老化による血圧は,上昇することはよく知られています。
最高血圧は,心臓がギューっと収縮して全身に血液を送り出すときの血圧です。そのために収縮期血圧といいます。
老化によって上がる血圧は,収縮期血圧です。
血管が動脈硬化のために細くなったりしているために,力を入れて収縮しないと血圧が遅れないためです。
最低血圧は,収縮した心臓が拡張していくときの血圧です。そのため,拡張期血圧といいます。
拡張期血圧は,収縮期血圧と異なり力が必要なわけではないので,老化によって血圧は上がりません。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題5 高血圧に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 高血圧の診断基準は,収縮期(最高)血圧160mmHg以上あるいは拡張期(最低)血圧90mmHg以上である。
2 本態性高血圧(一次性高血圧)は,高血圧全体の約50%を占める。
3 続発性高血圧(二次性高血圧)の原因の第1位は,内分泌性高血圧である。
4 高血圧の合併症に脳血管障害がある。
5 血液透析の導入の原因の第1位は,高血圧性腎硬化症である。
簡単だと思えば簡単ですが,難しいと思えば難しい問題です。
それはなぜかと言えば,正解に理由があります。
正解は,選択肢4です。
4 高血圧の合併症に脳血管障害がある。
改めて考えてみると,「なるほど,そうだね」と思うかもしれませんが,素直に考えないと「何か裏があるのではないか」と勘繰ってしまいます。
国家試験は,多くの人が思っているよりも素直なものです。近年の国試では,おかしな引っ掛けをするような問題はほとんどみられません。
そういっ意味で,「脊髄神経は,中枢神経である」という出題はとても珍しいものだと言えるでしょう。
脊髄は中枢神経,脊髄神経は末梢神経
https://fukufuku21.blogspot.com/2022/01/blog-post_29.html
それでは,ほかの選択肢も簡単に解説します。
1 高血圧の診断基準は,収縮期(最高)血圧160mmHg以上あるいは拡張期(最低)血圧90mmHg以上である。
高血圧の診断基準は,この時初めて出題されたものです。このように初めて出題されたものが正解になることはそんなにあるものではないことを覚えておきたいです。
高血圧の診断基準
収縮期(最高)血圧140mmHg以上
拡張期(最低)血圧90mmHg以上
2 本態性高血圧(一次性高血圧)は,高血圧全体の約50%を占める。
本態性高血圧,二次性高血圧が国家試験に出題されたのは,本当に久しぶりです。
本態性高血圧が出題されたのは,第19回以来です。
その時は,以下のように出題されています。
原因の分かっているものを本態性高血圧という。
これは間違いです。原因のわかっている高血圧は,続発性高血圧(二次性高血圧)です。
原因がわからない高血圧は,本態性高血圧です。
高齢者の高血圧は,ほとんどこれです。90%以上が本態性高血圧です。
原因がわからない高血圧とは,何かの病気などによって引き起こされる高血圧ではないという意味です。
高齢者の高血圧は,動脈硬化などによって引き起こされますが,動脈硬化だと高血圧になる,という,直接的,イコールの関係,あるいは因果関係が明確なものではありません。
3 続発性高血圧(二次性高血圧)の原因の第1位は,内分泌性高血圧である。
続発性高血圧(二次性高血圧)は,原因が明確な高血圧です。
最も多いのは,腎実質性高血圧です。
二次性高血圧の中で最も多いのは,腎実質性高血圧ですが,二次性高血圧自体が多いものではないので,覚えられなくても気にする必要はないと言えます。
別な言い方をすれば,レアものが出題されたとしても,そこに正解はあまりないと言えます。
5 血液透析の導入の原因の第1位は,高血圧性腎硬化症である。
この問題の中で,最も出題されたことがあるのは,透析の導入の原因です。
近いところでは,第27回に,以下のように出題されています。
現在,糖尿病性腎症は透析導入に至る原因の第1位である。
ということで,正しくは,糖尿病性腎症です。
〈今日の一言〉
今は「3年間の過去問をしっかりやれば正解できる」という都市伝説はもうなくなったと思いますが,それで合格できるなら,90点以上の得点ができるのは受験者の30%にすぎない,ということにはならないように思います。
透析に関する問題は,近年では第27回の次は,第31回国試で出題されています。
つまり4年前です。3年間の過去問ではカバーしない範囲です。
こういったことを知っていれば「3年間の過去問で合格できる」なんてことは口が裂けても言えないように思います。変な知識で変なアドバイスをするのはやめてほしいものです。