2019年8月30日金曜日

人事考課の留意点~評価のエラー

人事考課とは,職員の能力評価をいいます。
目標管理と合わせて実施されます。

一般企業では,ボーナス支給の際の査定に用いられることもよくあります。

人事考課を行う役割を担う人のことは,考課者といいます。

人を適切に評価することは,かなり難しいものです。

人事考課を実施するうえで,考課者が留意しなければならないものとして,以下のようなものが挙げられます。


<人事考課の留意点>


ハロー効果
 ある部分の評価が全体に影響すること。後光効果,光背効果ともいいます。「後光がさす」という表現もありますが,人が後ろから照らされると,その人は輝いて見えます。環のようなものを背負っている仏像があります。それが後光(光背)です。後光があると,仏像がより神秘的に見えて,より輝きを増します。昔の仏師が後光の効果を知っていたというのは驚きです。


対比誤差
 考課者と反対の傾向を持つ人を評価する際,その人により高い評価をつけたり,逆により低い評価をつけることをいいます。例えば,期限厳守を信条としている人が評価すると,期限厳守の人をより高い評価をつけて,時間にルーズな人をより低い評価をつけることが対比誤差です。

寛大化
 より高い評価をつけること。考課者が人を評価することに自信がない時に,寛大化が起きやすくなります。


厳罰化
 より厳しい評価をつけること。管理者として「スタッフは●●でなければならない」という強い思いがあると,厳しい評価になりがちです。


中心化
 評価スケールが1~5まであった場合,3を中心として,2や4に評価が集まることをいいます。本来は,グーンと高い評価や低い評価になるべきものが,平均的な傾向となることです。


先入観
 考課者の色眼鏡で評価してしまうこと。この人はいつも●●だから今回も●●だろうと思ってしまうことがあります。


以上は,人事考課の際の留意点の一部です。これらに気を付けないと正しい評価にならない,いわゆる評価のエラーが発生します。

上記の中で,特にしっかり覚えておきたいのは,ハロー効果です。



それでは今日の問題です。

第27回・問題123 人材の確保・育成に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 採用計画の立案に当たっては,社員の数という量だけでなく,資格や経験などの職業能力の質についても考慮する。

2 ハロー効果とは,評価者自身と反対の特性を持つ者を過大又は過小に評価するエラーのことである。

3 人事考課などの評価の結果については,苦情が出やすいため,フィードバックの面接は行ってはならない。

4 目標管理制度では,個人の嗜好に合わせて自由に目標を設定させなければならない。

5 計画的な人事異動であるジョブ・ローテーションは,人材育成を目的としたものではない。


正解は,1

1 採用計画の立案に当たっては,社員の数という量だけでなく,資格や経験などの職業能力の質についても考慮する。

言われてみると,その通りだと思うでしょう。
しかし,国試では5つの選択肢がそれぞれ影響しあい,簡単に正解することを拒みます。


それでは,ほかの選択肢もみていきましょう。

2 ハロー効果とは,評価者自身と反対の特性を持つ者を過大又は過小に評価するエラーのことである。

ハロー効果は,一つの部分がほかの部分にも影響を与えるものです。

ある部分が好ましく思えば,ほかの部分は大したことがなくても,良い評価となります。
逆に,ある部分の評価が良ければ,ほかに優れている部分があっても,良い評価になりません。

評価者自身と反対の特性を持つ者を過大又は過小に評価するエラーのことは,対比誤差といいます。

3 人事考課などの評価の結果については,苦情が出やすいため,フィードバックの面接は行ってはならない。

人事考課の評価は,フィードバックの面接を行います。

評価の内容について,苦情が出るのであれば,その評価は適切ではないということになります。

人事考課は,能力開発の方法の一つです。

「あなたをこのように評価しました。こういったところに気を付けたらよりよいでしょう」ということを伝える必要があります。

評価するだけして,どのような評価がされたのかが分からなければ,能力開発につながりませんし,不満にもつながることでしょう。


4 目標管理制度では,個人の嗜好に合わせて自由に目標を設定させなければならない。

個人目標は,職場の目標に合わせて設定されます。























上記は,以前にご紹介した経営戦略の概念図です。
個人目標がどのような位置にあるのかを理解しておきましょう。

すべては,組織の使命(ミッション)から始まります。
それぞれは独立しているものではなく,上位にあるものを具現化していくのが,下位のものとなります。

たとえば,今年度の部門目標として,「接遇の強化」が掲げられていたとしたら,接遇の強化に関連した個人目標を立てなければなりません。

それが,個人目標は職場の目標に合わせて設定するという意味です。


5 計画的な人事異動であるジョブ・ローテーションは,人材育成を目的としたものではない。

ジョブ・ローテーションは,人材育成を目的としたものです。


<今日の一言>

今日の問題の難易度は,中の下くらいだと思います。

落ち着いて問題を解くことができれば,かなりの確率で正解できることでしょう。

国試問題の多くは,このくらいの難易度で作られます。
一つひとつを丁寧に分解すると,とてもシンプルな問題であることがわかることでしょう。

しかし,先述のように,選択肢は,それぞれが独立しているものではなく,5つの選択肢が影響し合っています。

勉強したことがない選択肢が含まれると,そこで混乱し,落ち着いて問題を読むことができなくなります。

一問一答式の参考書があります。一つひとつを確実に覚えるには良いものだと思います。

しかし,国試は一問一答式ではありません。5つの選択肢の中から答えを選び出すことが必要です。

一問一答式で勉強していても,最終的には,国試問題に合わせて問題を解く練習が必要となります。

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