前回は,心の健康のために無意識に行う防衛機制を取り上げました。
今回は,多くの場合,意識的に行うコーピングを取り上げます。
コーピングは,次の2種類に分類されます。
問題焦点型コーピング |
ストレスになっていること,問題となっていることなど,その根源そのものを変えようとする。 例:模擬試験の結果が悪かった。どの科目が苦手なのか,冷静に分析してその科目を強化する。 |
情動焦点型コーピング |
ストレスを感じないようにすること。 例:模擬試験の結果が悪かった。気分が落ち込んだため,同じように結果が振るわなかった友達とカラオケに行った。 |
問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピングは,どちらが優れていて,どちらが優れていないか,というものではありません。
起きているものによって,バランスよくコーピングを行うことが大切です。
上の例に書いたものでは,情動焦点型コーピングも時には大切です。
しかし,それだけではいけません。そのあとに問題焦点型コーピングが必要です。
それがないと,国家試験のあとで,もっと辛い気持ちになります。
コーピングが出題される場合は,問題焦点型コーピングであるのか,情動焦点型コーピングであるのか,を見極めることが問われます。
見極めるポイントは,ストレスを感じていること,問題になっていること自体を変えようとしているかどうかに着目します。
変えようとしていれば,問題焦点型コーピング。
そうでなければ,情動焦点型コーピング,あるいは全く違うものです。
それでは今日の問題です。
第31回・問題12 ストレス対処法(コーピング)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 試験の結果が悪かったので,気晴らしのため休日に友人と遊びに出掛けた。これは,問題焦点型コーピングである。
2 食事介助がうまくいかず落ち込んだが,先輩職員に具体的な方法を教えてもらった。これは,情動焦点型コーピングである。
3 事例検討会で発表することになったが,うまくできるか心配になったので深呼吸をした。これは,問題焦点型コーピングである。
4 残業が続き自分一人ではどうにもならなくなったので,上司に仕事の配分の見直しを依頼して調整してもらった。これは,情動焦点型コーピングである。
5 利用者との面接がうまくいかなかったので,新しいスキルを身につけるため研修会に参加した。これは,問題焦点型コーピングである。
変えようとしていれば,問題焦点型コーピング。そうでなければ,情動焦点型コーピング,あるいは全く違うものです。
そのポイントに着目して問題を読むとミスは減らせるはずです。
それでは解説です。
1 試験の結果が悪かったので,気晴らしのため休日に友人と遊びに出掛けた。これは,問題焦点型コーピングである。
試験でよい結果になるためには,勉強することです。勉強を怠って点数が上がることは稀有です。
そうしていないので,情動焦点型コーピングです。
2 食事介助がうまくいかず落ち込んだが,先輩職員に具体的な方法を教えてもらった。これは,情動焦点型コーピングである。
食事介助の技術が不足しているという問題を変えようとしているので,問題焦点型コーピングです。
3 事例検討会で発表することになったが,うまくできるか心配になったので深呼吸をした。これは,問題焦点型コーピングである。
事例検討会でうまくいくために深呼吸することも必要です。
しかし根源を変えるには,原稿を読む練習をする,質問を想定して,参加者から出てくる質問を想定して問答集を作るなどの準備が必要です。
そうしていないので,情動焦点型コーピングです。
4 残業が続き自分一人ではどうにもならなくなったので,上司に仕事の配分の見直しを依頼して調整してもらった。これは,情動焦点型コーピングである。
業務量が多くなっていることを上司に調整してもらっています。
問題を変えようとしているので,問題焦点型コーピングです。
5 利用者との面接がうまくいかなかったので,新しいスキルを身につけるため研修会に参加した。これは,問題焦点型コーピングである。
これが正解です。理由はわかりますね?
〈今日の一言〉
勉強するときは,必ずそれはどんなことなのだろうか,ということを考えることが大切です。
丸暗記の勉強で終えていると,出題されたときに出題スタイルや文章が変えられると対応することが困難です。