国家試験勉強していると,セットで覚えるべきものがあることに気がつくことでしょう。
これが実にくせものです。
国家試験当日は,頭を悩ませることになります。
なぜなら「セット入れ替え作問法」という問題のつくり方があるからです。
たとえば,
第一次集団と第二次集団を入れ替えて,出題するものです。
2つとも出題してくれれば,入れ替えていることに気がつきやすいですが,片方しか出題しない場合は,入れ替えに気づかないということが起きがちです。
それでは今日の問題です。
第31回・問題19 社会集団に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 第一次集団とは,ある特定の目的のために人為的に作り出された組織である。
2 フォーマルグループとは,企業や官庁のような一定の目的のために成文化された規則と命令系統を持つ組織である。
3 ゲゼルシャフトとは,相互の感情や了解に基づく緊密な結び付きによる共同社会である。
4 準拠集団とは,共同生活の領域を意味し,典型的な例は地域社会である。
5 コミュニティとは,特定の共通関心を追求するために明確に設立された社会集団である。
社会集団は,社会学において古典的な研究領域です。
この問題ではシンプルに出題されていますが,テキストや参考書では,これらに人名が加わっているはずです。
そうしないと,厳密性に欠けるからです。なぜなら社会学は,社会に存在していても,誰かがそこに着目して,それを名づけて定義づける必要があるからです。
近年の国家試験では,また人名を入れ替える手抜き問題が出題されてきているので,人名も合わせて覚えていかないといけないのかもしれませんが,本当に必要な知識は,その内容です。
ゲゼルシャフト=テンニース
といった覚え方では,せっかく覚えても今日の問題のような出題スタイルには,役立ちません。
さて,この問題で出題されているもののセットを書き出してみます。
第一次集団 |
第二次集団 |
フォーマルグループ |
インフォーマルグループ |
ゲゼルシャフト |
ゲマインシャフト |
準拠集団 |
- |
コミュニティ |
アソシエーション |
準拠集団以外は,すべてセットになるものが存在しています。
セットになっているものの違いをしっかり理解できていれば◎です。
こういったものが出題されたときは,セット入れ替え作問法が使われているのではないかと用心するようにします。
意味がつかみきれない場合,セットになるものを当てはめてみて,そちらのほうがしっくりくるなら,おそらく入れ替えられているだろうと,判断します。
それでは解説です。
1 第一次集団とは,ある特定の目的のために人為的に作り出された組織である。
第一次集団は,小規模で対面的な関係の集団です。コミュニティや内集団と重なる概念だと言えるでしょう。
ある特定の目的のために人為的に作り出された組織は,アソシエーションです。第一次集団とセットとなる第二次集団と重なる概念だと言えるでしょう。
2 フォーマルグループとは,企業や官庁のような一定の目的のために成文化された規則と命令系統を持つ組織である。
これが正解です。公式組織・集団であるフォーマルグループは,インフォーマルグループと異なり,規則や命令系統があります。
あまりに当たり前すぎて,何か引っ掛けがあるのではないかと考えることは,間違える原因です。
試験委員はそんなに意地悪ではありません。
3 ゲゼルシャフトとは,相互の感情や了解に基づく緊密な結び付きによる共同社会である。
ゲゼルシャフトは,選択意志と訳され,人為的なものです。
セットとなるゲマインシャフトは,本質意志と訳され,コミュニティに重なる概念です。
4 準拠集団とは,共同生活の領域を意味し,典型的な例は地域社会である。
準拠集団(リファレンスグループ)は,自分の行動や考え方に影響を与える集団です。
準拠集団だけセットになるものがありません。
共同生活の領域を意味しているのは,コミュニティです。ただしマッキーバーは,家族はコミュニティではなく,アソシエーションに位置づけていることが要注意ポイントです。
5 コミュニティとは,特定の共通関心を追求するために明確に設立された社会集団である。
コミュニティは前述のとおりです。
特定の共通関心を追求するために明確に設立された社会集団は,アソシエーションです。