記憶に関する近年の出題は,以下のようになっています。
第21回
第24回
第29回
第31回
第32回
第34回
近年の出題頻度はかなり高いことがわかります。
しかも出題されるものは,いつもほとんど同じです。
覚えないのはもったいないことです。
こういったものを確実に正解できる実力があることが国家試験の合格に必要です。
注意したいのは,手続き記憶です。
記憶は,
宣言的記憶(意味記憶,エピソード記憶,展望的記憶など)
非宣言的記憶(手続き記憶,レスポンデント条件づけなど)
に分類されます。
宣言的記憶は,忘れることもありますが,思い出すことができれば,言葉に出すことができます。
それに対して,非宣言的記憶は,言葉で表現することができない記憶です。
非宣言的記憶には,車や自転車の運転,水泳など,体で覚えた手続き記憶,条件づけられたレスポンデント条件づけなどがあります。
手続き記憶がくせ者です。
「手続き」という言葉から「体で覚えた」ということが連想できないからです。そのため,引っ掛けで使われると効果的です。
それでは今日の問題です。
第31回・問題10 記憶に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 手続き記憶とは,覚えた数個の数字を逆唱するときに用いられる記憶である。
2 感覚記憶とは,自転車に乗ったり楽器を演奏したりするときの技能に関する記憶である。
3 展望的記憶とは,「いつ」,「どこで」,「何をしたか」というような,個人の経験に関する記憶である。
4 エピソード記憶とは,「明日の3時に友人と会う」というような,将来の予定や約束に関する記憶である。
5 意味記憶とは,「日本の都道府県の数は47である」というような,一般的な知識に関する記憶である。
この問題の正解は,選択肢5の意味記憶です。
意味記憶は,ものの意味の記憶なので,連想しやすいでしょう。そのために,この問題の難易度は低くなります。
一応ほかの選択肢も解説します。
なお,入れ替えになっているものは,そのままの表現で解説します。
1 手続き記憶とは,覚えた数個の数字を逆唱するときに用いられる記憶である。
手続き記憶 → 自転車に乗ったり楽器を演奏したりするときの技能に関する記憶
覚えた数個の数字を逆唱するときに用いられる記憶 → ワーキングメモリー(作動記憶・作業記憶)
2 感覚記憶とは,自転車に乗ったり楽器を演奏したりするときの技能に関する記憶である。
感覚記憶 → 感覚器(耳,目,鼻)などから入ってきた記憶。
3 展望的記憶とは,「いつ」,「どこで」,「何をしたか」というような,個人の経験に関する記憶である。
展望的記憶(展望記憶) → 「明日の3時に友人と会う」というような,将来の予定や約束に関する記憶。
4 エピソード記憶とは,「明日の3時に友人と会う」というような,将来の予定や約束に関する記憶である。
エピソード記憶 → 「いつ」,「どこで」,「何をしたか」というような,個人の経験に関する記憶。
〈今日の一言〉
第34回では,以下のように出題されています。
第34回・問題9 記憶に関する次の記述のうち,展望的記憶の事例として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 日本で一番大きな湖は琵琶湖だと知っていた。
2 以前行ったことがあるケーキ屋の場所を,思い出すことができた。
3 子どもの頃に鉄棒から落ちてケガしたことを,思い出した。
4 10年ぶりに自転車に乗ったが,うまく乗ることができた。
5 友人と遊園地に行く約束をしていたので,朝から出掛けた。
正解は,選択肢5です。
5 友人と遊園地に行く約束をしていたので,朝から出掛けた。
これが展望的記憶(展望記憶)です。参考書には,未来に関する記憶と説明されているものもありますが,とらえにくいので,今日の問題のように「将来の予定や約束などに関する記憶が展望的記憶」と覚えるのが適切です。