国家試験では,たった一度しか出題されたことがありませんが,人口転換という言葉は,知っていますか?
人口転換とは,社会が発展することによって,以下のようなプロセスを示すことをいいます。
多産多死社会(出生率,死亡率ともに高い)
↓ ↓
多産少死社会(出生率は高く,死亡率は低い)
↓ ↓
少産少死社会(出生率,死亡率ともに低い)
現在の日本は,少産少死社会ですが,第一次ベビーブームであるいわゆる団塊の世代がもう少し年齢を重ねると「少産多死社会」(出生率は低く,死亡率は高い)になると考えられています。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題18 人口に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 人口転換とは,「多産多死」から「少産多死」を経て「少産少死」への人口動態の転換を指す。
2 世界人口は,国連の予測では,2020年以降減少すると推計されている。
3 第二次世界大戦後の世界人口の増加は,主に先進諸国の人口増加によるものである。
4 日本の人口は,高度経済成長期以降,減少が続いている。
5 人口ボーナスとは,人口の年齢構成が経済にとってプラスに作用することをいう。
この問題は,出題された当時,とても難易度が高かったと思われる問題です。
「社会学理論と社会システム」では,こういった現代社会の特筆が出題されるのが難解なところです。
しかし,自分だけではなく,ほかの受験生も同じく知らないので,出題されても慌てる必要は一切ありません。
こういった問題が多ければ,合格基準点が下がるだけの話です。
この問題が難しいだろうと思われる理由は,「人口転換」と「人口ボーナス」という聞きなれないものが2つ出題されて,そのうちの1つが正解になっているからです。
前説によって,予測できると思いますが,正解はそのうちの「人口ボーナス」です。
人口ボーナスとは,以下のような状態です。
生産年齢人口 > 従属人口
逆に
生産年齢人口 < 従属人口
となると,人口オーナスとなります。
それでは,解説です。
1 人口転換とは,「多産多死」から「少産多死」を経て「少産少死」への人口動態の転換を指す。
人口転換とは,「多産多死」から「多産少死」を経て,「少産少死」へと変化していくことです。
日本では,このあとに「少産多死」となることが予測されます。
よく考えるとわかるのかもしれませんが,これほど「多」「少」,「産」「死」が並んでいるとゆっくり考えるのはかなり難しいです。
2 世界人口は,国連の予測では,2020年以降減少すると推計されている。
世界人口は,現在も増加していて,この傾向はまだまだ続きます。
3 第二次世界大戦後の世界人口の増加は,主に先進諸国の人口増加によるものである。
先進国の多くは,少産少死社会です。
世界人口が増加しているのは,多産少死である,主に発展途上国の人口増加によるものです。
4 日本の人口は,高度経済成長期以降,減少が続いている。
日本の人口が最も多かったのは,2008年です。
そのあとから現在まで人口減少が続いています。
5 人口ボーナスとは,人口の年齢構成が経済にとってプラスに作用することをいう。
これが正解です。