今回は,福祉事務所を取り上げたいと思います。
それでは,前説なしに今日の問題です。
第28回・問題44 福祉事務所に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 都道府県の設置する福祉事務所は,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法に定める事務のうち,都道府県が処理することとされているものをつかさどる。
2 福祉事務所の所長は,その職務の遂行に支障がない場合においても,自ら現業事務の指導監督を行うことはできない。
3 現業を行う所員の定数は,被保護世帯数に応じて最低数が法に定められている。
4 町村が福祉事務所を設置した場合には,社会福祉主事を置くこととされている。
5 2003年(平成15年)4月現在と2014年(平成26年)4月現在を比べると,都道府県の設置する福祉事務所数は増えている。
知識なしでは解けない問題です。
国試にふさわしい問題だと言えるでしょう。
しかも知識にプラスして知恵も必要とする選択肢が含まれています。
とても良い問題だと思います。
それでは,解説です。
1 都道府県の設置する福祉事務所は,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法に定める事務のうち,都道府県が処理することとされているものをつかさどる。
複雑に思うでしょう。
都道府県の設置する福祉事務所が行う事務
①生活保護法
②母子及び父子並びに寡婦福祉法
③児童福祉法
現在は,この三法を行っています。
①生活保護法
これは分かりやすいでしょう。
あとの2つは覚えにくいので,覚え方のコツを教えます。
具体的な内容を頭に入れておくことです。
②母子及び父子並びに寡婦福祉法
母子福祉資金・父子福祉資金・寡婦福祉資金の貸付業務は,都道府県の業務です。
③児童福祉法
児童福祉法で規定されている児童福祉施設への入所措置は,都道府県の業務です。
通所は市町村ですが,入所は都道府県です。
このように役割が分かれています。
市町村が設置する福祉事務所では,このほかに老人福祉法,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法に関する事務も行います。
これら三法ももともと都道府県福祉事務所が行っていましたが,町村に権限移譲されたために,現在,都道府県福祉事務所が行っているのは,
①生活保護法
②母子及び父子並びに寡婦福祉法
③児童福祉法
となります。
2 福祉事務所の所長は,その職務の遂行に支障がない場合においても,自ら現業事務の指導監督を行うことはできない。
福祉事務所の所長は,その職務の遂行に支障がない場合,自ら現業事務の指導監督を行うことはできます。
しかし,その場合は,福祉事務所の長は,社会福祉主事でなければなりません。
なぜなら,査察指導員(現業事務の指導監督を行う所員)と現業員は社会福祉主事でなければならないからです。
3 現業を行う所員の定数は,被保護世帯数に応じて最低数が法に定められている。
現業を行う所員の定数は,「基準を標準として」定めます。
「基準を標準として」定めるものには,ほかに児童相談所に配置される児童福祉司があります。
民生委員は,「基準を参酌して」定めます。
4 町村が福祉事務所を設置した場合には,社会福祉主事を置くこととされている。
これが正解です。
福祉事務所は,都道府県及び市が設置します。
町村は,設置することができます。
福祉事務所には,社会福祉主事をおかなければなりません。
町村の福祉事務所設置は任意ですが,設置した場合は,社会福祉主事をおかなければなりません。
法律用語では,「おく」「おくものとする」は,いずれも「おかなければならない」と同義語です。
5 2003年(平成15年)4月現在と2014年(平成26年)4月現在を比べると,都道府県の設置する福祉事務所数は増えている。
これが知識にプラスして知恵が必要なものです。
この間,平成の大合併が行われて,全国の市町村数が約3,000市町村から約1,700市町村まで減少しています。
この合併によって,市に昇格した町村もあります。
町村の福祉事務所設置は任意ですが,市になると必置となります。
そうすると,そこに設置していた都道府県の福祉事務所は必要ではなくなります。
その結果,都道府県福祉事務所の数は減少しています。
今日の問題には出てきていませんが,近年の出題では,福祉事務所を設置しない町村の役割が出題されるようになってきています。
これも合わせて覚えておきたいです。