社会福祉法は,社会福祉の基本法とも言える法律です。
一度は,すべての条項は読んでおきたいものです。
さて,今日のテーマは,「事業経営の準則」です。
(事業経営の準則) 第六十一条 国,地方公共団体,社会福祉法人その他社会福祉事業を経営する者は,次に掲げるところに従い,それぞれの責任を明確にしなければならない。 一 国及び地方公共団体は,法律に基づくその責任を他の社会福祉事業を経営する者に転嫁し,又はこれらの者の財政的援助を求めないこと。 二 国及び地方公共団体は,他の社会福祉事業を経営する者に対し,その自主性を重んじ,不当な関与を行わないこと。 三 社会福祉事業を経営する者は,不当に国及び地方公共団体の財政的,管理的援助を仰がないこと。 2 前項第一号の規定は,国又は地方公共団体が,その経営する社会福祉事業について,福祉サービスを必要とする者を施設に入所させることその他の措置を他の社会福祉事業を経営する者に委託することを妨げるものではない。 |
なぜこのような規定をしたと思いますか?
間違っても良いので,その理由を考えてみましょう。
まずはその背景です。
憲法では,公金その他の公の財産は、公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならないと規定していることもあり,公の支配に属する法人として,社会福祉事業法では,社会福祉法人制度が創設されました。
これは聞いたことあるよ,という人はとても勉強が進んでいる証拠です。
社会福祉法人は,公の支配に属する性格をもつことで,憲法に抵触しない制度として生まれました。その時に,規定されたのが「事業経営の準則」です。
社会福祉事業法が社会福祉法になって,措置委託の影か薄くなったとは言え,今も規定されています。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題30 社会福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 第一種社会福祉事業の経営は,国・地方公共団体に限定されている。
2 2000年(平成12年)の社会福祉基礎構造改革の際に,社会福祉事業法の題名が改められたものである。
3 「社会福祉事業」を行わない事業者であっても社会福祉に関連する活動を行う者であれば,社会福祉法人の名称を用いることができる。
4 市町村に対して,福祉人材センターの設置を義務づけている。
5 国,地方公共団体と社会福祉事業を経営する者との関係を規定した「事業経営の準則」は,社会福祉法では削除された。
何か不思議な問題です。
その理由は,選択肢2が正解だからです。
2 2000年(平成12年)の社会福祉基礎構造改革の際に,社会福祉事業法の題名が改められたものである。
確かにそうですが,正解とせずとも,その他大勢の選択肢,つまり誤りの選択肢として出題でも良かったように思います。事業経営の準則は,ずっと出題していなかったこともあり,正解にはできなかったのでしょう。
それでは,それ以外の選択肢の解説です。
1 第一種社会福祉事業の経営は,国・地方公共団体に限定されている。
重要なものが忘れられています。社会福祉法人が抜けています。
3 「社会福祉事業」を行わない事業者であっても社会福祉に関連する活動を行う者であれば,社会福祉法人の名称を用いることができる。
社会福祉法人は,主として社会福祉事業を実施する法人です。
4 市町村に対して,福祉人材センターの設置を義務づけている。
福祉人材センターは,都道府県知事が指定するものです。
5 国,地方公共団体と社会福祉事業を経営する者との関係を規定した「事業経営の準則」は,社会福祉法では削除された。
前説で述べたように,事業経営の準則は,現在も規定されています。