国家試験に出題される社会的ジレンマの例は,ほとんど固定されています。
有名なものには限りがあるからなのか,絞り込んで出題した結果であるのかはわかりません。
とにかく,出題されているのは限られています。
・フリーライダー
・囚人のジレンマ
・共有地の悲劇
これらに加えて,選択的誘因が出題されています。
これらを押さえたところで,今日の問題です。
第31回・問題21 次のうち,「フリーライダー」に関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 他者からの矛盾した命令を受け取ることで身動きがとれない者
2 自分の利益を得るために他者を裏切ることを選択する者
3 他者との比較で剥奪感を抱いている者
4 自ら負担することなく集合財を享受する者
5 自分の効用を引き上げるために他者の効用を引き下げる者
フリーライダーを少しでも勉強していれば,正解できる問題です。
悩む余地がありません。
こういった問題で取りこぼすと合格が遠ざかります。
それでは,解説です。
1 他者からの矛盾した命令を受け取ることで身動きがとれない者
これは,ダブルバインド(二重拘束)です。
この選択肢のように,矛盾した明確な2つがあるとダブルバインドとしてわかりやすいですが,心理学的に言えば,言葉では「学校に無理して行かなくていいよ」と言いながら,その一方で「本当は学校に行ってほしい」というノンバーバル的なメッセージを送っているようなものもダブルバインドです。
2 自分の利益を得るために他者を裏切ることを選択する者
これは,囚人のジレンマです。
3 他者との比較で剥奪感を抱いている者
これは,相対的剥奪です。
4 自ら負担することなく集合財を享受する者
これが正解です。
水道代を払わずに水道を利用するといった例がフリーライダーです。
5 自分の効用を引き上げるために他者の効用を引き下げる者
これは,パレート効率性です。
財の分配に関してよく使われる用語です。この言葉自体はまだ国家試験には出題されたことがありません。
100万円という財源が決まっていて,これを10人に分配しているとします。
そうすると,10万円ずつ受け取ることができます。
これを20人に分配しようとすると,もともと分配されていた人は金額が減って不満足になります。
しかし,新しく分配を受ける人は,もともと0円だったものが,5万円が受け取れるので満足します。
パイが決まっている場合は,必ずこの問題が生じます。これをパレート効率性といいます。