2020年12月31日木曜日

現役並み所得者の医療費の自己負担割合

 社会保障費が増えている

 

多くの人が知っていることでしょう。

 

限られた資源です。必要な適切に配分することは極めて重要なことです。

 

さて,今回から「保健医療サービス」です。

 

国民医療費も増大しています。

 

高齢者の医療保険では,以前は1割負担でしたが,一定以上の所得がある者は2割負担となり,現在ではさらに現役並み所得者は3割負担となっています。

 

この負担割合は,介護保険サービスを利用した場合の自己負担も同様です。

 

つまり,医療保険制度も介護保険制度も,いずれも現役並み所得者は,3割負担です。

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題70 高齢者に対する医療保険制度における給付と負担に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 65歳以上の加入者の療養病床での食事・室料は,入院時生活療養費として全額支給対象である。

2 70歳以上の加入者の埋葬料・埋葬費は,家族療養費として支給される。

3 70歳から74歳までの加入者の一部負担金は,加入者が現役並み所得者である場合には,療養の給付に要した費用の2割の額である。

4 75歳以上の加入者の一部負担金は,加入者が現役並み所得者である場合には,療養の給付に要した費用の3割の額である。

5 75歳以上の加入者が選定した特別の病室の室料は保険外併用療養費として全額支給対象である。

 

この問題は,もしかすると解答テクニックで解けるものかもしれません。

 

ただし,「気が付けば」というものですが・・・

 

「気が付けば」というポイントは,以下の通りです。

 

1 65歳以上の加入者の療養病床での食事・室料は,入院時生活療養費として全額支給対象である。

5 75歳以上の加入者が選定した特別の病室の室料は保険外併用療養費として全額支給対象である。

 

全額支給対象となっています。

「全額」は,すべてと同じタイプです。

消去できそうです。

 

3 70歳から74歳までの加入者の一部負担金は,加入者が現役並み所得者である場合には,療養の給付に要した費用の2割の額である。

4 75歳以上の加入者の一部負担金は,加入者が現役並み所得者である場合には,療養の給付に要した費用の3割の額である。

 

どちらも現役並み所得者に関するものです。

選択肢3が2割

選択肢4が3割

 

となっています。

 

これらがそろっていれば,どちらも消去できそうですが,別々になっているので,どちらかが正解になりそうです。

 

それでは,解説です。

 

1 65歳以上の加入者の療養病床での食事・室料は,入院時生活療養費として全額支給対象である。

 

療養病床での食事・室料には,自己負担があります。それ以外が入院時生活療養費として保険給付されます。

 

2 70歳以上の加入者の埋葬料・埋葬費は,家族療養費として支給される。

 

家族療養費は,療養にかかる費用を現物給付するものです。

家族療養費の給付内容は,被保険者本人に対する「療養の給付」(現物給付)と同じです。

 

医療保険には,現物給付のほかに,現金給付されるものもあります。

 

健康保険法が規定する現金給付の種類(被保険者本人に対するもの)

・傷病手当金(療養のため労務に服することができないとき,連続した休業4日目以降に給付される所得補償)

・埋葬料(埋葬費を給付するもの)

・出産育児一時金(出産費用を給付するもの)

・出産手当金(被保険者が出産のために出産の前後労務に服さなかったときに給付される所得補償)

 

このうち,家族に対しては,家族埋葬料,家族出産育児一時金が給付されます。

傷病手当金と出産手当金は所得保障なので,家族には給付されません。

被保険者が出産した場合は,出産育児一時金と出産手当金が併給されます。

これらは,別の目的の給付だからです。

 

3 70歳から74歳までの加入者の一部負担金は,加入者が現役並み所得者である場合には,療養の給付に要した費用の2割の額である。

4 75歳以上の加入者の一部負担金は,加入者が現役並み所得者である場合には,療養の給付に要した費用の3割の額である。

 

自己負担割合は,以下のようになっています。

 

年齢区分

自己負担割合

現役並み所得者

小学校入学前

2割

70歳未満

3割

7074

2割

3割

75歳以上

1割

 

気を付けなければならないのは,自治体により医療費補助が行われる場合があるので,自分が住んでいる自治体がそうだからと言って,それが全国的な制度だと思わないことです。

 

特に,児童の医療費への補助は行っていない自治体もある一方,15歳未満の医療費の自己負担分はすべて補助している自治体もあります。

正しく制度を理解しておきたいです。

自治体によって施策に差がある理由は,それらの施策に対する国庫補助がないということもありそうです。 

 

70歳以上の人のうち,現役並み所得者の自己負担割合は,3割です。

 

ということで,選択肢4が正解だということになります。

75歳以上の現役並み所得者が占める割合は,全体の1割に近いらしいです。

結構多いのが驚きですね。現役並み所得者の自己負担割合を3割にしたのはかなり効果があったのではないでしょうか。

 

5 75歳以上の加入者が選定した特別の病室の室料は保険外併用療養費として全額支給対象である。

 

保険外併用療養費は,保険療養と保険外療養を合わせたものです。

 

日本では混合診療が認められていないので,これらを合わせて受けると,全額自己負担になります。

 

そのために,一部認めたものが保険外併用療養費です。

 

現在は,

・評価療養(先進医療など)

・選定療養(差額ベッド代など)

・患者申出療養(評価療養の対象となっていないものを患者の申出によって行う医療)

 

の3種類があります。

基礎部分が保険給付され,それ以外の部分が全額自己負担となります。

 

この仕組みは,74歳以下も75歳以上も同じです。

 

<今日の一言>

 

今日の問題は,知識なしで正解するのはかなり難しいものですが,2割と3割が混ざって出題されているので,どちらかが正解ではないだろうか,と推測ができる問題でした。

 

そうであっても,正解できる確率は2分の1ですが,見当がつかない場合の5分の1の確率よりもかなりの確率で正解できます。

 

ムダなミスをしないためにも,こういったところにも気を配って問題を読みたいです。こういったセンスは,最後の最後に助けてくれることでしょう。

最新の記事

児童手当法と児童手当

  今回は児童手当法と児童手当を学びます。 児童手当法,児童扶養手当法,特別児童扶養手当法は,児童扶養手当法(1961年),特別児童扶養手当法(1964年),児童手当法(1971年)の順で成立していきました。 児童手当法の児童の定義は,18歳に達する日以後の最初の3月31日までの...

過去一週間でよく読まれている記事