福祉サービスの特徴は,サービスの提供とサービスの消費が同時に行われることです。
そのため,他からはサービスは見えにくいこともあり,標準化や評価がしにくいものです。
個々の能力によって差が生じがちです。
一般社会では,質の良いサービスは高い付加価値を持ち,高い価格で提供されます。
そして,低品質のものは,低い価格で提供されます。
ところが,法に規定された福祉サービスは,公定価格で提供されます。
どんなサービスであってもサービス価格は変わりません。
そのため,福祉サービスの提供者には,常に高い倫理性をもち,質の向上を求めた取り組みが求められます。
さて,今回のテーマは,形式知です。
福祉サービスは標準化しにくいものですが,標準化に向けた取り組みの一つが形式知です。
例えば,職人の世界では,先輩の背中を見て学ぶ,といったことが言われます。
また,仕事をしながら,仕事を教えていくOJTが実施されます。
それらを言語化したマニュアルにしたり,映像化したりすることで,いわゆる「見える化」を行うことが「形式知」です。
つまり,形式知とは,経験で培ったものを目に見えるものに変えていく取り組みを指します。
職場は,不思議なもので,低い方に標準化される傾向があります。
10人の職員がいたとき,1人が10の力をもち,他の9人が1の力しか持たない場合,19の力にならず,限りなく10に近くなります。
一人が力を持っていてもだめなのです。
その人が経験で得た見える化されていない「暗黙知」を「形式知」に変えていくことで,チーム力は高まっていきます。
さて,それでは今日の問題です。
第30回・問題125 人材育成や研修に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 経験学習モデルは,能動的実験・具体的経験と内省的観察・抽象的概念化との間の循環を否定している。
2 暗黙知と形式知の,共同化,表出化,連結化,内面化からなる循環的な変換過程は,組織の知識を創発するのに有効である。
3 OJTでは,職員の職務遂行能力は対象外である。
4 OFF- JTは,作業遂行の過程で行う訓練方法のことである。
5 エルダー制度は,新入社員のセルフラーニングを通じた自己啓発の仕組みである。
第30回は,合格基準点が99点という過去最高点になった回ですが,こんなに難しい問題が出題されています。
国試では必ずこのタイプの問題は出題されます。
しかし,落ち着いて問題を読めば,正解できます。
国試は,すべての科目で得点がなければならないという足切りが設定されています。
受験される方は,とても恐怖を覚えることでしょう。
しかし,落ち着いて問題を読めば,正解できます。
さて,問題に戻ると,答えは,
2 暗黙知と形式知の,共同化,表出化,連結化,内面化からなる循環的な変換過程は,組織の知識を創発するのに有効である。
何を言っているのかがわからないくらいに難しい文章です。
しかし,内容が分からなくても,この文章のように,「可能性」を示唆するものは,正解になる傾向があります。
しかし,この時点ではよくわからないので,冷静に△をつけておきます。
それでは,他の選択肢も見てみましょう。
1 経験学習モデルは,能動的実験・具体的経験と内省的観察・抽象的概念化との間の循環を否定している。
本当に否定するようなものを出題することは,出題する価値がありません。
国試は,社会福祉士の質向上を担保するための機能があります。
つまり覚えることが,価値のあることを出題します。
ここに気がつくことができれば,得点力は飛躍的に上がることでしょう。
3 OJTでは,職員の職務遂行能力は対象外である。
OJTは,職務の中で教育訓練を行う職場内教育です。
職務遂行能力を高めるために実施されます。
4 OFF- JTは,作業遂行の過程で行う訓練方法のことである。
OFF-JTは,仕事を離れて行う職場外教育です。
作業遂行の過程で行う訓練方法は,OJTです。
5 エルダー制度は,新入社員のセルフラーニングを通じた自己啓発の仕組みである。
エルダー制度のエルダーとは年長者のことです。
エルダー制度は,先輩が新人の指導担当者となり,教育していく制度です。
<今日の一言>
今日の問題で,正解する決め手は,OJTとOFF-JTを正しく覚えていることです。
エルダー制度も消去しにくいものなので,この問題の難易度を高めることとなっています。
しかし,先に書いたように「可能性」を示唆するものは正解になりやすいので,エルダー制度と形式知を比較すると,形式知の方が正解になる可能性が高いという判断ができることでしょう。
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