国家試験問題の冊子を開いた瞬間,難しい,こんなはずではない,と思う人は多いはずです。勉強を積み重ねた人のほうがその思いは強いように思います。
何度も受験していると「本当に合格できるのだろうか」と思うはずです。どんなに勉強しても知らないものが出題されるからです。
しかし,国家試験はそんなものを知らなくても合格できるように設計されています。
国家試験では,気持ちが負けた人が脱落するサバイバルゲームと言えるかもしれません。
第34回・問題94 ソーシャルワークの専門職化に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ミラーソン(Millerson,G.)は,職業発展の過程から,ソーシャルワーク専門職が成立するプロセスを提示した。
2 グリーンウッド(Greenwood,E.)は,既に確立している専門職と,ソーシャルワーカーを比較することによって,準専門職の概念を提示した。
3 カー‐ソンダース(Carr-Saunders,A.)は,専門職が成立する属性を挙げ,その中でテストによる能力証明の必要性を主張した。
4 エツィオーニ(Etzioni,A.)は,専門職が成立する属性を挙げ,その中で専門職的権威の必要性を主張した。
5 フレックスナー(Flexner,A.)は,専門職が成立する属性を挙げ,ソーシャルワークがいまだ専門職とはいえないことを主張した。
ここに出題されている人たちは,主要な教科書にはおそらく記載があるでしょう。
しかし,国試対策の参考書には,グリーンウッドとフレックスナー以外は載っていないと思います。
なぜなら,過去に出題されたことがないからです。
参考書は,国家試験に出題されたものを中心にまとめます。
今の時点(2月)では,次年度の国家試験に向けて改訂作業が進められているはずです。
国家試験では,すべての選択肢が今までに出題されたもので構成されている問題はそれほど多くはありません。1つか2つの選択肢が新しいものになっていることが大半です。
この問題の場合,ミラーソン,カー‐ソンダース,エツィオーニがそれにあたります。
慌てるとこれらから適当に選んでしまいがちですが,多くの問題ではこれらに正解は含まれません。
結局,この問題の正解は,選択肢5です。
5 フレックスナー(Flexner,A.)は,専門職が成立する属性を挙げ,ソーシャルワークがいまだ専門職とはいえないことを主張した。
〈今日の一言〉
ある程度,勉強した人なら,必ずフレックスナーの名前と,「ソーシャルワークはいまだ専門職とはいえない」という言葉は目にしていたはずです。
それにもかかわらず,ほかの選択肢との兼ね合いで,この選択肢を選ぶのがとても難しくなります。
問題は,ほかの選択肢の影響を強く受けます。
私たちチームfukufuku21が,一問一答式の勉強を勧めていないのはここに理由があります。
一問一答式では,確実に〇か×かわかるものでも,ほかの選択肢に見慣れないものが含まれると,そこに引っ張られてしまいます。
勉強の過程では,一問一答式の勉強は確実に覚えるために適切ですが,国試に向けた得点力を上げるためには,国試と同じスタイルの問題を解いていくことが重要です。
国家試験で不合格になると「知識不足だった」「勉強不足だった」と思うかもしれません。
しかし,ある程度時間をかけて勉強した人なら,基本的に勉強不足だったということはないように思います。特に何回も受験した人はなおのことです。
もちろん知識は確実につけていく勉強は続けていくことが必要ですが,それと同時に「なぜ正解を選べなかったのか」を真剣に考えてみることが必要なように思います。
同じ勉強方法では,また新しいものを加えて出題されたとき,そこに影響を受けて,正解できないということを繰り返してしまう可能性が極めて高いように思います。