2019年8月20日火曜日

福祉サービスの組織と経営に係る基礎理論~フォロワーシップ

リーダーシップ理論シリーズもいよいよ大詰め,今回と次回の2回を残すのみとなりました。

今までお付き合いいただいた方はありがとうございます。

今回は,フォロワーシップを紹介します。

フォロワーシップとは,チームメンバーによるチーム全体への働きかけであると定義することができます。

リーダーシップというとリーダーの役割に目が向けられがちですが,チームメンバーが主体的になることこそが,リーダーシップの本質だと言えるでしょう。

コンティンジェンシー理論は,状況に合わせて変化するリーダーシップであることを学びました。

状況は,理論の提唱者によって少しずつ変化しますが,状況の中には,チームメンバーが必ず含まれています。

マクレガーのXY理論で学んだように,スタッフのモチベーションは,リーダー次第です。

それでは今日の問題です。

第29回・問題123 リーダーシップに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 コンティンジェンシー理論では,特定のリーダーシップ行動の普遍的有効性を重視する。

2 行動アプローチでは,リーダーシップという影響力の実体をリーダー個人の身体的・精神的資質として捉える。

3 変革型リーダーシップ論では,メンバー個々の動機づけや知的刺激を排除するリーダーの行動を重視する。

4 リーダーシップの特性論では,課題志向型と人間関係志向型の二つの行動を重視する。

5 フォロワーシップ理論では,フォロワーの自律性を引き出すリーダーの役割を重視する。

今まで学んできたことを総まとめにしたような問題だと思いませんか?

勉強が足りない人は,何が何だかわからなくて,混乱しそうな問題だと思います。
しかし,ちやんと勉強してきた人にとっては,答えは何となくでも見えているはずです。

そう,答えは選択肢5

5 フォロワーシップ理論では,フォロワーの自律性を引き出すリーダーの役割を重視する。

チームメンバーのモチベーションは,リーダー次第です。

フォロワーが自主的にチーム全体に働きかけて,変化を引き起こすのは,リーダーにかかっていると言ってもよいでしょう。

ここに関係しているのが,経営戦略です。

これについては,今日の一言で触れたいと思います。

それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。


1 コンティンジェンシー理論では,特定のリーダーシップ行動の普遍的有効性を重視する。

もしこれが正解だと思ったとしたら,コンティンジェンシー理論の理解が不足していると言えるでしょう。

コンティンジェンシー理論は,状況に合わせて適切なリーダーシップは変わる,というものです。特定のリーダーシップ行動の普遍的有効性を重視しているのは,行動理論です。

PM理論ではあれば,PM型
マネジリアル・グリッドであれば,9・9型
レヴィンらのリーダーシップ理論であれば,民主型リーダーシップ

これらが最も優れたリーダーシップだと提唱しています。

コンティンジェンシー理論は,状況によって適切なリーダーシップ行動は変化するので,どの状況に対しても有効である普遍的な行動スタイルはありません。


2 行動アプローチでは,リーダーシップという影響力の実体をリーダー個人の身体的・精神的資質として捉える。

リーダーシップという影響力の実体をリーダー個人の身体的・精神的資質として捉えるのは「特性理論」です。特性理論ではリーダーシップ研究には限界があり,その後出てきたのが「行動理論」です。


3 変革型リーダーシップ論では,メンバー個々の動機づけや知的刺激を排除するリーダーの行動を重視する。

またまた変革型リーダーシップが出題されています。

リーダーシップ行動には,状況によって程度は変化しますが,動機づけや知的刺激への働きかけは,必ず存在します。

変化が大きければ大きいほど,その変化についていけず,反発する人も出てくるでしょう。

人はロボットではありません。外の変化にも対応しなければなりませんが,同時に内部環境にも目を向けることが大切です。


4 リーダーシップの特性論では,課題志向型と人間関係志向型の二つの行動を重視する。

特性論(特性理論)は,選択肢2で述べたように,リーダーシップという影響力の実体をリーダー個人の身体的・精神的資質として捉えるものです。


<今日の一言>

もし,今の組織が停滞していると思っても,組織を活性化して,より質の高い組織に変化させるのは決して簡単なことではありません。

なぜなら,そうなったのはそれなりの理由があるからです。

やる気のあるリーダーは空回りして,バーンアウトしてしまうことはよくあることです。
しかしそんなことがあってはなりません。

そこで必要なのは,経営戦略です。

経営戦略を日々の行動に落とし込むものが,経営戦術です。

そこから,個々人の行動目標が生まれます。

さらにさかのぼれば,使命に突き当たります。
これを大義名分にすれば,頭の固い上司であっても動いてくれる可能性があります。

復習のために,経営戦略の図を紹介して,今回は終わりとします。



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