2019年8月11日日曜日

組織に関する基礎理論~ホーソン実験

組織管理の古典的方法として,科学的管理というものがあります。

標準的な作業量を定めて,それによって賃金を変えるという方法です。
20世紀の初頭の話です。テイラーという人が考えました。

さらに作業効率を上げる方法を探るために,1920~30年代にホーソン工場で実験が行われました。この実験をホーソン実験といいます。

この実験では,工場の照明などの物理的環境,賃金,休憩時間などの条件を変化させても,作業効率は変化しないことが明らかとなりました。
作業効率に影響があったのは,職場の人間関係でした。

ホーソン実践によって,組織管理における人間関係の重要性がクローズアップされたのです。ホーソン実験にかかわったのは,メイヨーやレスリスバーガーといった学者たちです。

それでは今日の問題です。

第22回・問題113 組織理論に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

1 ウェーバー(Weber,M.)が挙げた官僚制に特有な機能様式は,官庁組織に関するものである。

2 テイラー(Taylor,F.W.)が挙げた管理の第一の目標は,従業員一人一人の賃金を一律に低く抑えることである。

3 メイヨー(Mayo,G.E.)やレスリスバーガー(Roethlisberger,F.J.)は,各作業者の態度は賃金などの作業条件に依存していると主張した。

4 バーナード(Bamard,C.)は,組織成立の要件を,相互に意思を伝達できる人々がおり,それらの人々が行為を貢献しようとする意欲をもって,共通目的の達成を目指すとき,としている。

5 サイモン(Simon,H.A.)は,一人の孤立した個人は,極めて合理性の程度の高い行動をとることが可能であると主張した。


またまた人名のオンパレードです。

今は参考書に書かれている内容ばかりなので,ちゃんと勉強した人ならそれほど難しくは感じないかもしれません。
しかし,実際に受験した人は,とてつもなく難しいと感じたことでしょう。

この問題の正解は,選択肢4です。

4 バーナード(Bamard,C.)は,組織成立の要件を,相互に意思を伝達できる人々がおり,それらの人々が行為を貢献しようとする意欲をもって,共通目的の達成を目指すとき,としている。

これをすぐ正解にすることは難しいです。

ほかの選択肢を消去することで,この選択肢が残るように作られた問題です。

それでは,ほかの選択肢を消去していきましょう。

1 ウェーバー(Weber,M.)が挙げた官僚制に特有な機能様式は,官庁組織に関するものである。

実際に出題されたときは,「ヴェーバー」とドイツ語読みで出題されていました。

官僚制は,前回学んだように,組織を機能させる仕組みであり,管理組織に限ったものではありません。

2 テイラー(Taylor,F.W.)が挙げた管理の第一の目標は,従業員一人一人の賃金を一律に低く抑えることである。

テイラーが提唱した「科学的管理」は,標準的な作業量を定めて,それ以上の作業を行った人は高い賃金,それ以下の人は低い賃金を支給する管理手法です。


3 メイヨー(Mayo,G.E.)やレスリスバーガー(Roethlisberger,F.J.)は,各作業者の態度は賃金などの作業条件に依存していると主張した。

メイヨーらが行ったホーソン実験の結果,明らかとなったのは,照明などの物理的条件,賃金,休憩時間などが作業効率に関係せず,職場の人間関係が意欲に関係していたということです。


5 サイモン(Simon,H.A.)は,一人の孤立した個人は,極めて合理性の程度の高い行動をとることが可能であると主張した。

サイモンが主張したのは,一人ひとりの意思決定が関連しあって,組織として合理的な意思決定ができるということです。


<今日の一言>

この国試が実施された時点で,参考書に書いてあったのは,

ウェーバーの「官僚制」
テイラーの「科学的管理論」
メイヨーらの「ホーソン実験」

の3つです。

バーナードとサイモンは,この時初めて目にした人が多かったのではないかと思います。

正解は,バーナードの「組織成立の要件」となりました。

サイモンが消去できないことには,正解にはたどり着きません。
実は,国試は消去法で正解する問題が多くあります。

つまり考えることが必要なのです。

試験委員は,受験生が考えながら問題を解くように問題を作ります。

この問題の最大のポイントは,

サイモンです。

「孤立した個人」という言葉からは,ポジティブなイメージを受け取ることができません。
それにもかかわらず,「極めて合理性の程度の高い行動をとることが可能である」とポジティブなイメージの言葉で締めくくられています。

ここに違和感を抱くことでしょう。そして,それは間違いできないかと見当をつけることになります。

国試は,どんなに勉強しても知らないものが出題されます。

知っているものの中に正解があることもありますし,知らないものの中に正解があることもあります。

勉強不足だから知らないのではなく,試験委員がそのように問題を作っているからです。
国試に不合格になったとき「勉強不足だった」と思うことでしょう。

しかし,どれだけ勉強しても必ず知らないものは出題されます。
そこを乗り越えるのは,知恵です。

今日の問題はいかにもそんな問題だと思いませんか?

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