2022年3月2日水曜日

社会的ジレンマに関する出題は限られている

国家試験に出題される社会的ジレンマの例は,ほとんど固定されています。


有名なものには限りがあるからなのか,絞り込んで出題した結果であるのかはわかりません。


とにかく,出題されているのは限られています。


・フリーライダー

・囚人のジレンマ

・共有地の悲劇


これらに加えて,選択的誘因が出題されています。


これらを押さえたところで,今日の問題です。


第31回・問題21 次のうち,「フリーライダー」に関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 他者からの矛盾した命令を受け取ることで身動きがとれない者

2 自分の利益を得るために他者を裏切ることを選択する者

3 他者との比較で剥奪感を抱いている者

4 自ら負担することなく集合財を享受する者

5 自分の効用を引き上げるために他者の効用を引き下げる者



フリーライダーを少しでも勉強していれば,正解できる問題です。

悩む余地がありません。


こういった問題で取りこぼすと合格が遠ざかります。


それでは,解説です。


1 他者からの矛盾した命令を受け取ることで身動きがとれない者


これは,ダブルバインド(二重拘束)です。


この選択肢のように,矛盾した明確な2つがあるとダブルバインドとしてわかりやすいですが,心理学的に言えば,言葉では「学校に無理して行かなくていいよ」と言いながら,その一方で「本当は学校に行ってほしい」というノンバーバル的なメッセージを送っているようなものもダブルバインドです。


2 自分の利益を得るために他者を裏切ることを選択する者


これは,囚人のジレンマです。


3 他者との比較で剥奪感を抱いている者


これは,相対的剥奪です。


4 自ら負担することなく集合財を享受する者


これが正解です。


水道代を払わずに水道を利用するといった例がフリーライダーです。


5 自分の効用を引き上げるために他者の効用を引き下げる者


これは,パレート効率性です。


財の分配に関してよく使われる用語です。この言葉自体はまだ国家試験には出題されたことがありません。


100万円という財源が決まっていて,これを10人に分配しているとします。


そうすると,10万円ずつ受け取ることができます。


これを20人に分配しようとすると,もともと分配されていた人は金額が減って不満足になります。


しかし,新しく分配を受ける人は,もともと0円だったものが,5万円が受け取れるので満足します。


パイが決まっている場合は,必ずこの問題が生じます。これをパレート効率性といいます。


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