国家試験が終わると,さまざまな団体や人が合格ライン予想を出します。
大体の予想は合っているかもしれませんが,予想している人は受験生ではないということは差し引いて考える必要があります。
というのは,チームfukufuku21がずっとテーマにしてきたことは,答えはほかの選択肢との関係性で変わってしまう可能性があるからです。
正解は明確であっても,ほかの選択肢にわかりにくいものがあると,簡単には正解できません。
その一つの例です。
第34回・問題94 ソーシャルワークの専門職化に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ミラーソン(Millerson,G.)は,職業発展の過程から,ソーシャルワーク専門職が成立するプロセスを提示した。
2 グリーンウッド(Greenwood,E.)は,既に確立している専門職と,ソーシャルワーカーを比較することによって,準専門職の概念を提示した。
3 カー‐ソンダース(Carr-Saunders,A.)は,専門職が成立する属性を挙げ,その中でテストによる能力証明の必要性を主張した。
4 エツィオーニ(Etzioni,A.)は,専門職が成立する属性を挙げ,その中で専門職的権威の必要性を主張した。
5 フレックスナー(Flexner,A.)は,専門職が成立する属性を挙げ,ソーシャルワークがいまだ専門職とはいえないことを主張した。
試験対策を担当する先生は,教えたものは解けると思っているふしがあります。
それが少し違うように思うのです。
そんなに簡単に正解できないのが国家試験の現実です。受験した人はよくわかるのではないでしょうか。
第34回・問題45 「令和3年版地方財政白書」(総務省)における2019年度(令和元年度)の民生費に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 地方公共団体の目的別歳出純計決算額の構成比は,高い方から,教育費,公債費,民生費の順となっている。
2 民生費の目的別歳出の割合は,市町村では児童福祉費よりも社会福祉費の方が高い。
3 民生費の目的別歳出の割合は,都道府県では生活保護費よりも老人福祉費の方が高い。
4 民生費の性質別歳出の割合は,市町村では扶助費よりも人件費の方が高い。
5 民生費の性質別歳出の割合は,都道府県では補助費等よりも扶助費の方が高い。
この問題も国家対策の先生には,ものすごく簡単に感じ,間違う人は信じられない,と思っているかもしれません。
確かにそうなのですが,覚えさせる工夫をしているのか,と思います。
知識の伝授だけでは,みんなが合格するのは難しいです。基礎学力に左右されるからです。
〈今日の一言〉
受験生が覚えにくいものは何かを知っていて,それをきっちり教えてくれる本物の国試対策を期待したいです。
出題基準を示して,ここが出題されそうだ,みたいな国試対策は国試対策ではありません。
最も中途半端な指導は「〇〇白書に目を通しておきましょう」です。
目を通したくらいで覚えられるのは,そのポイントを知っているからです。多くの人はどこに目を通しておいたらわかりませんし,覚えられません。
どこが出題されかは,誰もわかりません。国家試験合格に必要なのは,出題基準に示されている範囲を丁寧に覚えていくことです。
山を張って合格できるような出題範囲が狭い試験ではありません。
とは言っても,一つひとつの問題自体はそれほど難しくはありません。しかし,コンスタントに正解していくのはものすごく難しいものです。得点できる確実な知識が必要です。
※次回から通常モードに戻ります。