2019年10月13日日曜日

地方公共団体における特別会計

今回は,地方公共団体の特別会計を取り上げてみたいと思います。

特別会計は,地方自治法で以下のように規定されています。

特別会計(地方自治法第209条の2)

普通地方公共団体が特定の事業を行なう場合,及び一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合は,条例で特別会計を設置することができる。

国家試験で地方公共団体の特別会計が出題されたことがあるのは,介護保険と国民健康保険の2つです。

第22回・問題43・選択肢2

地方公共団体の会計には一般会計と特別会計があり,介護保険と国民健康保険に関しては,一般の歳入・歳出と区分するため,それぞれ特別会計が設けられている。

これは正しい文章です。

国民健康保険は,平成30年の制度改正によって,都道府県が国民健康保険の実施主体になりました。それに伴い,国民健康保険の特別会計は,市町村とともに都道府県にも設けられています。

それでは今日の問題です。


第30回・問題127 介護保険制度に関する次の記述のうち,市町村の役割として,正しいものを1つ選びなさい。

1 介護保険給付費のための支出会計区分は,一般会計である。

2 要介護状態区分を定める。

3 介護保険の財政の安定化に資する事業に必要な費用に充てるため,財政安定化基金を設ける。

4 第一号被保険者の保険料の徴収を特別徴収の方法によって行うことができる。

5 介護保険審査会を設置する。


気づきにくいかもしれませんが,前回紹介した問題とそっくりです。

https://fukufuku21.blogspot.com/2019/10/blog-post_12.html

ここで紹介した問題は,

第26回・問題133 介護保険制度における保険者としての市町村の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 要介護認定において,限界集落や離島,豪雪地帯などの地理的特性や,同居家族の有無などの家庭環境,所得などの経済的状況等に配慮した独自の認定基準を,地域ごとに条例により定めることができる。
2 地域支援事業の任意事業として,介護方法の指導,介護者の健康相談実施,認知症見守り支援事業等の家族介護支援事業を実施することができる。
3 地域密着型サービスに関し,その適正な事業運営に資するとともに,地域に開かれたサービスとすることでサービスの質の確保と向上を図るために,運営適正化委員会を設置しなければならない。
4 介護保険施設に入所している低所得の要介護者等について,入所中の居住費及び食費の負担に関し, 一般会計を財源として特定入所者介護サービス費(いわゆる補足給付)の給付を行うことができる。
5 介護保険財政の安定化を図るため,財政安定化基金を設置して,保険料未納により収入不足が生じた場合に交付金を交付したり,給付費の増大のために収支不均衡が生じた場合に資金を貸与したりするなどの事業を行うことができる。


今日の問題と対応させると・・・(すべてに「市町村」を加えている)

第26回 市町村は,要介護認定において,限界集落や離島,豪雪地帯などの地理的特性や,同居家族の有無などの家庭環境,所得などの経済的状況等に配慮した独自の認定基準を,地域ごとに条例により定めることができる。

第30回 市町村は,要介護状態区分を定める。

認定基準を定めるのは,厚生労働大臣です。


第26回 市町村は,地域密着型サービスに関し,その適正な事業運営に資するとともに,地域に開かれたサービスとすることでサービスの質の確保と向上を図るために,運営適正化委員会を設置しなければならない。

第30回 市町村は,介護保険審査会を設置する。

運営適正化委員会は,提供された福祉サービス内容に関する苦情申し立て機関として,都道府県社会福祉業議会に設置されます。

介護保険審査会は,介護保険に関する行政処分の不服申し立て機関として,都道府県に設置されます。


第26回 市町村は,介護保険施設に入所している低所得の要介護者等について,入所中の居住費及び食費の負担に関し,一般会計を財源として特定入所者介護サービス費(いわゆる補足給付)の給付を行うことができる。

第30回 市町村の介護保険給付費のための支出会計区分は,一般会計である。

介護保険は,特別会計で運営されます。


第26回 市町村は,介護保険財政の安定化を図るため,財政安定化基金を設置して,保険料未納により収入不足が生じた場合に交付金を交付したり,給付費の増大のために収支不均衡が生じた場合に資金を貸与したりするなどの事業を行うことができる。

第30回 市町村は,介護保険の財政の安定化に資する事業に必要な費用に充てるため,財政安定化基金を設ける。

財政安定化基金は,都道府県に設置されます。

これらは,見事に対応しています。

正解は,

第26回 市町村は,地域支援事業の任意事業として,介護方法の指導,介護者の健康相談実施,認知症見守り支援事業等の家族介護支援事業を実施することができる。

第30回 市町村は,第一号被保険者の保険料の徴収を特別徴収の方法によって行うことができる。

ここだけ第26回と第30回が対応していません。

しかし,この2つの問題は,ほぼ双子のようなもの,あるいはクローンのような問題だと言えるでしょう。

第30回の国試は第26回に対応しています。
国試問題は,4回前に対応する傾向があることを覚えておきましょう。

そして,国試問題は

少しずつ重なっていて,少しずつ違う

ということも覚えておきたいです。


<今日の一言>

特別会計に関する問題としては,以下のような問題もあります。

第30回・問題43 「平成29年地方財政の状況」(総務省)が示す2015年度(平成27年度)の地方財政において,次に示す民生費及び特別会計事業の費目のうち,歳出金額が最も多いものを1つ選びなさい。
1 生活保護費
2 児童福祉費
3 老人福祉費
4 介護保険事業費
5 国民健康保険事業費

民生費(社会福祉制度)では児童福祉費の規模が最も多いですが,上記の特別会計(社会保険制度)の規模が大きくなります。

理由は,社会福祉制度は,税財源で行われるのに対し,社会保険制度は,日本の場合は社会保険料+税財源で運営されるためです。

また,日本の社会保障制度の中心は,社会保険制度なので,社会保険制度と社会福祉制度を比較すると社会保険制度の規模が大きくなります。そのため特別会計の規模も民生費よりも大きくなるのだと考えられます。

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