今回は,障害者基本法を取り上げます。
同法は,1970年・昭和45年に心身障害者対策基本法として成立したものを1993年・平成5年に改正したときに,現在の名前に変わりました。
今まで何度か改正されてきていますが,特に重要な改正は,以下の2つです。
【2004年・平成16年改正】
・「自立への努力」の削除(心身障害者は,その有する能力を活用することにより,進んで社会経済活動に参与するように努めなければならない)
・「差別の禁止」を規定(何人も,障害者に対して,障害を理由として,差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない)
【2011年・平成23年】
・障害者の定義の変更(身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう)
・「合理的配慮」を規定(社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって差別禁止の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない)
2011年改正は,障害者権利条約を批准するためのものです。
同法は,医療福祉,教育,雇用,住宅,バリアフリー,消費者保護など多岐にわたる施策の理念(方向性)を定めています。
そのため,同法は内閣府が所管しています。
そして,その理念にしたがって,具体的な施策は,障害者総合支援法などの各法が定めます。
この関係性は,しっかり頭に入れておきましょう。
障害者基本法が定める「障害者計画」は,障害者のための施策に関する基本的な計画です。
障害者総合支援法が定める「障害福祉計画」は,障害福祉サービスの提供体制の確保その他に関する計画です。
名称が似ていますが,その違いを確実に押さえるためには,障害者基本法の性格(障害者施策の基本法)を押さえておくことが大切です。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題62 現行の障害者基本法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさし。
1 社会的障壁の除去について規定されている。
2 中央心身障害者対策協議会を置くことが規定されている。
3 市町村の行う地域生活支援事業について規定されている。
4 心身障害者本人に対する自立への努力について規定されている。
5 市町村障害者計画の策定は,市町村の判断に委ねると規定されている。
「現行の」と加えているのが,特徴の問題です。
現在の規定に加えてどのように発展してきたのかを同時に学べるとてもよい問題だと思います。
同じような問題は,老人福祉法でも使われたことがあります。
この問題の正解は,選択肢1です。
1 社会的障壁の除去について規定されている。
これは2011年改正で規定されたものです。この改正は極めて重要です。障害者権利条約を批准するための改正だからです。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
2 中央心身障害者対策協議会を置くことが規定されている。
中央心身障害者対策協議会は,以前のものです。
現在は,「障害者政策委員会」となっています。
この委員会は,障害者基本計画の実施状況を監視しています。
3 市町村の行う地域生活支援事業について規定されている。
地域生活支援事業を規定するのは,障害者総合支援法です。
4 心身障害者本人に対する自立への努力について規定されている。
自立への努力は,当初はありましたが,2004年改正で削除されています。
5 市町村障害者計画の策定は,市町村の判断に委ねると規定されている。
障害者計画の策定は,当初は任意でしたが,現在は,都道府県障害者計画とともに策定は義務となっています。