2019年8月14日水曜日

経営に関する基礎知識~外部環境への対応~

現状維持は衰退!!

今どきはやらない熱血コンサルタントが言いそうなセリフです。

しかし,環境は常に変化していくことは事実です。

平成から令和に代わるときに,昭和から平成に代わるときを振り返る映像がたくさん紹介されていました。変化したことはたくさんあります。

福祉の世界が大きく変わったのは2000年のことでしょう。モダニズムの時代だった20世紀最後の年に,社会福祉事業法が社会福祉法になり,介護保険法が施行されました。

この大きなうねりの中,バブル経済の象徴のようなジュリアナ東京の元・経営者が介護保険事業に乗り出したこともあります。

ちなみにジュリアナ東京の開業は1991年なので,実際にはバブルははじけた後のことです。

営利企業が参入することは,介護保険以前にはまず考えられないことだったと思います。
その後,障害福祉にも支援費制度を経て,障害者自立支援法が施行されていきます。

変化が大きくなればなるほど,既存のものの見方・考え方を変えなければなりません。

江戸末期の各藩の動きを考えると一目瞭然です。

変化が少ない時は,前例主義が活きます。
変化が大きくなればなるほど,変革が必要です。

社会は常に変化しています。

だからこそ

現状維持は衰退!!

変化に機敏に対応しなければ,組織は必ず衰退します。


今日の問題に入る前に,前回も提示した図を見てみましょう。


上の方が長期(展望),下の方が短期(展望)です。

使命(ミッション)は,外部環境が変わっても変化するものではないでしょう。
外部環境によって変化させなければならなくなるような使命だとすれば,それはいかさま使命でしょう。



それでは今日の問題です。

第30回・問題121 組織と外部環境に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 科学的管理法は,複雑な外部環境の変化に対応して組織を管理するために考案された。

2 外部環境や経営戦略が大きく変化した場合でも,組織構造はできるだけ変えないことが望ましい。

3 内部規則を重視する組織文化を持つ組織は,外部環境の大きな変化に対応しやすい。

4 外部環境である政策や制度の変更は,組織の経営戦略に影響を与える。

5 短期的な外部環境の変動に対応して,組織の使命・理念を頻繁に変えることが望ましい。


明確なルールに基づく「官僚制」は,環境変化の小さい時には機能するかもしれませんが,変化が大きくなったときは,もしかすると,カリスマ的支配のような支配システムの方がより変化に対応できるのかもしれません。

日本で言えば,織田信長です。彼のカリスマ性がなければ,百戦錬磨の織田家臣団を効率的に動かして,天下統一の一歩手前までたどり着くことはできなかったのではないでしょうか。

社是を復唱していれば,もしかすると,明智光秀による謀反は起きなかったかもしれません。

さて,この問題の正解は,選択肢4です。

4 外部環境である政策や制度の変更は,組織の経営戦略に影響を与える。

政策や制度は,経営戦略に大きく影響するのは当然のことです。

例として,今年(2019年)に再開された商業捕鯨を挙げます。

大型船で商業捕鯨を行っていた企業は,商業捕鯨を行いたくても禁止されたわけですから,経営戦略は変えざるを得なかったことでしょう。

制度・政策の変更は,経営戦略に影響を与えないわけがありません。


それでは,ほかの選択肢も確認していきましょう。


1 科学的管理法は,複雑な外部環境の変化に対応して組織を管理するために考案された。

科学的管理法は,作業効率を高めるために標準的な作業量を決めて,賃金に差をつけたものです。

外部環境への対応ではなく,内部環境に対する働きかけです。


2 外部環境や経営戦略が大きく変化した場合でも,組織構造はできるだけ変えないことが望ましい。

環境が変われば,適切な組織構造も変化します。

「望ましい」「望ましくない」は,正解になりにくいものです。覚えておきましょう。


3 内部規則を重視する組織文化を持つ組織は,外部環境の大きな変化に対応しやすい。

内部規則を重視する組織は,変化が小さい時は機能しますが,今までの価値観では対応できなくなったとき,江戸時代で言えば,いわゆる黒船来航のような大きな変化には対応困難です。

200年以上継続した江戸幕府はその後崩壊していくことになります。
反対に下級武士が今までの発想にとらわれることなく,生き生きと活躍できた藩が力をもつもとにつながっていきます。


5 短期的な外部環境の変動に対応して,組織の使命・理念を頻繁に変えることが望ましい。

短期的な変化に対応するものは,戦術です。

使命及び理念は,長期的なものですから,頻繁に変えることはありません。
抽象的な表現がなされているので,変える必要がないのです。

ここでも,「望ましい」が使われていますね。


<今日の一言>

第22回の問題と異なり,今日の問題は人名が使われていません。

例えば,選択肢1に人名をつけてみると

1 テイラー(Taylor,F.W.)は,複雑な外部環境の変化に対応して組織を管理するために科学的管理を考案した。

という文になります。

主張したいのは,

重要なのは,人名ではなく,その中身である

ということです。

多くの受験生は,歴史と人名を苦手としています。

しかし,人名を正しく覚えておかなければならないのは,

児童福祉領域で出題される

留岡幸助
石井十次
石井亮一
野口幽香

といった面々や

社会理論系で出題される

ウェーバー
マッキーバー
テンニース

などといった古典的な人たちです。

これらは,実績が重要なので

留岡幸助=家庭学校

といった覚え方をしても最低限何とかなるのに対し

テイラー=科学的管理法

といった覚え方は,完全にミスマッチです。

覚えるべき優先度は,人名ではなく,その内容です。

科学的管理法=標準的な作業量を決めて賃金に差をつけた

といったものとなります。

私たちチームfukufuku21は,学習ノートをつくることはおすすめしません。

ノートを作ると,ノートに書きこむことが目的になってしまうおそれがありますし,自分が書いたノートを使って勉強したとき,先ほどのようなミスマッチがあれば,得点力につながらないからです。

私は書いて覚える派です

という方がいます。漢字を覚えるときは,何度も書いて覚えたでしょう。
それは,漢字を正しく覚えることが必要だからです。

しかし,社会福祉士の国試は,丸暗記が役立つものはまずありません。

書いて覚える派であったとすれば,ノートに書き込むのではなく,使っている参考書に気がついたこと,特に押さえておきたいことを書き込むのが良いです。

そうすれば,参考書+ノートではなく,参考書1つで勉強できます。

何度も受験して,合格基準点に到達しない方は,ぜひ学習方法を見直してみましょう。
覚えるべきポイントがずれるいわゆるミスマッチが起きているかもしれません。

メイヨーら=ホーソン実験を行った

といった覚え方では,国試では絶対に得点につながりません。


重要なのは,人名ではなく,その中身である

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