障害者福祉の発展において,重要な意義があったのは,「障害者の権利に関する条約」(障害者権利条約)です。
障害者の権利に関しては,これまでに「知的障害者の権利宣言」「障害者の権利宣言」などがありましたが,これらは,宣言するにとどまり,法的拘束力をもつものではありません。
そこで,採択されたのが,障害者権利条約(2006年)です。
同条約の重要ポイントは「合理的配慮」です。
日本は,2007年に同条約に署名しましたが,批准したのは,2014年です。
そこまで,大きく遅れた理由は,国内法を整備する必要があったためです。
批准のために整備した主な法制度は,以下のものがあります。
障害者基本法の改正(2011)
障害者虐待防止法(2011)
障害者差別解消法(2013)
このうち,注意したいのは,障害者基本法の改正です。
同法では,「障害者差別の禁止」が規定されていますが,これは条約批准のために規定したのではなく,2004年改正で既に規定しています。
2011年の改正ポイントは,障害者の定義に「社会的障壁」を加えたこと,合理的配慮を求めたことなどがあります。
障害者基本法の注意ポイントは,同法を所管しているのは,内閣府であることです。
社会福祉士の国試で出題されているものの中で,内閣府が所管しているものはそれほど多くはありません。
ほかには,子ども・子育て支援法などがあります。
そのため,中央政府が定めるこれらの基本計画などは,厚生労働大臣が定めるものではないことに注意したいです。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題56 「障害者差別解消法」に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 障害者基本法には,障害者差別の禁止についての基本的理念が定められていなかったためこの法律が制定された。
2 人種を理由とする差別の禁止も包含した規定とされている。
3 障害者の権利に関する条約を締結するための国内法制度の整備の一環として制定された。
4 差別の解消の推進に関する政府の基本方針は,いまだ策定されていない。
5 差別を解消するための支援措置として,新たに専門の紛争解決機関を設けることとされている。
(注) 「障害者差別解消法」とは,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。
今は,これほど簡単な問題は,出題されないでしょう。
正解は,
3 障害者の権利に関する条約を締結するための国内法制度の整備の一環として制定された。
法の内容には,何も触れられていません。
ほかの選択肢は解説するまでもないでしょう。
障害者差別解消法が初めて出題されたのは,この問題の前年です。
第27回・問題56 障害児者福祉制度の歴史的展開に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 精神薄弱者福祉法(1960年(昭和35年))において,ノーマライゼーションの促進が目的規定に明記された。
2 重度精神薄弱児扶養手当法(1964年(昭和39年))の制定当初から,重度身体障害児も支給対象とされていた。
3 国際障害者年(1981年(昭和56年))を契機として,重症心身障害児施設が制度化された。
4 障害者自立支援法(2005年(平成17年))により,身体障害者福祉法は廃止された。
5 「障害者差別解消法」(2013年(平成25年))では,「障害者」について,障害者基本法と同様の定義がなされた。
この問題の正解は,
5 「障害者差別解消法」(2013年(平成25年))では,「障害者」について,障害者基本法と同様の定義がなされた。
これで,布石を打っておいて,今日の問題である第28回に出題し,そして,第31回以降に本格的な出題がなされています。
第31回と第32回の問題には触れないので,各自で確認しておいてください。
問題番号は,どちらも問題57です。