生活保護法では,被保護者に対する権利とともに義務が規定されています。
被保護者の権利 |
(不利益変更の禁止) 被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を,不利益に変更されることがない。 (公課禁止) 被保護者は,保護金品及び進学準備給付金を標準として租税その他の公課を課せられることがない。 (差押禁止) 被保護者は,既に給与を受けた保護金品及び進学準備給付金又はこれらを受ける権利を差し押さえられることがない。 (譲渡禁止) 保護又は就労自立給付金若しくは進学準備給付金の支給を受ける権利は,譲り渡すことができない。 |
被保護者の義務 |
(生活上の義務) 被保護者は,常に,能力に応じて勤労に励み,自ら,健康の保持及び増進に努め,収入,支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り,その他生活の維持及び向上に努めなければならない。 (届出の義務) 被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があつたとき,又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。 (指示等に従う義務) 被保護者は,保護の実施機関が,被保護者を救護施設,更生施設,日常生活支援住居施設若しくはその他の適当な施設に入所させ,若しくはこれらの施設に入所を委託し,若しくは私人の家庭に養護を委託して保護を行うことを決定したとき,被保護者に対し,必要な指導又は指示をしたときは,これに従わなければならない。 2 保護施設を利用する被保護者は,保護施設の管理規程に従わなければならない。 3 保護の実施機関は,被保護者が前二項の規定による義務に違反したときは,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。 4 保護の実施機関は,前項の規定により保護の変更,停止又は廃止の処分をする場合には,当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては,あらかじめ,当該処分をしようとする理由,弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。 (費用返還義務) 被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたときは,保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して,すみやかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。 |
これらを丸覚えしようとは思わないことです。
国試ではおおよそのことが理解できていれば,正解できます。
丸覚えする必要はありません。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題68 生活保護法における被保護者の権利及び義務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 被保護者は,保護を受ける権利を相続させることができる。
2 被保護者が急迫の場合等で資力があるにもかかわらず保護を受けたときであっても,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内の金額を返還する義務はない。
3 国民健康保険料(税)の滞納を理由とする保護金品の差押えは許されている。
4 保護の実施機関は,保護施設に入所中の被保護者が,保護施設の管理規程に従わない場合には,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。
5 被保護世帯の高校生のアルバイト収入は,届出の義務はない。
それほど難しくはないでしょう。
正解は,選択肢4です。
4 保護の実施機関は,保護施設に入所中の被保護者が,保護施設の管理規程に従わない場合には,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。
ただし,すぐにこれらの措置が取られるわけではありません。
以下のような規定があります。
保護の実施機関は,前項の規定により保護の変更,停止又は廃止の処分をする場合には,当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては,あらかじめ,当該処分をしようとする理由,弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。
あなたは,管理規定に従いませんでした。保護を廃止します。
といった一方的な通告がなされるわけではないことも合わせて覚えておきたいです。
それでは,ほかの選択肢も解説します。
1 被保護者は,保護を受ける権利を相続させることができる。
譲渡の禁止です。
2 被保護者が急迫の場合等で資力があるにもかかわらず保護を受けたときであっても,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内の金額を返還する義務はない。
費用返還義務があります。
3 国民健康保険料(税)の滞納を理由とする保護金品の差押えは許されている。
差押禁止です。
差押えはどのような理由があっても認められていません。
保護は最低限度の生活保障なので,差押えすると,最低限度を下回ってしまうからです。
5 被保護世帯の高校生のアルバイト収入は,届出の義務はない。
届出の義務があります。
<今日の一言>
社会福祉士の国家試験は,おおよそ6割が正解できれば合格できます。
国家試験の配点は,すべて1問1点です。
難しい問題を1問正解できても,比較的難易度が低い問題を2問正解できないと合格するのは厳しいです。
いろいろ気になることが多いと思いますが,手を広げることなく,基礎の基礎をひたすら積み重ねていくことが重要です。
難しい問題の配点が高ければ,それらも拾っていく戦略が求められますが,社会福祉士の国試はそうではありません。
正解できそうな問題を確実に正解できる知識を高めたほうが得点力は確実にアップします。
今日の問題のようなレベルの問題を確実に正解することが何よりも大切です。