合格基準点(いわゆるボーダーライン)は,問題の難易度によって毎年変わります。
ボーダーラインが示されるようになったのは第15回以降ですが,現時点(2022年3月)までの間で
最も低かったのは,第25回の72点(90点からマイナス18点)
最も高かったのは,第34回の105点(90点からプラス15点)
といったようなばらつきが生じています。
本当は,「90点以上の得点があったら合格」とすればシンプルでよいのですが,これだけのばらつきが生じているという事実は,問題の質(解きやすさの面に)が均質ではないことを示すものです。
令和元年カリキュラム改正の国家試験の在り方検討会では,試験委員に対して研修を行うことを提言していますが,それだけ試験問題を作成するのは難しいということなのでしょう。
試験委員は,その分野の専門家であっても国家試験を作る専門家ではありません。
第34回国家試験の合格発表が終わってから
どんな勉強をすればよいかわからなくなった
という声が聞かれているようです。
一見すると国家試験のハードルが高くなったように感じるかもしれませんが,ハードルは一切変わっていません。
上位30%の人が90点以上の点数を取れる試験にするためにいろいろ試していると考えてもよいのかもしれません。
それにもかかわらず,ハードルが高くなったと考えて,学習戦略を間違えると大変なこととなります。
ボーダーラインを超える勉強法
今は,平成19年改正のカリキュラムで実施される国家試験の末期です。
これまでの国家試験でどんなものが出題されるのか明確になってきています。
だからと言って3~5年間の過去問を完ぺきに覚えてもおそらく合格することはできないでしょう。参考書などで確実な知識をつけることが欠かせません。
つまり勉強する内容は何も変わるわけではありません。
ただし,変える必要があるがあるのは,勉強法です。
同じ勉強法を続けていたら同じ結果になります。特に何度か受験している人は要注意です。
第34回・問題60 知的障害者福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 知的障害者に対する入院形態として,医療保護入院が規定されている。
2 市町村は,知的障害者更生相談所を設けなければならないと規定されている。
3 市町村は,その設置する福祉事務所に知的障害者福祉司を置くことができると規定されている。
4 1998年(平成10年)に,精神衛生法から知的障害者福祉法に名称が変更された。
5 知的障害者に対して交付される「療育手帳」について規定されている。
この問題の元になっている問題があります。
第31回・問題62 身体障害者福祉法,知的障害者福祉法及び「精神保健福祉法」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 身体障害者福祉法では,身体障害者更生相談所の業務として,必要に応じて「障害者総合支援法」に規定する補装具の処方を行うことが規定されている。
2 身体障害者福祉法において,身体障害者手帳の有効期限は2年間と規定されている。
3 知的障害者福祉法において,療育手帳の交付が規定されている。
4 知的障害者福祉法において,知的障害者更生相談所には,社会福祉主事を置かなければならないと規定されている。
5 「精神保健福祉法」において,発達障害者支援センターの運営について規定されている。
(注) 「精神保健福祉法」とは,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。
第34回の問題の正解は,選択肢3です。
3 市町村は,その設置する福祉事務所に知的障害者福祉司を置くことができると規定されている。
第31回の問題の正解は,選択肢1です。
1 身体障害者福祉法では,身体障害者更生相談所の業務として,必要に応じて「障害者総合支援法」に規定する補装具の処方を行うことが規定されている。
正解は重なっていません。
しかし,共通のものがあります。
5 知的障害者に対して交付される「療育手帳」について規定されている。
3 知的障害者福祉法において,療育手帳の交付が規定されている。
こういったものを確実に消去できると得点力が上がります。
〔重要なこと〕
過去問を解くときは,必ずすべての選択肢を覚えること
何度も出題されるものは,ある時は正解になったり,ある時は誤りになったり,といったことを繰り返しています。
過去問を解くとき,正解することだけを主眼に置いた勉強なら,せっかく過去問を解いても正解できる実力がつきません。
知識を広げる勉強よりも確実に得点力が上がる勉強法は,実はこういった極めてスタンダードなことを地道に行っていく努力です。
出るか出ないかわからないものに時間をかけるよりも出る確率が高いものを確実に覚えていくことが効率よい勉強です。