事業者
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市町村
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一般相談支援事業者
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都道府県
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それでは,今日の問題です。
第25回・問題131 介護保険制度における各組織・団体等の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 市町村は,共同で,介護保険の財政の安定化に資する事業に必要な費用に充てるため,財政安定化基金を設けることができる。
2 市町村長は,地域密着型サービス事業者,居宅介護支援事業者及び介護予防支援事業者の指定を行う。
3 都道府県知事は,介護サービス情報の公表制度に基づき,介護サービス事業者から受けた介護サービス情報の報告に関して必要と認めるときは,調査を行うことができる。
4 国民健康保険団体連合会は,都道府県の委託を受けて介護サービス費等の請求に関する審査及び支払を行い,介護サービス等の質の向上に関する調査等を行う。
5 介護保険審査会は市町村におかれ,保険給付に関する処分又は保険料等に関する処分にかかる審査請求の審査を行う。
この問題は,出題当時は適切でしたが,今では不適切問題となります。
なぜなら,先述のように居宅介護支援事業者の指定が市町村に権限移譲されたために,正解が2つになってしまうためです。
正解は,
2 市町村長は,地域密着型サービス事業者,居宅介護支援事業者及び介護予防支援事業者の指定を行う。
3 都道府県知事は,介護サービス情報の公表制度に基づき,介護サービス事業者から受けた介護サービス情報の報告に関して必要と認めるときは,調査を行うことができる。
市町村と都道府県の役割の根拠は,地方自治法にあります。
市町村は,基礎的な地方公共団体として,一般的な事務の処理を行う。
都道府県は,市町村を包括する広域の地方公共団体として,広域にわたるもの,市町村に関する連絡調整に関するもの,規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理する。
一般の市町村とは,指定都市,中核市など以外の市町村を指します。
一般の市町村が処理するのが適当ではないものについては,その領域によって異なりますが,事業所指定は基本的に都道府県の事務とされています。
介護保険法が施行された当時は,地域密着型サービスはなかったこともあり,事業所の指定はすべて都道府県が行っていました。
現在は,市町村は,地域密着型サービス事業者,居宅介護支援事業者,介護予防支援事業者の指定を行います。
介護保険では,地域密着型サービスがあるので,市町村も指定を行いますが,それは例外事項です。
サービスの質の確保,専門職の育成等は,都道府県の役割の典型例です。これらは,市町村が行うのに適切なものではないからです。
市町村の役割なのか,都道府県の役割なのかは,特に意識して勉強しましょう。
その時のポイントは,その事務は規模が小さな市町村でも行うことができるのか,ということを意識してみるとよいです。
医療の確保に関するものも都道府県の役割です。
それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。
1 市町村は,共同で,介護保険の財政の安定化に資する事業に必要な費用に充てるため,財政安定化基金を設けることができる。
財政安定化基金は,都道府県に設置されます。
4 国民健康保険団体連合会は,都道府県の委託を受けて介護サービス費等の請求に関する審査及び支払を行い,介護サービス等の質の向上に関する調査等を行う。
国民健康保険団体連合会(国保連)が委託を受けるのは,保険者である市町村です。
5 介護保険審査会は市町村におかれ,保険給付に関する処分又は保険料等に関する処分にかかる審査請求の審査を行う。
介護保険審査会は,都道府県に設置されます。
<今日の一言>
市町村と都道府県の役割に関する出題は,他の科目でも頻出です。
個別に覚えていては,あいまいになりやすいですし,試験当日に度忘れしてしまいかねません。
市町村と都道府県の役割の根拠は,地方自治法にあるので,領域は違えど,基本は共通しています。
その視点で参考書を眺めてみてください。
そうすると,基本どおりのものとそうではないものが見えてくると思います。
事業者の指定は,基本は都道府県の役割です。
地域密着型サービスや居宅介護支援事業者の指定,特定相談支援事業者などがそれ以外のものとなります。
それ以外のものをしっかり押さえることが得点力につながります。
この時期になると,気持ちが不安定になり,何をどこまで覚えたらよいかわからなくなってくることでしょう。
特に模擬試験を受験すると,勉強してこなかったものが出題されて,ここまで勉強しなければならないのか,と思うことでしょう。
しかし,本当に合否を分けるのは,今日の問題のようなスタンダードな問題を確実に正解することです。
知らないものが模擬試験に出題されていたら,新しいことを覚えられるチャンスだと思いましょう。解けなくて落ち込むのではなく,そこで覚えればよいと思います。