2022年2月1日火曜日

第34回介護福祉士国家試験の問題

以前は,3福祉士の国家試験は同時に行っていましたが,現在はずらして実施されています。その結果,介護福祉士は社会福祉士・精神保健福祉士よりも一週間早く実施されています。

 

34回国家試験の合格発表は社会福祉士よりも遅いので今回はどうなるかわかりませんが,近年の合格率は70%前後となっています。

 

この合格率が高いか低いかはわかりませんが,社会福祉士よりもずっと高いことは間違いありません。

 

だからといって,問題がやさしいかと言えば,決してそんなことはないように思います。

外国人の受験生は本当に頑張って受験しないと合格するのはかなり厳しいように思います。

 

34回の問題1はこんな問題でした。

 

34回・問題1 著書『ケアの本質―生きることの意味』の中で,「一人の人格をケアするとは,最も深い意味で,その人が成長すること,自己実現することをたすけることである」と述べた人物として,正しいものを1つ選びなさい。

1 神谷美恵子

2 糸賀一雄

3 フローレンス・ナイチンゲール(Nighttingale,F.

4 ミルトン・メイヤロフ(Mayeroff,M.

5 ベンクト・ニイリエ(Nirje,B.

 

近年の介護福祉士の国家試験は,一本筋が通っているなぁ,と感じます。

 

というのは,1問目あるいは2問目は「はぁ? これ誰?」と言われる問題を出題し続けているからです。これって,ものすごく重要なことだと思います。

 

国家試験で一度出題されると,参考書や過去問題集に記載され,多くの人が学ぶことができるからです。国家試験にはすべて意味があると思います。これは社会福祉士も同じです。

 

この問題の正解は,選択肢4のメイヤロフです。

 

かつて,福祉の研修では,メイヤロフを引用していた講師は多かったものです。

 

しかし,介護福祉士の国家試験の解答速報の動画をいくつか見ましたが,メイヤロフは初めて聞いた,と述べている人ばかりでした。

 

この出題はそんな時代にくさびを入れる出題になったはずです。

 

社会福祉士国家試験では,かつてこんな出題がありました。

 

15回・問題113 社会福祉援助技術の原理等に関する次の記述のうち,適切でないものを一つ選びなさい。

1 メイヤロフ(Mayeroff,M.)は,ケアする人が,ケアする際にケアされる人を支配したり,評価したりすることで自分を高める喜びをもつことがケアの本質であると述べている。

2 バートレット(Bartlett,H.)は,実践において適切に活用することの重要性を指摘した価値,知識,技法を社会福祉援助活動の本質的要素とした。

3 ブトゥリム(Butrym,Z.)は,人間の本質に内在する普遍的価値から引き出した「人間尊重」「人間の社会性」「人間の変化の可能性」を,社会福祉援助活動の価値前提とした。

4 フリードランダー(Friedlander,W.)は,社会福祉援助技術の根本的原理を「個人の価値」

「人格に固有なる尊厳」「個人の福祉に対する社会の責任」「共通善に貢献すべき個人の責任」という民主主義的な諸価値から導き出した。

5 バークレイ委員会報告では,ソーシャルワーカーにとって特に重要な価値の一つとして,「クライエントの秘密保持の権利及び法律の許す範囲での自己決定権を尊重すること」が述べられている。

 

この問題が,正しいものを選ぶ問題なら,とても難しい問題だと思いますが,今は存在しない「誤っているもの」を選ぶものなので,全然難しくない問題となっています。

  

誤っているものは,選択肢1です。知識なしでも選べることでしょう。

 

1 メイヤロフ(Mayeroff,M.)は,ケアする人が,ケアする際にケアされる人を支配したり,評価したりすることで自分を高める喜びをもつことがケアの本質であると述べている。

 

メイヤロフが述べたことは,

 

一人の人格をケアするとは,最も深い意味で,その人が成長すること,自己実現することをたすけることである。

 

 

とても重要なことなのに,社会福祉士の国家試験でも出題されなくなったのは,とても残念なように思います。

 

だから,介護福祉士の国家試験の問題を作った試験委員は,メイヤロフをあえて出題したように思うのです。

 

一応解説します。

 

1 神谷美恵子

 

神谷さんは,精神科医師として,活動された人です。

 

2 糸賀一雄

 

糸賀さんは,近江学園の設立者で「この子らを世の光に」という理念で知られます。

 

児童福祉五人衆の一人です。

この子らを世の光に

https://fukufuku21.blogspot.com/2021/08/blog-post_22.html

 

ネット等では,この5人に高木憲次先生を加えて「児童福祉6人衆」という表記もありますが,高木先生はいまだ正解になったことがないので,ほかの人よりも一段下がるように思います。

 

出題頻度を考えると6人衆でよいのかもしれません。

 

3 フローレンス・ナイチンゲール(Nighttingale,F.

 

ナイチンゲールが何を述べたのかはよく知りませんが,病弱だったこともあり,有名な『看護覚え書き』以外は,手紙のようなものをまとめた書簡集くらいしか残っていません。

 

5 ベンクト・ニイリエ(Nirje,B.

 

社会福祉士を受験する人は,ノーマライゼーション三人衆は,がっちり覚えておきたいです。

 

誰のことかわかりますか?

 

ノーマライゼーションって何だろう? と考えた人は誰?

https://fukufuku21.blogspot.com/2019/04/blog-post_5.html

 

バンク-ミケルセン
 ノーマライゼーションは,知的障害者の親の会とともに処遇改善運動を行ったときの理念。それがデンマークの1959年法として世界で初めて明文化された。

ニイリェ
 ノーマライゼーションの8つの原理を提唱した。

ヴォルフェンスベルカー
 文化的・社会的役割としてのノーマライゼーションである「ソーシャル・ロール・バロリゼーション」を提唱した。

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