解答速報では見解が分かれる問題があります。
そういった問題があると「不適切問題?」と思う人も多いようです。
しかし,不適切問題になるのは,多くの場合,そういったものではなく,誰もがあまり気にならない部分であることが多いです。
第34回国家試験では修正がありましたが,多くの受験生にとっては修正があってもなくても別に影響はなかったのではないかと思います。
第34回国家試験でもいくつか見解が分かれているものがあるようですが,その一つに問題141があります。
第34回・問題141 事例を読んで,N県児童相談所のG児童福祉司(社会福祉士)が考えるHちゃんの支援方針として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Hちゃん(1歳半)は,ネグレクトによりU乳児院に入所している。Hちゃんの母Jさん(25歳)は現在新しいパートナーと二人で暮らしているが,U乳児院によると,HちゃんはJさんと面会しても全く反応がなかったという。G児童福祉司は何度かJさんと面談し,今後の養育や家庭引取りに向け話合いをしてきた。しかし,JさんはHちゃんを養育する意思はないとはっきり伝えてきた。その後,Jさんは全く面会せず,現在は連絡もなかなかつかない状況である。
1 集団生活の一貫性を保障するため,児童養護施設に措置変更をする。
2 家庭と同様の養育環境を保障するため,里親に委託する。
3 JさんとHちゃんの愛着関係を見極めるため,措置を継続する。
4 Jさんに母親として自覚してもらうため,家庭復帰する。
5 愛着関係不全からの回復を図るため,福祉型障害児入所施設に措置変更をする。
迷うのは,選択肢2と3ではないかと思います。
解答速報では,選択肢3を正解にしているところもありますが,私たちは選択肢2が正解だと考えています。
2 家庭と同様の養育環境を保障するため,里親に委託する。
国家試験が終わって,公認心理師の勉強に移っている人は,この記事を読む人はいないと思いますが,公認心理師の国家試験でよく似た問題が出題されています。
公認心理師・第4回・問154 0歳の男児A。18歳の母親Bは、医療機関に受診のないまま緊急の分娩によりAを出産した。分娩自体は正常で、Aの健康状態に問題はなかったが、母子の状態が安定するまで医療機関に入院となった。医療機関から連絡を受けた児童相談所がBとの面談を実施したところ、Bは精神的に安定しているものの、Aを養育する意思がなかった。また、経済的な問題もみられ、Aの父親も不明であった。Aを養育することが可能な親族も見当たらない。
この時点で考えられる主な措置先を2つ選べ。
① 乳児院
② 里親委託
③ 一時保護所
④ 児童自立支援施設
⑤ 母子生活支援施設
Aを養育する気がない,という点でまったく同じです。
この問題の正解は,
① 乳児院
② 里親委託
心優しき人は,Bさんが変わることを期待して,⑤ 母子生活支援施設 を選んでしまいがちです。
しかし,事例問題は,事例の中で述べられている情報だけで判断しなければなりません。
勝手に「〇〇かもしれない」という情報を付け加えて考えると間違えるもとです。
どちらの問題も
お母さんは,「養育するつもりはない」と述べています。
社会福祉士の問題では,丁寧に「その後,Jさんは全く面会せず,現在は連絡もなかなかつかない状況である」という情報を加えています。
期待するのは良いですが,愛着関係をどのように見極めることができるでしょう?
電話に出れば,愛着関係がある?
LINEで何か反応があったら,愛着関係がある?
このようなもので愛着関係はわからないでしょう。措置を継続するだけではおそらく何も見えてきません。
実は,公認心理師の問題もかなり話題になり,里親委託が正解でした。これがなければ,社会福祉士の問題も悩むところかもしれません。
重要なことは,事例問題は事例の中の情報だけで判断することです。
こうかもしれない,といった情報を付け加えることは,ミスする原因です。
現場経験のある人は,特に気を付けたいです。