2022年2月19日土曜日

防衛機制~無意識に行う

今回は,防衛機制に取り組みたいと思います。


防衛機制を研究したのは,精神分析学の創始者であるジークムント・フロイトの娘であるアンナ。フロイトです。


精神科医であるジークムント・フロイト(父)は,人の意識の領域には


意識

前意識

無意識


があると考えました。


父は,辛いことがあると無意識の領域に抑圧し,それが心身に影響を及ぼすと考えました。


精神分析療法では,クライエントが無意識の領域にある抑圧されたものに気づき治療していきます。


その時に使われるのが自由連想法です。安全な環境の中で,フッと頭に浮かんできたものを言葉にしてもらいます。それが無意識の領域にあったものだと考えます。


そこを開いていき,治療していきます。


精神分析療法の重要なキーワードは,「無意識」「自由連想法」などです。


「意識」「無意識」は,たった一文字違いです。国家試験問題を解くときの注意ポイントは精神分析なのに「意識」となっていないか,です。もしそうなっていたら,その選択肢は誤りです。


「無意識」と書かれていたら,それから深く問題を読めばよいです。国家試験には,こういった注意ポイントはたくさんあります。


それをつかんでいると凡ミスは減らせます。


娘は,人が無意識に行う心の働きである防衛機制を研究しました。


防衛機制を説明する文章で「意識」と書かれていたら誤りです。


意識的に行うのは,多くの場合「コーピング」です。


防衛機制は,以下のように出題されています。


第3回

第5回

第11回

第15回

第21回

第26回

第27回

第31回


連続しているのは,第26回と第27回のみです。それ以外は飛び飛びです。


毎年のように出題されているものなら,その直前の過去問でも勉強することができます。


しかし,社会福祉士の国家試験は出題範囲が広いことが特徴です。そんなに頻回に同じものを出題できるほど,問題に余裕はありません。


国試対策の講義で,頻出ではない前年度の問題を取り上げて説明してくれる先生もいます。

どんなに教え方が上手であっても,多くのものはムダになってしまいます。


せっかく国試対策をしてくれるなら,もっと国家試験の分析をしてもらいたいものです。


この学習部屋が直近の問題を取り上げないのは,多くのものは次回に続けて出題されないことを知っているからです。


さて,ここからが本題です。


防衛機制が出題される場合は,ほとんどが一問まるごとです。


参考書にはたくさんの種類が書かれています。


それを覚えるのは大変です。しかも出題されても1問のみ。


さあ,あなたはどんな戦略をとりますか?


第35回・第36回国家試験を受験されるなら,捨てることなく,確実に覚えたほうが良いです。


こういったものを確実に覚えていく忍耐力が合格を引き寄せると言っても過言ではありません。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題11 防衛機制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 父から叱られ腹が立ったので弟に八つ当たりした。これを置き換えという。

2 攻撃衝動を解消するためにボクシングを始めた。これを補償という。

3 苦手な人に対していつもより過剰に優しくした。これを投影という。

4 飛行機事故の確率を調べたら低かったので安心した。これを合理化という。

5 失敗した体験は苦痛なので意識から締め出した。これを昇華という。


防衛機制が難しいのは,その用語から内容をつかみにくいことがあります。


比較的わかりやすいのは「抑圧」でしょう。これは一般用語の「抑圧」と意味がほぼ一緒です。


覚えるときは,丸暗記するのはやめましょう。言い回しを変えられると対応不能になります。


必ず意味をつかむように覚えることが大切です。


さて,この問題の答えはわかりますか? 今この記事を読んでいる時点でこの問題の答えがわかる人は,防衛機制の勉強は,ほぼ完ぺきに近い知識になっていると言えます。自信をもってよいと思います。


なぜなら,正解は,選択肢1だからです。


1 父から叱られ腹が立ったので弟に八つ当たりした。これを置き換えという。


置き換えは,防衛機制の中では,とびっきり難しいものです。


参考書には,本来ぶつける気持ちを別の対象にぶつけること。


などと書かれているはずです。これを丸暗記していても,今日の問題のように出題されると対応不能です。


覚え方のコツは,この問題にあるように,置き換えは「八つ当たり」のことである,と押さえることです。


上司に怒られて,部下にやつ当たりするいやな中間管理職がいます。


最悪の中間管理職です。


そう思うと,その職場がいやになります。


「置き換えをしているのだなぁ。置き換えを実践して見せてくれてありがとうございます」というくらいに思うのが良いです。


それでは,ほかの選択肢も見てみます。


2 攻撃衝動を解消するためにボクシングを始めた。これを補償という。


攻撃衝動を解消するためにボクシングを始めた。 → 昇華


人を殴りたくなってなぐったら,暴行の犯罪行為です。


しかし,なぐっても許されるのはボクシングです。


そのように社会から許されないものを許されるもので解消するのが昇華です。


補償は,苦手なものを別のもので補うことです。


勉強が苦手な人が運動で頑張るのが補償の例です。


3 苦手な人に対していつもより過剰に優しくした。これを投影という。


苦手な人に対していつもより過剰に優しくした。 → 反動形成


反動形成も難しいものの一つです。


反動形成の反動とは,逆に働く力を意味しています。


そこから,自分の本来の気持ちとは逆の対応をすることが反動形成という用語となります。


好きな人にいじわるする。


嫌いな人に丁寧に接する。


こういった対応が反動形成の例です。


投影は,自分の中にある感情を相手の中にあると考えることです。


あの人は,私を嫌っている,と思うことがあります。


しかし,その人を嫌っているのは,自分だったりします。それを認めたくないがために知らず知らずに相手が嫌っていると思います。これが投影の例です。


4 飛行機事故の確率を調べたら低かったので安心した。これを合理化という。


飛行機事故の確率を調べたら低かったので安心した。 → 知性化


合理化は,自分が失敗したことを自分の都合が良いように考えることです。


現場で働く人が社会福祉士の国家試験に合格できなかった時,「資格をとっても,給料が変わるわけではない。だから合格しなくても良いのだ」と思うのが,合理化の例です。


短期的には給料が変わらなくても,長期的には何かが変わる,それを信じる気持ちがないと,気持ちは弱くなります。


弱い気持ちは,国家試験に合格するためには最も避けなければならないことです。


5 失敗した体験は苦痛なので意識から締め出した。これを昇華という。


失敗した体験は苦痛なので意識から締め出した。 → 抑圧


昇華は,先に書いたように,社会から許されないものを許されるもので解消することが昇華です。


〈今日の一言〉


知識がそのまま答えになる「AはBである」といった出題は,これから減っていき,知識があることを前提に,もう一段階考えさせる問題が増えていきます。


もう一段階考えさせる問題は,タクソノミーⅡ型と呼ばれる出題スタイルです。


どんなものがタクソノミーⅡ型なのだろうと思っていましたが,おそらく今日の問題もタクソノミーⅡ型の一つではないでしょうか。


理解しながら勉強することがより重要になります。

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