心理検査の数は多いですが,実際に国家試験に出題されているのは,パーソナリティ検査,知能検査が中心,しかも出題されているものは限られています。
ただし,国家資格である公認心理師が誕生し,協働が求められることもあり,近年の出題は少しばかり高度になってきています。
とは,いうものの基本を押さえておけば,恐れることは一切ありません。
第33回・問題13 心理検査に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 特別支援学級への入級を検討したい子どもの知能検査を学校から依頼されたので,ロールシャッハテストを実施した。
2 改訂長谷川式簡易知能評価スケールの結果がカットオフポイントを下回ったので,発達障害の可能性を考えた。
3 10歳の子どもに知能検査を実施することになり,本人が了解したので,WAIS-Ⅳを実施した。
4 投影法による性格検査を実施することになったので,矢田部ギルフォード(YG)性格検査を実施した。
5 WISC-Ⅳの結果,四つの指標得点間のばらつきが大きかったので,全検査IQ(FSIQ)の数値だけで全知的能力を代表するとは解釈しなかった。
正解は,選択肢5です。
第34回・問題13 心理検査に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ウェクスラー児童用知能検査第4版(WISC-Ⅳ)は,対象年齢が2歳から7歳である。
2 ミネソタ多面人格目録(MMPI)では,日常生活の欲求不満場面を投影法により測定する。
3 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は,高齢者の抑うつを測定する。
4 ロールシャッハテストは,図版に対する反応からパーソナリティを理解する投影法検査である。
5 矢田部ギルフォード(YG)性格検査は,連続した単純な作業を繰り返す検査である。
正解は,選択肢4です。
第33回では,カットオフポイント(カットオフ値)という聞きなれない言葉が出題されたのと,心理検査の解釈が出題されています。
これらは,完全に公認心理師の影響です。
カットオフ値は,基準となる数値です。認知症のスクリーニングに用いられる検査では,カットオフ値を下回ると,認知症が疑われます。
うつ病のスクリーニングに用いられる検査では,カットオフ値を上回ると,うつ病が疑われます。
ウェクスラー式の知能検査には,低年齢児用のWPPSI(ウィプシ),子ども用のWISC(ウィスク),成人用のWAIS(ウェイス)があります。
ウェクスラー式の発達検査の対象年齢
WPPSI |
3歳10か月~7歳1か月 |
WISC |
5歳~15歳 |
WAIS |
16歳~90歳11か月 |
全検査IQ |
言語理解 |
知覚推理 |
|
ワーキングメモリ |
|
処理速度 |
この4つが第33回に出題されている指標得点です。
全検査IQと4つの得点指標の数値の読み方
130以上 |
非常に高い |
120~129 |
高い |
110~119 |
平均の上 |
90~109 |
平均 |
80~89 |
平均の下 |
70~79 |
低い |
69以下 |
非常に低い |
5 WISC-Ⅳの結果,四つの指標得点間のばらつきが大きかったので,全検査IQ(FSIQ)の数値だけで全知的能力を代表するとは解釈しなかった。
たとえば,全検査IQが100だとしても
4つの指標得点が,あるものが高くて,あるものが低いということがあり得ます。
人は誰もが得意なものと不得意なものがあるものです。
ウェクスラー式知能検査では,そういったものを判断するための情報が得られます。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題13 心理検査に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 MMPIでは,単語理解のような言語性の知能を測定する。
2 PFスタディでは,欲求不満場面での反応を測定する。
3 TATでは,インクの染みを用いた知覚統合力を測定する。
4 WAISでは,抑うつの程度を測定する。
5 CMIでは,視覚認知機能を測定する。
パーソナリティ検査の出題頻度が高いのですが,パーソナリティ検査の場合,質問紙法,投影法,作業検査法のどれに当たるのかを同時に覚えておきたいです。
それでは,解説です。
1 MMPIでは,単語理解のような言語性の知能を測定する。
MMPIは,質問法によるパーソナリティ検査です。知能検査ではありません。
550も質問項目があることが特徴です。
この中には,虚偽の答えが混じっているかを調べる質問も含まれます。このL尺度が高いと,自分をよく見せようとしていることや悪く見せようとしていることがわかります。
2 PFスタディでは,欲求不満場面での反応を測定する。
これが正解です。
PFスタディは,投影法によるパーソナリティ検査です。
どんな欲求不満場面についての反応を見るのか,ネットを検索するとたくさんヒットするので,一度見てみるとよいかもしれません。
3 TATでは,インクの染みを用いた知覚統合力を測定する。
TATも投影法によるパーソナリティ検査です。
ある場面の絵を見せて,物語をつくってもらいます。
インクの染みと言えば,ロールシャッハテストです。これも投影法によるパーソナリティ検査です。
4 WAISでは,抑うつの程度を測定する。
WAISが測定するのは知能です。
抑うつの程度を測定する心理検査は,たくさんの種類がありますが,国家試験で出題されたことがないので,覚える必要はないでしょう。
5 CMIでは,視覚認知機能を測定する。
CMIは,心身の状態の自覚症状を測定する検査です。