社会福祉士の国家試験で出題される社会的行為の論者と言えば,ウェーバー(ヴェーバー)とハーバーマスです。
ウェーバーは,社会的行為の意味を考えました。
行動と行為は,明確に区別され,はためから見ると,行動も行為も同じように見えますが,行為者(本人)にとっての行為は,意味のあるものです。
意味を見出せないものは,行為ではなく,行動となるでしょう。
行為には意味があると考えて,その意味を理解することに努めたため,ウェーバーの社会学は,理解社会学と呼ばれています。
ハーバーマスは,社会的行為として,コミュニケーション的行為を述べています。
ウェーバーは個人の行為について論じたものですが,ハーバーマスが論じたコミュニケーション的行為は,行為者相互がコミュニケーションを通して,共通理解していくものです。
これによって,対立が解決されると考えました。
よくよく考えてみると,対立や紛争が生まれる根源には,相手のことをよく知らないということもあるのではないかと思います。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題20 社会的行為の主観的意味を理解することを通して,その過程及び結果を説明しようとする考え方を表す用語として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 合理的選択理論
2 主意主義的行為
3 理解社会学
4 コミュニケーション的行為
5 社会システム論
難易度高すぎです。ウェーバーのことを少しでも知っていれば,正解は,秒で「3 理解社会学」だとわかりますが,そうでない人は,まるで手が出ないものでしょう。
しかし,ヒントはあります。設問の中に「理解」という用語が入っています。
そこから「理解社会学」を導くことができます。まったくわからない時でも,選択肢の中には必ず答えはあるので,あきらめずに手がかりを探すと良いと思います。
一応,ほかの選択肢も確認します。
1 合理的選択理論
合理的選択理論は,人は合理的に判断していると考えるものです。
2 主意主義的行為
主意主義とは,理性や知性といったものを超越した「意志」を指すものです。
主意主義的行為とは,理性や知性による「〇〇しなければならない」ということではなく,「〇〇するのだ」という意志による行為です。
4 コミュニケーション的行為
コミュニケーション的行為は,先に述べたとおりです。
5 社会システム論
社会システム論は,構造と機能に着目して,構造が相互作用することで機能すると考えます。
社会システム論の論者としてパーソンズが知られます。
〈今日の一言〉
今日の問題は難しいですが,結局ウェーバーが正解となっています。
第34回・問題19 社会的行為に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 パーソンズ(Parsons,T.)は,相互行為における無意識的,習慣的な行為に着目し,そうした行為において利用される個人の文化的な蓄積を「文化資本」と呼んだ。
2 ハーバーマス(Habermas,J.)は,個人に外在して個人に強制力を持つ,信念や慣行などの行為・思考の様式,集団で生じる熱狂などの社会的潮流を「社会的事実」と呼び,社会学の固有の領域を定式化した。
3 ブルデュー(Bourdieu,P.)は,相互行為が相手の行為や期待に依存し合って成立していることを「ダブル・コンティンジェンシー」と呼んだ。
4 ヴェーバー(Weber,M.)は,社会的行為を四つに分類し,特定の目的を実現するための手段になっている行為を「目的合理的行為」と呼んだ。
5 デュルケム(Durkheim,E.)は,言語を媒介とした自己と他者の間で相互了解に基づく合意形成を目指す行為を「コミュニケーション的行為」と呼んだ。
この問題でも,「4 ヴェーバー」が正解です。
この問題のようにこれまでの出題を見ると,ウェーバーが中心にあり,その周りにいろいろなものを配置するような出題が多いようです。どうしてもわからないときは,ウェーバーを選ぶという方法もありかもしれません。
しかし,今はまだ時間があるので,覚えられないと思わず,丁寧に覚えたいです。