平成19年カリキュラム改正によって実施されている国家試験は,第22回から始まり,現時点(2022・令和4年2月)までに,13回実施されています。
令和元年改正カリキュラム改正の国家試験は,第37回から始まります。
平成19年改正のカリキュラム改正の国家試験は,第35回と第36回の残り2回です。
令和元年改正は,平成19年改正のような大きな改正ではないので,比較的スムーズに移行できると思いますが,それでもこの2回のうちに合格しておきたいです。
さて,平成19年改正後の国家試験は13回も実施されているので,出題ポイントはかなり明確になってきています。
そのため,第35回国家試験に出題されるものは予測できませんが,出題されないものはおおよそ予測できます。
出題の仕方には特徴があるからです。
第34回・問題1 加齢に伴う身体の変化に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 肺の残気量が増加する。
2 拡張期血圧が低下する。
3 聴力は低音域から低下する。
4 下部食道括約筋の収縮力が増強する。
5 膀胱容量が増大する。
なかなかうまい出題だと思います。
この中で,今まで同じ内容で出題されたことがあるのは,
2 拡張期血圧が低下する。
3 聴力は低音域から低下する。
しっかり勉強した人なら,答えはわかるはずです。選択肢3は勉強したことのない人でも間違いであるとわかるかもしれません。
正解は選択肢1です。
1 肺の残気量が増加する。
肺の残気量が直接的に出題されたことはありません。
過去には,以下のような出題があります。
第26回・問題1
5 肺や腎臓は,老化による生理機能低下が顕著な器官である。
これが正解です。
肺は機能低下しやすい器官であることは,これでわかります。
残気量についてわからない人は,こういった知識をもとに考えることになります。
知識を使って考えるタイプの問題は,タクソノミーⅡ型と呼ばれる形式です。
知識がそのまま答えにつながる問題は,タクソノミーⅠ型と呼ばれますが,今後の国家試験では,そういった単純なタクソノミーⅠ型よりもタクソノミーⅡ型を織り交ぜてくることになります。
肺の残気量とは,肺の空気を送り出したとき,肺の中に残る空気の量のことです。
このように解説を聞けば「なるほど」と思うでしょう。しかし,国家試験会場では,自分で考えなければなりません。
確実な知識の上によって立つ思考力が求められます。知識があって知恵のない社会福祉士は必要とされません。
4 下部食道括約筋の収縮力が増強する。
この類型問題も存在します。
問題24回・問題1
5 高齢者の胃では過酸症となるため,逆流性食道炎を起こしやすい。
これは間違いです。
逆流性食道炎を起こしやすくなるのは,噴門にある下部食道括約筋の収縮力が弱くなるためです。
これも過去問からストレートに出題されているわけではないので,タクソノミーⅡ型と言えるのかもしれません。
5 膀胱容量が増大する。
これは,ないだろうと思えるのではないでしょうか。高齢者になるとトイレが近くなるからです。
〈今日の一言〉
先に書いたように出題ポイントは,ほとんど決まってきています。
「現代社会と福祉」のように,予測しにくい出題がある科目もありますが,そういった問題は必ずしも正解できなくてもよい問題です。
第34回国家試験では,必ずしも正解できなくてよい,と言える問題は例年に比べるとかなり少なかったので,もしかすると今後もその傾向になるのかもしれません。
その代わり,タクソノミーⅡ型,Ⅲ型(基本は事例問題)を増やしていくということになるのかもしれません。
第37回国試以降はそのようになっていくと予測されますが,第35・36回からそうなるとしたら,基礎的な知識はこれまで以上に必要になっていくことでしょう。
それが最低ライン。その上に思考力が問われます。このように書くとハードルがとてつもなく高く感じる人もいると思いますが,基礎力があれば考えられます。安心してください。
重要なものはいつも変わらないからです。